ジャムとは

 来週の今頃は三鷹だなと思いながら、少し書く。
 ぼくの出番は本戦がはじまるまでで、あとはNovelJamの舞台装置として計画通りに動くだけである。その先は4個の細胞からなる11体の生物が勝手に踊り狂ってくれることだろう。

 NovelJamの行動単位はフォーマンセルである。第1回はスリーマンセル。
Xマンセルという言い方は戦闘単位のことなので、少々物騒だが、気分はもう戦争である以上は、それで構わないと思う。と思って言い続けていたら定着した。善哉。

 著者2名に対し編集1名というのは絶妙なバランスだ。通常の出版業務であればもっと大勢の著者を抱えている。しかし2日間や3日間で一気に書き上げるとなると2人を相手にするのが限度かもしれない。少なくとも俺はNovelJamで3人目を抱えるのは無理だ。3人を受賞させなければならないなんて、困難すぎる。だから、2人が限度だろうと思う。

 1人だけだと、かなり時間を持て余すと思う。その分丁寧に対応できる勝っていうと、それはそうでもなく、ただヒマになるだろう。ヒマがゆえに手応えもない。ヒマだと、心が死んでいく。やはり2人担当がいちばん面白いのではないかと思う。

 NovelJam’[dash]2019(以下NovelJam2019)では、当日の時間を有効に使うために事前チームビルドを実施した。これについて「Jam感はどうなん?」といいう声がまあまあ聞かれるので、ちょっと触れておこうと思う。

 まず問いたいのは「ジャム」ってなんだということだ。NovelJamは、ハッカソンをモデルにしたが、ハッカソンは名乗らなかった。元々の同盟内部でどういう話し合いが行われたかはわからないが、ハッカソンとしなかった所に、実は大きな意味がある。あったように思う。あったほうがいい。多くのハッカソンは、集まってからロール(役割)を決める。フラットな人々が、出会ったその場でその場限りのロールを担って、ゴールを目指すのだ。この点で、NovelJamはハッカソンではないと言える。
 一方で、Jamの語源となった「ジャムセッション」は即興演奏ではあるが、パートまでは変えない。それぞれ、その道を極めた者や、進む者たちが、普段の鍛錬の成果を、即興演奏で披露する。繰り返した曲を演奏するのではなく、自らの持つ演奏技術そのものを持ち寄って、新たな音楽を生み出すという「遊び」だ。プロたちがプロの技で遊ぶ。そういう贅沢な時間が「ジャム」なんであると、今、改めて思う。

 だからNovelJamではフラットに募集をしていない。ハッカソン的に開催するなら、「著者か編集かデザイナーか、あるいはそのどれでもない何かをその場で決めてやってもらう」という企画であってもいいのだけど、出版はもう少し職能の分化が進んでいるので、そういう風にはできない(いつかやってもいいけど)。ただ、一部マルチロールが可能なプレイヤーや、職能の幅が広いいるので、バランス調整のためにロールのコンバートをお願いしているが、そういうのは例外である。誰にでも頼めるものではない。
 NovelJamは「ジャムセッション」であるので、パート(ロール)別に募集するのである。後付けだけど、理屈はあっているよねw。

 なんとなく「旅をするミュージシャンが未開の国の道端で出会った少年と即興演奏をはじめて、だんだん村人を巻き込んで、そして国中が音楽に包まれる。それが済むと、旅人はまた他の土地へ向けて歩き出す、それがジャム!」みたいに思っているのではないか。まあそれでもいいんだけど、そういうのはまた実際に旅に出て、温泉旅館で知り合った同士で一晩で小説書いて翌日電子書籍を売り出して宿代をまかなったりすればいいと思うけど、「三鷹に集まって2日間で小説書いて売る」企画とはあまり近くない。
 どちらかというと普段いろんなところで演奏しているミュージシャンが1つのステージに集まって(それはソロのミュージシャンでもいいし、バンドマンでもいいし、なんだっていい)「ジャムセッションをやろうぜ」っていう方が、テクニック的にもマインド的にも近いと思う。

 そのときに。
 全くはじめての相手とやるのでも、どっかで会ったことの相手とやるのでも、普段から知っている気心の知れた相手とやるので、そこにジャムかどうかの差異はない。準備してきたかとか、手ぶらで来たかとか、そこにジャム感で差は出ない。出せない。変わらない。だってそうだろう。準備してないとか言ったところで、生まれて初めてギターを触るようなのがステージでジャムセッションに参加するわけがない。普段から腕を磨き、フレーズを頭に染み込ませ、耳を研ぎ澄まして、そしてステージでジャムるのだ。準備してたらジャムれないなんてことはない。

 NovelJamはどうか。
 綿密な準備を進めるチーム(になりそうな人々)がいる。大いに結構。手札が多ければ多いほど、いずれみなさんの力になるだろう。
 一見特に何もしてないチーム(になりそうな人々)もいる。何もしていない? そんなわけない。仕事もしているし生活もしているし人生もしている。人間としての経験は全てNovelJamで活かすことができる。これもまた全て準備に他ならない。全く知らない4人それぞれが別々にこの週末に体験したことが、当日融合して、新たなモンスターが誕生するかも知れないのだ。

 ぼくも、過去3回の出場で毎度「策士」としてだいぶ準備してきたけれど、スタートしちゃうと結局はなにか大きな渦に巻き込まれるように加速してわけがわからなくなって、ゴールに転がり込んできた。なんとなく準備すればするほどトラブルを呼び込んでいたような気すらするw。
 そういえばずーっと何十年もやってきたように錯覚しているけど、ほんの2年間の出来事に過ぎないんだった。それだけ1回1回の負荷がヘビーということなんだろうか。

 参加者の全容は当日まで発表できない。今のところ、水上に出ている参加者はだいたい2/3程度だろうか。さまざまな経歴、さまざまな属性。結果の想像が付かない組み合わせの数々。
 今回も激戦は必至なんである。
 参加者のみなさんにおかれましては、くれぐれも体調に気をつけて、万全の状態で三鷹に来ていただきたい。

 本日はこれまで。本戦前は最後かも知れない。



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