レイヤーとステージ

NovelJamもそろそろ1ヶ月半。今からなにかやろうとしても誰ももう間に合わない頃なので、中間報告的に状況を整理してみたいと思う。

前回チームB(ブラボー)としてGPを獲得したあとで、ディフェンディングチャンピオンとして臨むNovelJamGPレースである。もちろん負けるわけにいかないが、勝てばそれでいいというわけでもない。ぼくは連覇よりも大事なものがあると思ってここに立っている。

ちょっと横道と言うか根本的な話をしておくと、ぼくの本質は「Gamer」だ。なんでもかんでも勝ち負けで語りたがるし、勝者であるためには敗者を生み出すことも厭わない。平成生まれからしたら憎むべきクソ老害であり、実にろくでもない。

ただ、鍛錬による超絶技巧などでスマートに勝ちに行くストロングスタイルのゲーマーではない。ゲームのシステムを理解し、必勝法(悪い意味での)を解読し、世間に晒したい、というタイプのFuckingゲーマーだ。また、SLGでの行動方針は「遠距離飽和攻撃」で、RPGであれば「ダンジョン突入は装備とLVはMAXモリモリで」である。

そんな腐れゲーマーメンタルのぼくが臨む、2回目のグランプリレース、が今回のNovelJam後半戦なのであるということだ。


今回のNovelJamでぼくは、「レイヤーとステージ」という概念を使うことにした。
これはあくまでぼくやぼくのチームがそういう思想でやっていくということであって、他チームの価値観とは相容れないと思うし、ましてやGPの審査基準にマッチする保証などひとつもない。ただ、今後のセルフパブリッシングや小規模出版の、進むべき道の実験場としてはよく機能すると思う。

「レイヤー」とは、活動範囲というべきか、なんというか、あるアクションの対象となる範囲、である。たぶん言葉だけではわからないと思うが、「なんのために」やるのか、という結果ベースで考えると少し触れられるかもしれない。

まず「本」というレイヤーがある。NovelJamの作品単位のことである。これは各チームに2点ずつある。

ぼくは編集なので、「本」のレイヤーが2つ。これはNovelJamに限っていえば、「著者」のレイヤーと同一である(一般の出版であれば必ずしもそうはならない)。
そして「チーム」のレイヤーがある。ぼくのカラダが1つしかない以上、チーム全体で考えなればならないことがでてくる。

また、チームを超えたところにもレイヤーはある。「NovelJam2018秋」というレイヤーだ。GPを戦う上で、チーム単位以下のことしか考えないようであれば、ノビシロはない。これは前回も実証されたことであり、チームの垣根を超えて盛り上げていくことも、より多彩な活動を行う上で重要なことであると考えている。

また「NovelJam」というさらに大枠のレイヤーもあり、そもそもNovelJamを広く知ってもらうことを考えずに、最上層レイヤーの作品単体の発展もないわけで、下のレイヤーを広げなければ、浅い層のレイヤーも大きくならないという構造になっている。

じつはこのNovelJamのレイヤーは、われわれプレイヤーサイドで広げなければ、誰も広げてくれないものだ。NovelJamの箱の中で小競り合いをしても大きな伸びはない。その下にも「セルフパブリッシング」「出版」なんてやたら大きなものが控えていたりするが、今回はそこまでのアクセスは難しいだろう。これは意識しておく程度でいい。

また、「波野發作」自身というレイヤーがいちばん上か、一番下にもある。経験値のアップや、人脈の拡大などNovelJamGPのメリットは多い。すべてのアクションは、自分のために行えるということだ。


そしてもう一つの概念が「ステージ」だ。
ここから先はステージを順に追いながら整理したいと思う。

ステージとは何をしているのか、を難度やコストなどで大まかに方向性ごとにまとめたものだ。実効果がどうかは、また別の話というか、低いステージで十分な効果が得られるなら、それにこしたことはない。

「ステージ1」は「ネット展開」だ。
NovelJam作品は電子書籍としてリリースされるので、ナチュラルにデジタルボーンあるからそもそもこのステージにいるのだが、ランディングページや、Twitterでの宣伝全般、noteでの関連エッセイ(参戦記)、ネット広告などもみなステージ1である。PVもここに入ると思う。

比較的低コストで、誰でもできるのが重要で、このステージは「やっていることが当たり前」という過酷なステージになる。ここまでは前回NovelJamでもほとんどの作品で実施された。やっても加点にならないが、何もしないとそもそも舞台に立てていない。こんな辛い戦場はない。
チームとしては「とにかく押さえておく」というところで、各メンバーに任せて各展開を行ってもらった。

「かわくも」はランディングページを著者本人が制作。ほかに破滅派でいくつかの記事が出るなどで、拡散を狙った。
「センコロ」は先の仕掛けがあるのでランペは作らず、西河さんのTwitterを軸に展開。
ぼくは「GOMERA日報」を定期的にリリースすることで、リマインダと兼用でリアルタイム感を場全体に提供することにした。NovelJamはまだ継続しているのだと。


「ステージ2」は「リアル展開」である。
NovelJam作品はデジタルボーンであるため、そもそも実体を持たない。しかし読む側は人間であり、現実世界の住人たちである。目で見るだけのものより、手で触られられるものに価値を見出すのはごく自然なことだろう。

それなりにコストのかかることではあるが、実効性が高い。大規模にやる視力がないため、小規模にならざるを得ないのが苦しいところだが、グッズやイベントの効果は実社会で実証済みである。景虎さんのサンドイッチマン作戦もここに属するだろう。やらない手はない。沢しおんさんは700枚ものブックカードを配布しまくるという。白色さんもコミケで紙本を売ったようだし、まったく恐ろしい人ばかりだ。
森田さんやチームBUKKOWASUなど、美術展示をやってくるチームもいくつかあるようだ。どんな仕掛けがあるのか、実に楽しみである。

「かわくも」では豆本とPODの制作を行った。またSuzuriでグッズも制作して販売を開始した。オリジナル包装のキャンディをノベルティにしようと思ったが、制作費がかなりかかるため見送った。残念。
「センコロ」も豆本、PODを制作した。同じくSuzuriでのグッズ販売もしている。またオリジナルパッケージのカモミールティも制作中である。
これらの制作物は、1/19の同盟セミナー会場で「NovelJam屋台」の復活版として、他チームも巻き込みながら物販コーナーを設置し、頒布したいと思っている。
チームとしては、毎週金曜日にNovelJam作品を2点ずつ読む「NovelJam Reading Friday(NRF)」という読書会を浅草橋で開催している。全8回。八王子での本戦期間中にリアルのチラシを制作して、即日配布するという作戦もこのリアル戦略の一環である。2ヶ月という長いグランプリ期間の定期的なスケジュールを先手を打って押さえることで、イニシアチブを取ろうとしたわけである。ひとまず成功はしたとは思うが、なかなか疲弊した。
このNRFはチームの垣根も越えて楽しい時間を創造することにも成功している。毎回YouTubeで中継して、アーカイブも用意している。著者自ら参加してくれることも多く、試みとしてはうまく行っているように思う。第5回の際は、一般からの参加もあった。実にありがたいことだ。
ほかにアラ畜でのクリアファイル広告学生フリーペーパーへの公告出稿なども実施した。



「ステージ3」は「物語の拡張」である。
当日書いた1万字だけでは、長期戦は難しい。読者も離れていくばかりである。前回は「REcycleKiDs」で続編シリーズを6作放つという作戦が当たってGPを獲得した。物語世界を拡張していくことで、読者のとどまる空間を確保し、同時に継続して戦い続けるモチベーションも維持できるというわけだ。ただし、作品自体に続編が可能なポテンシャルがあることが条件となる。そういう意味では「リサキ」は理想的であったし、実際、ふくださんもうまく続けることができた。これは元々の物語の骨格が強固でないとなかなかできないことだと思っている。

続編戦略はわかりやすい施策であるし、著者の負荷以外にコストがかからないというメリットもあり(実際はそこがいちばんヘビーなんだけど)、今回もここまでは多くのチームがやってくると思う。
たとえば、日野さんの百物語などは物量的にもコンセプト的にも素敵であるし、その他、続編やスピンオフを打ってくるチーム・著者は多かった。

「かわくも」は「クラウドハウス」という作中の仕掛けをベースにしたスピンオフ続編が進んでいる。
「センコロ」は「センパイ」視点の、通称「マリ日記」を日々公開して、世界観の補強を続けている。
チーム施策としては、日記を何らかの形でとりまとめて、ファンサービスの一環にしたいところだ。


さて、問題はこの先だ。
続編戦略までは前回のNovelJamでもあったことだ。それぞれの作品にあわせたアレンジはしているが、やっていることそのものに新規性はあまりない。第3回の参加者はこの先をひねり出さなければならない、と実は八王子でチラシを作りながらずっと考えていた。ぼくは何をするべきなのか。

悩んだ挙げ句、ぼくが「ステージ4」に位置づけたのは「マルチメディア展開」だ。
これは現出版界でも広く行われている常套手段であり、小説作品の成功の王道である。小説は、アニメ化され、コミカライズされ、2.5次元化されてナンボである。そこまで何チームがたどり着くか。翻訳もこのカテゴリでいいだろう。

聞き及ぶところではコミカライズをやってくるところがあるそうだ。これは強力だ。前回、「DIY BABY」でやってくるんではないかと戦々恐々としていたが、コミカライズはとてつもなくマンパワーを消費するため、実現はされなかった。もしチームAがやってきていたら、特別賞は我々の手に渡っていたかもしれない。正直一番恐れていた。そして、今回もコミカライズが一番怖い。そろそろリリースじゃないのだろうか。

「かわくも」はまず「英訳プロジェクト」が走り出した。翻訳はカナダのネイティブ氏に依頼して、すでに作業に入っていただいている。ただ、まあ完成は2月以降にはなると思われる。問題はそのあとどうするか、ではあるが短編なので、エージェント経由で本として売るような通常のアプローチとは異なるルートを考えたい。NovelJamの紹介文も添えて訳していただくので、NovelJamという企画そのものを海外に知らしめることもできたらいいなと思っている。そこで、どこかの国のパリピな書き手が、同じようなイベントをやってくれれば、こんな嬉しいことはないではないか。
また、「かわくも」は同じチームの西河さんのご縁を通じて、3人の若手声優に参加してもらっての「オーディオブック化」が進行中だ。すでにレコーディングを終えて、編集に入ってもらっている。同盟セミナーの頃にはお披露目できそうである。
「センコロ」の方はなんといっても「舞台化」の実現だ。舞台化を企画しているチームは他にもあったが、「センコロ」は登場人物が少なくて有利なのと、前回NovelJam参加者でもある舞台演出家の森山智仁さんの全面協力で、早期に具体的な内容を決めることができた。森山さんは1/11-14に舞台「アラサー魔法少女の社畜生活」を上演するため、そのあとの制作になるが、3月3日にオーディション実施、5月11日-12日に池袋の土星劇場で上演することが決定している。GP本番はとっくに過ぎたころではあるが、舞台化ってそういうスパンなんだからしょうがないよね。GPに間に合うものばっかり考えても手詰まりになるだけだし。「行こう!Gの先へ」を合言葉に、2月移行も継続して戦うことをチームGOMERAは選択したわけである。


ステージ4までは他のチームもやっている。つまり勝ちたければ、その先を想像あるいは捏造しなければならない。ここからが過酷だった。
実のところ、ステージ4まではわりと順当に発想できたんである。発想した上で、今の自分らのリソースを鑑みて、実現できる形に落とし込んでいけばいいのであるから、それほど悩まずには済んだ。しかしそれは、他の誰かにもできるということである。実際、みんなそれぞれやっている。ここまでにとどまっていたのでは先には進めない。
ここでかなり考えた。とりあえずクリスマスの前頃にはちょっとおかしくなってるぐらいには考え尽くしまくっていたのである。

で、まあ「ステージ5」として思いついたのは結局「拡散」であった。
展開、展開、拡張、展開と広げてきて、挙げ句、拡散。もはやこれは最終段階である。拡散して広めることこそが、販促合戦としてのグランプリレースの本懐であるわけで、ここに帰着するのは当然の結果ではあるが、それはやっぱり上記のように、ステージとレイヤーという考え方をしてはじめて見えてくるものであり、闇雲に手当たり次第にやっていたのではここまでわからなかった。

さて、では具体的に何をするのか。
「かわくも」はスピンオフコンテストを行うことにした。作中に出る「クラウドハウス」という架空のサービスの利用者の物語を一般から募って、賞金を出すものだ。モロゾフ・プロジェクトやSCP財団、あるいはカップ焼きそばのような盛り上がりが実現できればいいのではないかと考えている。他の方面との兼ね合いもあって、実施時期は2月になると思われる。
「センコロ」は「回し読み用」の豆本を作って、手回しでリレーしてもらうことにした。中高生を中心にぐるぐる巡ってくれればいいなと思い、豆本を24冊放流した。いつの日か、大きく育って戻ってくることを期待している。

つまりステージ5は「バイラルメディア」の活用ということになる。作品が作者や関係者の手を離れて、一人歩きを始める施策だ。「かわくも」は作中の概念が一人歩きを、「センコロ」は作品そのものが実体化して、人々の手を渡り歩く。ちょっと楽しい試みではないかと思うが、成功したかどうか確認するまでぼくが生きているのかどうか、それは誰にもわからない。

かわくものスピンオフコンテストは、高橋文樹先生と、隙間社様に審査員として参加していただくことが決まっている。賞金はアマギフで1万円+応募数✕100円。大勢参加すれば賞金が増えるシステムだ。近日告知したいので、準備運動をしてお待ちいただきたい。

さて、NovelJamも残すところ半月ぐらいだろうか。
できることはもう他には思いつきそうもない。
粛々と計画を遂行したい。

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