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【書評】ちょっと昔の本当の話、夜這いから始まる恋がある『夜這いの民俗学・夜這いの性愛論』

民俗学の父といえば、柳田國男ですが、性とやくざと天皇は扱いませんでした。この本ではその穴の一つ、既に滅んでしまった日本の性、夜這いを著者、赤松啓介が行商を通して日本各地を歩き、それぞれの村で夜這い仲間として迎え入れられた自らの体験を通して語ってくれています。


「え、昔の人はお見合いで結婚したんでしょ?」
「日本の女の人は、昔は処女で結婚したんでしょ?」

なんて皆さん思ってませんか?これ、作られた怪しげな伝統です。お見合い結婚なんて、長い長い日本の歴史の中では実に近代的なシステムです。

昭和以後の都会ではお見合い文化がありましたが、農村や漁村では夜這いが普通、子供ができれば夫婦になる。といった感じでした。

また夫婦の関係も非常に緩いものでした。浮気なんて当たり前、嫁が隣の家の息子に抱かれて嫉妬するなんてことはみっともない。集落中みんな穴兄弟、さお姉妹。これが常識でした。


昔の農業は機械化されていない為、とにかく人手が必要でした。では田んぼを大きく持っている地主はどうやって村の若者を集めたのか。農作業が終わった後は地主が酒と飯をふるまい、給仕を自らの妻や娘や女中、後家さんにさせて、自分はとっとと寝てしまいました。

酒と飯をふるまわれた若者たちは、今度はその家の女とねんごろになる。あそこの家の娘はかわいいぞ、とかあそこの女中さんと仲良くなりたい、なんて家は多くの若者が集まり、農作業も早く終わったのです。


村の娘は初潮を迎えると、離れの部屋で寝ました。村の若者が夜通って来られるようにする為です。

また、村の男の子は、村の年寄の寄り合いで

「そろそろあいつら筆おろしだな」

なんて話になると、夜、神社や寺に行かされて、そこでは年寄連中が自らの家から出した嫁や女中連中に相手をさせました。5対5ぐらいで向かい合いくじ引きなんかで相手を決めると、あとは手練れのおねえさんに導かれて、初体験を迎えるのが当たり前だったようです。


その際に照れ隠しの為、お互いに掛け合った歌、柿木問答が始まります。
「あんたのとこに柿の木あるの?」
「はい、あります」
「私が上がって、ちぎってよろしいか?」
「はいどうぞ、ちぎって下さい」そっと抱き寄せる
「そんならちぎらしてもらいます」スルッと胸に手を忍ばせる
こんな秘め事が、夜ごと村々では行われていました。


子供が出来てしまったらどうするの?この場合の解決策も実に大らか。

結婚前の娘に子供が生まれた場合、その子は娘の両親の子供。

妻が浮気してできた子供は夫婦の子供。

古典落語の小話にもあります。

「わしが抱いてるこの子、お前そっくりやなぁ」


夜這い、今後これを塗り替える新しいフィールドワーク研究は出てくる事はないでしょう。

夜這いはもう日本では滅んでしまいました。

大らかな日本の古き良き性愛文化は失われてしまいました。

あなたは昔の日本のフリーセックスで大らかな世界

堅苦しい自由恋愛、結婚後は倫理という束縛をきつく受ける今の日本

どっちが好きですか?
是非この本を読んで考えてみて下さい。

この記事は以前、HIU公式書評ブログに寄稿した文章を編集し直してます

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