自分の描いた漫画が好きな話

僕は自分の描いた漫画が好きです。

突然何言ってんだって感じですが、こんな当たり前のことを忘れていたかもしれないって話です。

そもそも僕が漫画を描き始めたのは10年前の2007年。その年の11月くらいに出店した「デザインフェスタ」で売るためでした。
当時の僕は美術大学のデザイン科の2年生で、2年生から本格的になった授業に既についていけなくなり、漠然と考えていた「将来はデザイナー」という目標を失ってあせっていました。ついていけなくなった理由はそもそもデザインというものを根本的に勘違いしていたという理由が大きく、技術的に努力すればどうなにかなるという類のものでもなく、まあ要はデザインが「思っていたものと違った」というのが正直なところです。

そんな中今できることで何かできないだろうかと思い、共同でブースを借りてデザインフェスタに出店することに決めました。僕は当時面白いと思っていたシルクスクリーンの作品やポストカードの販売をしようと思っていました。ただそれだけでは何か足りないと思い、今でいうZINE(当時はあんまりメジャーな言葉じゃなかったと記憶しています)のようなイメージで何かできないだろうかと考えたところ「漫画なら描けるかもしれない」と思い至りました。
漫画は小学生の時にノートに少し書いていたのと高校生以降本当に暇なときにコピー用紙にえんぴつで1p前後のギャグマンガを暇つぶしに描く程度でした。
時間がなかったこともあり本当にコピー用紙にえんぴつで書いたギャグマンガを学校のコピー機でコピーして表紙をつけて20pくらいで300円ぐらいの値段でシルクスクリーンのポストカードの横にそっと並べました。

タイトルは「ムイミ」。内容が本当に無意味な不条理?ギャグだったのでそう命名しました。
結果はというと、かなりの好評で完売したかはあんまり覚えてないのですが、惨敗だったシルクの作品と比べるとかなり売れた記憶があります。みんなふらっと立ち読みして笑ったりやばいとかいって買っていってくれました。

その結果に僕は少なからず衝撃を受けました。今でこそ言えることですが、たぶん「ムイミ」というタイトルには上記の意味以上にどこか「自分がマンガなんて描いても意味がない」という自虐的な意味も含まれていたと思います。もちろんそこは無意識的だったと思いますが。

なぜそんな自虐的なことを思うのか。

それは僕の中で漫画に対する憧れが強すぎたのだと思います。小学生でドラゴンボールにはまって、ちゃんとジャンプを読み始めたのは中学生、本格的に読み始めたのは高校生で古谷実など青年漫画や当時熱かったIKKIとか漫画文化に広くはまり一日中マンガを読んでいました。

そして、その作家たちから受けた熱が冷めないうちにコピー用紙に漫画を描いてみて「意味がない」と強く思いました。思えばこれは小学生のときにノートにはじめて書いたマンガからずっとそう思っていたと思います。

「意味がない」理由は無限にあります。
「絵が下手」「ストーリーがない」「枠線に定規使ってない」「セリフが手書き」「シュールとかいってごまかしてるだけ」「Gペンじゃない」「原稿用紙じゃない」「スクリーントーンが貼ってない」「背景がない」「ジャンプに載ってない」「なんかださい」「おしゃれじゃない」「ページ数が少ない」「ページ数が多すぎる」「出版されていない」「賞に入らないから」「賞に入ったけど掲載されなかった」「編集者が評価してくれない」「面白くない」「お金にならない」「プロじゃない」「もう新人としては若くもない」「フォロワーも増えない」「読んでもわからないと思う」「自分ですら意味がわからないのに」「わかるはずがない」「なんで描いてるのかわからない」「漫画家になれるわけでもないのに」「わからない」「面白いのかもわからない」
「みんながどう思うのかわからない」
「これでいいのかわからない」
「わからない」

「わからない」


「・・・意味がない」

最近、バイトを減らしました。
「エビサロン」を描く時間をもっと確保したかったしその後も描いていきたい作品があるし、どっかで一回ちゃんと区切りをつけなきゃと思ってのことです。収入が減るのももちろん承知の上です。だけど年齢も30過ぎたし就職した同世代ともどんどん違う道を進んでいるのを感じて、ふと「バイトすら辞めちゃっていったい自分は何をやってるんだろう」と考えてしまいます。エビサロンは自主連載です。原稿料はでません。いつもはバイトをやっていた時間に死ぬほど不安になりました。

「本当に俺は何をやってたんだっけ」

「これ描いてどうすんだろう」

「また意味わからないもの描いてる」

小学生で初めて見よう見まねでノートに描いてみたときからずっと同じことを思ってる。小学生の時からずーっと一度もそのマンガをクラスメートにみせたことはありませんでした。

中学生も、高校生でも。
初めて人に見せたマンガには「ムイミ」とタイトルをつけました。

それは「俺のマンガには意味がない」と思っているから。

初めてマンガを描いた時からずーっとそう思い続けている。だからマンガを描くのも辛い。意味のないことをすることは気楽な反面とても辛い。

なんでだろう。

今朝、初めてそれを考えました。小学生の時から同じことをずっとずっと思い続けていて、何かこれはおかしいと思いました。「意味がない理由」は無限にある。でもだから意味がないという結論になるのは何かおかしい。
マンガを描いてお金がもらえる保証も、面白がってもらえる保証もない。漫画を描いても先がどうなるか「わからない」。

わからないのは意味がない。バイトは「お金がもらえる」から意味がある・・・?
たしかにそうかもしれない。
さらにいえばバイトより就職した方がもっと安心だ。

・・・でも

でもわからないことをして何がいけないの?

いいじゃん。

好きなんだから。

そうだ。
好きだ。
俺は俺の描いた漫画が。
好きだった。好きだから描いている。

いいじゃないか。
収入が少なくったって、わからなくたって、いいじゃん。
好きなんだろう。やってみなよ。

好きなんだろ。だからいいんだよ。

いいのか。そうか。いいかもしれない。いい。マンガを描いていい。例え無意味だったとしてもいいじゃん。

うんそうだ。いいんだ。いいじゃん。わからなくたって。

ずっとマンガを10年も描いてきてこんな風に少しでも思えたのは初めての経験でした。例え漫画賞に入選しても全然こうは思えなかった。いいじゃんなんて思えなかった。「漫画賞入選」という結果だけはいいけど次の結果を出せなきゃその結果すら意味がないと考えてしまった。


意味がなくてもいいじゃん。好きなんだから。

ただ心の中で少しでもこう思わないと何もできなくなる。就職したっていつどうなるかはわからないんだし本当の意味で今自分がやっていることをいいじゃんと肯定できなきゃ何をやってもどんな結果でも辛いだけだ。

「ムイミ」がデザフェスで売れたときの衝撃は無意味なはずの自分の漫画が肯定されたいう衝撃だったのだと思います。ここまで描いてこれたのも全てそれが原動力だったはずです。

なんで素直にこう思えなかったのか、理由はたくさんあると思います。大体いつでも理由は無限にある。大きなトラウマから小さなことの積み重ねだってある。ただの思い込みともいえる。

でも、だからこそ重要なのは「自分の描いた漫画が好き」だって気持ちなんだと思いました。まあ、またお金に困ったらバイトを再開するかもしれないしどうなるかわからないけど、そうしたらまたなんとかすればいい。とにかく今日は漫画を描こうと思います。そして、描くのを楽しみます。それでいいじゃんと自分を励ましながら。



P.S 後日「ムイミ」をはじめ、いくつか公開してなかった僕の好きな(わかったってw)マンガをいくつか投稿しようかと思います。今まで意味がないなんて思ってごめんねという意味も込めて。

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コメント4件

僕はビューさんが描くマンガが好きです。理由を訊かれてもうまく答えられないけど。影響も受けていると思います。「意味がない」という意味があるマンガをこれからも楽しみにしています。
なんというか僕も励まされた思いです。
藤本さん>ありがとうございます。自分以外にも自分の漫画を好きだと言ってくれる方がいるというのが何よりも励みになります。僕も藤本さんの絵が好きです。一回実物をみてみたいです。
翔くん>大学時代に翔くんがデビューしたのが同じかそれ以上に衝撃でした。翔くんの活動が俺にとってもずっと励みになってます。お互い頑張ろう!
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