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All that Rhythm with Cateen! at Chan Centre (4 May 2024)

かてぃんさんのガーシュウィンピアノ協奏曲へ調を再び聴きたいと思い続けてこの方、2年がすぎようとしていたタイミングで、バンクーバーのコンサートの告知(インスタ)を偶然見かけ、こ、これは!と思い、チケットをポチってしまいました(ヘッダーは当日のChan Centreの前)。

今まで行ったことがない国(まだ145カ国強も...)のうち、最も行きたい国の一つがカナダ(理由は長くなるため、省略)であり、かてぃんさんのコンサートのタイミングは、自分の希望・都合ともバッチリあったのです。

旅の移動時間などに、少しずつ記録・感想を書いている間に、プロのライターによる素晴らしいレビュー記事(リンクはこちら)がウェブに掲載されたので、そちらを読んで頂ければ充分です。
【5/23追記】角野さんがインスタでシェアしてくれた別のレビュー記事はこちら

一かてぃんさんファンの記録も読みたいという方がいらっしゃれば、以下ざっと流し読みください。

Chan Centre

コンサート前夜にバンクーバーに到着し、当日午前中はバンクーバー市内を少し歩いて雰囲気を味わった後、昼過ぎに市内からコンサートが行われるUBC(University British Columbia)に向かいました。

コンサートが行われたChan Centreは、ダウンタウンの中心地Granville St. - W Georgia St.からUBC Exchangeまでバスで約45分、その後、徒歩10分の位置にあります。UBCは約400haで、東京ドーム(5ha)の80倍と広い。約45,000人の学生が学んでいるそうです。UBC内とその周辺は、自然豊かで、北西部は海(湾)に面しており、Chan Centreに隣接するRose Gardenからは海(湾)や山々も見渡せて、カナダらしさを満喫できる場所でした(UBC内の人類学博物館にはぜひ訪問したかったですが、あいにく一時閉館でした)。

UBC内にあった地図(赤く囲った場所がコンサート会場、キャンパスの最北端にある)

後で迷わないように、Chan Centreの場所を確認した後、開演まで約3時間あったので、Chan Centreに隣接するRose Garden(薔薇はまだ、チューリップが咲いていました)や新新渡戸稲造記念庭園などを散策し、キャンパス内のレストランで軽く夕食を食べてからホールへ向かいました。

新新渡戸稲造記念庭園(日本人の方が代々メンテナンスをしているそうです)

18時半過ぎにChan Centreに到着。ロビーには私が聞き取れただけで、英語、日本語、中国語などが飛び交い、開場を待つ人々で賑わっていました。パーカーにジーンズ姿の人もいれば、ドレスや着物などで華やかに着飾る方々もいて、とても自由な雰囲気でした。

本日のコンサートの案内(ホールの壁)

バンクーバー・カレッジ・ウィンド・アンサンブルによるプレコンサート

19時過ぎからは、カナダの高校生達による吹奏楽が4曲、披露されました。開演前は前方席に保護者と見られる方々が息子さんたちに熱い声援を送り、彼らは舞台の上で緊張気味に楽器を抱えていて微笑ましい光景でした。

高校生たちの公演前(撮影許可タイム)

特に印象に残っているのは、2曲目のラデッキー行進曲、最後の曲、アメリカ人作曲家のアラベスクという曲です。アラベスクについては、指揮者(音楽の先生?)から、曲の紹介と冒頭のカデンツァについての解説があり、コンサートマスターの位置にいた男子生徒が緊張気味に立ち上がり、舞台前方に立つと、彼のフルートで最後の曲が始まりました。中東音楽を聴く機会はあまりないので、新鮮な気持ちで耳を傾けながら、最近のかてぃんラボで説明を受け、その後YouTubeでいろいろ聴いてみたトルコ音楽の旋法マカームや微分音の響きを思い出しました。浮遊感のある旋律とリズムによるアラビア音楽は聴いていて楽しく、高校生の皆さんも緊張が解れてきたのか、リラックスして演奏していました。

プレトーク

プレコンサートの後、ピアノが運ばれたり、舞台の設定が行われる中、バンクーバー・メトロポリタン管弦楽団(VMO)の音楽ディレクターのグラハム・ブランク氏と音楽監督/指揮者のケン・シェイ氏が舞台下手に用意された椅子に腰掛け、プレトークが行われました。冒頭ブランク氏は、今回のVMOの2023/24シーズンのファイナルコンサートが完売になったことに言及し、大変嬉しそうでした。

まず、ブランク氏からシェイ氏に対し、質問が投げかけられ、シェイ氏が答えていく形で始まりました。以下は記憶に残っている範囲の内容で、かてぃんさんに関わるパートは詳しめです。

ブランク氏からシェイ氏に対し、シェイ氏が音楽を始めたきっかけ、指揮者になった経緯や影響を受けた音楽家、VMOの成り立ち等について質問しました。シェイ氏は、6歳の時にピアノを始めたが、母親がレッスンに通わせようとすると、その度に泣いていたこと、初めて指揮をしたのは16歳の時、在籍していた学校でのコンサートだったこと、指揮者デビューは学校のバンド仲間とO Canada(注: カナダ国歌)を指揮した時であること、ある俳優(名前は失念)がVMOの記念公演に来てくれ、ベートーヴェンの交響曲第9番に静かに耳を傾けてくれて嬉しかったこと、2003年にVMOが設立された時は16人だった楽員が今では60人にまで増えたことなど、時々ユーモアを交えながら答えていました。

その後、ブランク氏が「今夜のソリスト、Cateenを知っている人はいますか?」と観客席に問うと、多くの人が手を挙げたり、歓声を上げたり、既に待ちきれない様子。ブランク氏は、フォーブス誌の30歳未満の30人に選ばれ、最近ソニークラシカルとワールドワイド契約を結んだこと、YouTubeチャンネル登録者数が133万人以上いることなど、最新の情報も交え、ソリストの紹介をしました。シェイ氏もブランク氏と共にかてぃんさんの活躍ぶりをについて熱く語っていました。"His career is skyrocketing"、"Cateen is exceptional"と、最上級の形容詞で彼を褒めたり、「CateenのCreativityは、おばあちゃんも5歳の子どもも楽しめる」、「2-3日一緒にリハーサルをして、かてぃんはgood guyだと思ったよ」と2人は大盛り上がりでした。ブランク氏が「終演後には、meet and greetを快諾してくれたよ!」と言った途端、観客は歓声を上げ、「これは長蛇の列ができるね」と、2人もすっかりかてぃんさんファンになっていました。

英国のラジオClassic fmでは、ロイヤルアルバートホールでのかてぃんさんのラプソディインブルーの演奏を褒めるパーソナリティらの声を耳にしていましたが、バンクーバーの地で、初共演するソリストを褒めるカナダの音楽関係者らの会話を直に聞いて、胸が熱くなりました。

ブランク氏は、手元のメモに目をやり、シェイ氏に今夜のプログラムについての紹介を求めました。シェイ氏からは、今夜はNYベースのプログラムであること、1曲目はガーシュウィンのピアノ協奏曲ヘ調で、1楽章はphenomenal、2楽章はsmokeyと、伝統的な楽章構成になっている、2曲目のラフマニノフの交響的舞曲は、作曲家がNY滞在中に、当初バレエに合わせて作られたが、実際にはundancebleと思われていました。曲自体は大変美しいです、といった内容の解説をされていたと思います。

(黒いTシャツ姿だったシェイ氏が着替えに舞台袖に消え、VMOの楽員が舞台に着席していくなか、開演前にも、ブランク氏から、かてぃんさんのプロフィール含め、トークが10分ほどありました。が、プレトークに来ていなかった観客やスポンサー向けと思われ、重複する内容も多いため、省略します。)

先程の高校生達は、舞台の反対側のクワイア席に座り、VMOコンサートを鑑賞。こういう取り組みは、すごくいいなと思いました。

ピアノ協奏曲が始まる前(VMOの楽員登場前)

ガーシュウィンピアノ協奏曲へ調

20時過ぎに2023/2024ファイナルコンサートは幕を開けました。シャツ含め全身ブラックで固めたかてぃんさんが登場した途端、観客は大きな拍手で迎えました。私にとって、かてぃんさんのガーシュウィンピアノ協奏曲へ調を聴くのは、2021年2月の東京フォーラム(当時の感想文はこちら)以来だったので、待ちに待った瞬間でした。

第1楽章では、かてぃんさんのソロの入りが、とってもソフトタッチで、レガートが美しくて、全身にすっと染みてきました。その瞬間も束の間、ミュージカルやオペラを数多く作曲してきたガーシュウィンらしく、1楽章はテンポよく曲調がどんどん変わっていきます。かてぃんさんの変幻自在なテクニックとリズム感、Jazzyなノリ、そして多彩な音色が、オケの様々なパートと織り交ざって、徐々に熱気が増していき、最後は壮大に盛り上がって、かてぃんさんが勢いよく鍵盤から手を離した途端、割れんばかりの大きな拍手が起こりました。かてぃんさんは観客席ににこやかな笑顔を向けてお辞儀をされていました。以前ご本人も、また藤岡マエストロや小曽根さん(3年前の読響プレミア公開収録の感想はこちら)も、ここは拍手をしてもらえたらむしろ嬉しいと話されていたので、バンクーバーの観客からの盛大な拍手は、デビュー公演でもあり、嬉しかったに違いないと思いました。私達観客もガーシュウィンワールドに巻き込んでいくような勢いと一体感を感じる1楽章でした。G. ガーシュウィンの伝記映画「アメリカ交響楽(の概要はこちら)」でガーシュウィンがNYで忙しく楽しく過ごす光景が目に浮んできました。

第2楽章では、トランペットが哀愁たっぷりに歌うソロ、ヴァイオリン(コンマス)の美しいソロなど、かてぃんさん以外のパートの見せ場もあり、見ごたえ、聴きごたえ十分でした。かてぃんさんのカデンツァは、1楽章、2楽章、1回ずつあったと思いますが、それはもう最高にCateenfulでした!ロイヤルアルバートホールでのラプソディインブルー、NYブルノートでの即興、さらにはポリリリリズム・ゲームで、身体も指も心もジャズのリズムで溢れていたように感じました。そして、第2楽章のあとにも観客席から拍手が沸き起りました。ここでは、予想外だったのではないでしょうか。ここはなかった方が、第3楽章に入りやすかったのではないかと思いましたが、拍手せずにはいられないお客さんが一定数いたというのは、それだけ演奏が素晴らしく受け入れられたと解釈できるから、いいか。

忘れないうちに、ここに書いておきたいことは、ガーシュウィンが楽譜には書いていないであろう、かてぃんさん独自のアレンジ?即興?が随所に見られ、それらも(カデンツァ並に)楽しすぎて、笑顔が止まらなくなってしまい、時々笑い声が漏れそうになるのを必死で止めないといけないシーンがたくさんありました。1楽章、2楽章の両方で印象的だったのは、特に高音域の方で、シャランシャラン、チャラリーンチャラリーンとか、もうちょっと凝った構成の装飾音やアルペジオ風の短いパッセージをさり気なく弾いていて、オケのハーモニーにそっと花を添えているような、オケとさり気なくハモっているような、そんなシーンが数えきれないほどありました。時にショパン、時にラヴェルのようでもありました。その内の一つは、天使のささやき、とでも言いましょうか。可愛らしくて繊細な音色。かてぃんさんの手が膝の上に置かれている時間、ほとんどなかったような気がするのです。だからと言って、やり過ぎていた訳ではなく、絶妙なレベルでコントロールされていて、生意気な言い方をすると節度が保たれていて、もうかてぃんさんにしか成せない技巧でした。あ!あの愛用していらっしゃるピアニカは今回はNYでお留守番だったようですが、ピアニカのことを忘れるくらいに、あの10本指から編み出されるリズム、音色が素晴らしかったです。

コンマスのTaihi Chenさんは、かてぃんさんの真後ろで演奏していて、本番中の即興を楽しまれ、楽しくて笑顔が止まらなかったと書かれていて、やっぱり!と思いました。

そして、第3楽章(ボストン編の一部分はこちら)。ここは、疾走感にあふれ、スリルがあるテンポで、マエストロと一緒に、かてぃんさんがオケを引っ張っていたと思いました。ソロのところをカデンツァ的に演奏していたと思いますが、ライトタッチの方(Sony Classicalがポストしていた箇所↓)には、さり気なくラプソディを混ぜたり、リズミカルな展開を繰り広げ、その音の移り変わる世界に惹き込まれていき、一番最後のカデンツァはもう本当に圧巻の一言。

全楽章において、マエストロとのアイコンタクトがすごく頻繁に行われていて、どんなにテンポが上がっても、オケを合わせていくところを緻密にやっていると感じました。

En Core:I got Rhythm

オケと一緒に演奏を終えた途端、今日一番の大きな拍手喝采が起こり、どんどん皆が立ち上がって、大変な盛り上がりを見せました。カナダの観客にも、かてぃんさんの秘めた魅力が伝わった瞬間に、居合わせられて、日本から来た一ファンの私も感無量でした。

3, 4回のカーテンコールの後、かてぃんさんは、ピアノの前に座り、左手を胸に添え、英語で「ありがとうございます。今日は私にとってはカナダーで初演を果たせたスペシャルな日です(会場から拍手と歓声)。もう一曲弾かせてください。GershwinのI got Rhythmです(マイク無しだったため、聞き取れたであろう前方の席から歓声が起こる)。私のアレンジで弾きます」と言い、スタンディングオベーションをしていた人たちが座りつつあるなか、かてぃんさんは冒頭の旋律を弾き始め、軽やかに鍵盤に指を走らせ、楽しそうで、変奏が進んでいく度にスピードアップし、最後の右手が下降していくところからの最後の盛り上がり部分、観客はもう大喜びでした。Cateenさんのリズムと楽しさに満ち溢れたカナダデビューに私も日本から参戦できて、幸せでした。

ラフマニノフ 交響的舞曲 Op.45

休憩後、VMOは興奮冷めやらぬ会場で、ラフマニノフの交響的舞曲を披露しました。協奏曲の時にはピアノの蓋に隠れて見えなかったシェイ氏が見えるようになって感じたことは、後ろ姿が佐渡裕さんのようで、体格がすごくしっかりされていて、エネルギッシュでありながら、細やかな指示もパートごとに出され、オーケストラをぐいぐい引っ張っていく指揮をされる方に見えました。VMOは私が知る他の楽団と比べると、比較的若い楽員さん達が多く見えたので、彼らは分かりやすく、かつ情熱的な指揮に食らいついていっている、一体感を感じる演奏でした。やっぱりラフマニノフのメロディーと和声は美しいと再認識しました。コンマスの女性は、ガーシュウィンの時とは違う方で、彼女のソロもとても美しかったです。

Meet and greet

終演は21:50くらいで、日本でのコンサートよりかなり遅かったですが、Meet and greetに参加したい人達は、ホールの細長いロビーの窓側に並ぶように言われ、私がホールの外に出た時には既に長蛇の列ができていました。私は窓側には収まらずに入口近くのチケットを見せた階段の上あたりから並びました。多分、私の前には200人以上はいらっしゃったかと。並んでいる最中に、写真かサインのどちらかにしてください、というアナウンスがあって、私は悩んだ挙句、写真をお願いしました。ほんの10数秒しか時間がないので、何を話したらいいのか分からなくなりますが、カデンツァが特に素晴らしかったことはお伝えできました。

驚くことに、ディレクターのブランク氏自ら、カメラマンになっていて、他のスタッフさんはいないのかしら?と思いましたが、観客が無茶なことをかてぃんさんにいうかもしれないのを見張る役でもあったのかもしれません(笑)しかし、かてぃんさん、数百人に対し、笑顔で接して、多分最低でも一言ずつは会話を交わして... 貴(言われて特に嬉しくないワード27位でしたね...ごめんなさい)ジェントルマンだと改めて思いました。

ホールの中、meet and greetの列に並んでいる間やホールの外で、バンクーバー在住の日本人の方々と少し会話させていただく機会があり、今日の生演奏がすごく良かった、トロントのソロコンサートのプログラムが魅力的ですごく羨ましい、バンクーバーでもソロコンサートを開催してほしいと話していました。

(ホールでは、少なくとも2ヶ所(下手の舞台上と客席の端)でビデオが回っていたような気がしますが、高校生達の演奏用だったのか、ファイナルコンサートも録画されていたのかは、分かりません。ボストン公演のように、一部分でもVMOかCateenチャンネルから上がったら嬉しいですね)

最後に

改めてまとめることはないくらい、感じたことは書いてきたので、以下には、かてぃんさんのインスタでの感想を載せておくことにします。

一つ書きたいことを思い出した(笑)。ジョージ・ガーシュウィンは、ヘ調の構想のメモ書きに以下を残していたらしいです。かてぃんバージョン3楽章はまさにMore rhythmに溢れていました。

1st: Rhythm
2nd: Melody
3rd: More rhythm

ユリイカのガーシュウィン特集(1981年)(追って詳細追記予定)

かてぃんさん、ありがとうございます!お陰様で、ずっと訪れたかったカナダの大地に初上陸でき、この4日間、バンクーバーとヴィクトリアを周り、たくさんのさまざまな乗り物に乗り、面白いビル、美しい風景、先住民の文化(トーテムポールなど)と触れ、楽しい時間を過ごすことができました。でも、一番の思い出は、All that Rhythm with Cateen! です!

【5/23追記】実は5/8にトロントに移動し、角野隼斗ソロデビューコンサートにも行きました(5/9ソロデビューの感想文はこちら)。

スタンレーパークにいたダチョウの家族たちに
癒されました。チビたちが可愛いかった!

(終わり)

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