キャッチイメージー_-_練習帳

ソフトウェアテストの練習帳


≣ 概要

2019年5月31日に実施されたJaSST'19東北で、参加者へのお土産としてアンケートと引き換えに『ソフトウェアテストの練習帳』という本が配られました。ツイッターで簡単な紹介、

や喜びの声はみたのですが、ブログは見かけていません。

本書内の設問に触れずに紹介することは難しいし、設問や解説を引用して書いてしまってよいのか? 良くないのでは?? という気がして書いていないものと思われます。一般の書籍でなくJaSST'19東北限定アイテムという意識もあるのかもしれません。
そこで、本エントリーでは内容にほとんどふれずに『ソフトウェアテストの練習帳』について書いてみます。

≣ ソフトウェアテストの練習帳とは

『ソフトウェアテストの練習帳』は、JaSST東北実行委員の有志(勇者?)12名が半年以上・一年未満をかけて執筆した248ページのソフトウェアテスト本(B5判サイズ)です。JaSST'19東北で、参加者へのお土産として無料で頒布されました。表紙が「ジャポニカ学習帳」に似ていてかわいいですよね。(かわいい表紙なのは、戦略かもしれませんが)

うわさによると、105冊、オフセット印刷したそうなのですが、参加者(約80名)と実行委員(約15名)と関係者で分けあったらなくなってしまったそうです。増刷の予定はないそうなので、今回配られたものはお宝(レア品)となってしまいました。

さて、今回の本の内容ですが、タイトルの近くに【~・技法編・~】と書いているように、ソフトウェアテスト技法をたくさんの問題を解きながらマスターしようという内容になっています。具体的には、上記のmiwaさんのツイートの通り、

・同値分割と境界値分析(11問)
・状態遷移テスト(9問)
・デシジョンテーブル(6問)
・組合せテスト(8問)
・総合問題(3問)

の合計、37問です。

37問で248ページですので、1問あたり6.7ページです。問題文の多くは1ページに収まっていますので、各問題について5ページくらいをかけて解答と丁寧な解説がついているということです。

≣ こういう本を書きたかった

実は、本書を出す前にレビューをさせていただきました。おそらく前年のJaSST東北の基調講演をさせていただいた関係と思うのですが、昨年末にレビューのお話をいただいたときにとてもうれしかったことを思い出します。
というのは、2010年に『ソフトウェアテスト技法ドリル』という本を書いたのですが、その時のコンセプトが「テスト技法の練習問題をたくさん解いてもらおう」というものだったからです。

ところが、執筆当時、テスト技法についてはマイヤーズ本バイザー本リーコープランド本しかなく、つまりは翻訳本しかありませんでした。

私は、加瀬さんのCEGTESTや松尾谷さんのCFD法、鶴巻さんのPictMaster、私のHAYST法、奈良さんの探針等々、日本発祥の、私がふだん使っているテスト技法のドリルを書きたいと思いました。でも、そのためには、CEGTEST、CFD法、PictMaster、HAYST法、探針等々の説明を書く必要がありました。その結果、問題はそれぞれの章末に少しだけになり、解答・解説もあまり丁寧には書けませんでした。

おかげさまで、ドリル本は今でも読んでいただいているのですが、やり残したモヤモヤ感がずっと残っていたのです。今回の練習帳はそういった意味で私にとって書きたかったものが手に入るうれしさでいっぱいでした。

≣ レビューをして思ったこと

レビューの方法はWordで原稿をいただいて、それにコメントをつけて返す方法でした。さらに、私のコメントに対する著者らの疑問点について、仙台でASTER勉強会を開いて解消したり、後半はZoomで多拠点を繋いで、Q&Aを行ったりしました。

質問は、「郵便番号の同値分割について悩んでいます」といったメタなものから、「デシジョンテーブルの圧縮に納得いきません」といったテクニカルなものまで様々でした。これらのQ&Aは納得するまで続き、納得したものについては、解答や解説に反映されました。

今年の基調講演者の小山さんもレビューし、同値図の大切さや、デシジョンテーブルについてJIS X0125(決定表)の記法に従う方が良いといったアドバイスをくださいました。

≣ 問題集を作る難しさ

今回、問題集なのですが、問題集を作ることは容易なことではありません。上では(あたかも時間やページ数さえあれば書けたかのように)ドリル本の時の言い訳を書いていますが、あのときの章末問題ですら、本文を書くよりも時間がかかっています(本文2日、問題3日という感じでした)。

また、多人数で書くというのは別の課題を持つことになります。それは意見を合わせること。これが(あとからでは)超大変なので、相談を受けたときにまずは「執筆ルールを作ること」をお勧めしました。おすすめした内容はこちらです。彼らはこれをたたき台にして自分たちに合ったルールを作り、使いこなしていました。すごいと思いました。
「執筆ルール」は一見、地味なことのように見えます。しかし、本を推敲する段階で、敬体(です・ます)と常態(だ・である)が問題ごとに違っていることを想像したら、ルールを事前に作っておくことの必要性をわかってもらえるのではないでしょうか。大きな凸凹がでないように書いておく、そうすることで、レビュー時には上っ面ではない「本質に対してのレビュー」ができるようになります。

さて、内容(問題そのものの質)の方ですが、本書はどの問題から始めても良いように各問題は独立しています。しかし、解き始めた問題が解けなかった場合は、その前の問題を解いたあとなら解けるように難易度が工夫されています。(したがって、初心者は、一問目から順番に解いていくことをお勧めします)
こうした作り方は当たり前のように思えるかもしれませんが、本全体の設計ができているから成立していることです。各問題の狙いは何で、問題を解くことでどういう新しい技術が身につくのか、本書はその点の配慮が秀逸です。

≣まとめ

『ソフトウェアテストの練習帳』はJaSST東北の努力の結晶です。私がレビューする前に執筆者たちがチームごとにレビューをしていたのですが、大変な努力をされていました。かなりの週末がこの本の製作についやされたのではないでしょうか。
ということで、運よく手にされた方は、是非、問題を解いて使い込んでください。それが執筆者にとって、一番うれしいことだと思うから。

あと、このnoteを読んで『ソフトウェアテストの練習帳』を読みたくなった方。今、執筆者の皆さんが、多くの人にお届けできるようにがんばっているようです。そのうちに良い知らせがあると思いますのでお楽しみに!

■ 2020/10/4追記

『ソフトウェアテストの練習帳』ですが、加筆・校正されて、一般書籍として2020/1/7に出版されました。JaSST配布版がさらにパワーアップされています。ぜひ、お手にとってお読みください。テスト技法のスキルアップに最適です。


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