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IDE「ジャイ・ビーム-万歳ビームラーオ」の感想(後半にネタバレあり)

はじめに

あくまでも個人的な覚えとして、振り返り目的で書いてます。
映画のレビュー的側面はありません。
インド映画はその背景を知ってからの方が、映画のテーマをきちんと理解できると思っているので、まだ知識不足な自分が見た「初見の印象」とだけ言っておきます。



「インド大映画祭」のシークレット扱いになっていた「ジャイ・ビーム」(Twitter表記では「ジャイビーム-万歳ビームラーオ」)を見てきました。
2分で完売だったので、本当ぎりぎり買えたということみたいです。
日本初上映と告知されてましたが、事前にツイートを見た感じ、本国ですら配信のみで映画館では上映されなかったらしいとか?アマプラで配信があるので、日本のアマプラでもうまくすれば見られるのかも。






主役のスーリヤさんの映画ほかに見た事ないのですが、今回のインド大映画祭で上映の「ただ空高く舞え」の方では髪も短いし、眼鏡などかけていなくて、シュッとした印象。(残念ながらこちらは見られませんでした)

実在の人物というか、実際にあった事例をベースにしているものの、登場人物などは名前を変えて映画化ということで、前情報でも重そうなテーマなので、あらすじを事前によんでから見に行きました。


ネタバレなしの初見感想。

ここから先、Twitterでの初見感想。

判っていての鑑賞でしたが、やはり映像では、心にずんときました。警察だけでなく村の有力者の保身だとか、色々な立場の人達の「自分は穏便に暮らしたい」が見知らぬ誰かを苦しめる現実。 それでも弁護士チャンドルが一つ一つ証拠をかき集め、正義を見せつけていく様は、アクション映画とは別の、じわじわくる盛り上がりで、最後につきつけた言葉は警棒よりも強く振り下ろされて、道を開いた。 冒頭で識字率が低い村の民に、文字を教える先生が出てきたのが、最後までこううまく伏線として絡み合って、崩せないと思っていた壁を地道に打ち砕いていったのが良かった。
物語の魅力以外の話に触れますと。 法定シーンの格好良さ、訴えを起こした奥さんの芯の強さ、警察の拷問に屈せず罪を認めなかった面々の精神力とか……。
拷問シーン、結構きついです。 血がばっと出るような殺傷力高いインド映画もありますが、ああいう感じの暴力じゃなくて、本当に、自分が叩かれているような気持ちになる絵面が。 そういうのが苦手な人は気を付けて欲しいですが。 裁判ものってお堅くない?と敬遠するほどは理屈くささはなくてシンプル。とはいえ、日本語字幕あったからこそ。判り易い字幕になっていたと思う。
エンドロールの前に、この物語の後の流れみたいな説明文が出るんですが、 彼が弁護士として救ってきた数多くの人以上、しいたげられる人が上回るという現実が示されていくのが……。 題材は重いですが、沢山の人に見て欲しい大切な映画を、また一つ知ることが出来たので、#インド大映画祭 に感謝です。
一つだけご注意を。 冒頭、ヘビ駆除用?に村人がネズミを捕まえるシーンで、ごっそりネズミが手掴みされて画面に出てくるので、苦手な方はご注意を。自分は子供の頃にネズミのトラウマがあったので、ヒィってなりました。


この先、ネタバレも含む感想。

鑑賞してから数日たち、改めて振り返ってみた感想をnote用に追記します。

主人公チャンドルは実在人物がモデル。
イルラ族の男性が窃盗の冤罪でつかまり、その家族・親戚も警察に拷問されるという話が発端なので、拷問シーンがかなりきついです。演技とはいえ、本当に痛くないのかと見ていて辛いシーンでした。
その男性が逃走したとされ、彼の妻が弁護士チャンドラを頼って、彼の所在を追う目的で人権裁判を行うというのがおおまかな流れ。
事前に映画のネタバレを読んでいたので、結末は判っていたのですが、とにかく警察がでっちあげた証拠がことごとく壁となり、それを地道に裏をとって法廷で崩していく。
アクション映画の爽快感ではなく、当初は無理だと思わせるほど立ちはだかる証拠と証言の山による絶望的な状況から、一つ一つ足でさぐって綻びを探し、警察の偽証や捏造だと暴いていく様は、物凄く熱いです。

証言する人たちは、警察に逆らうと自分が何をさせるか判らないという想いから偽証しますが、それが見も知らぬ赤の他人を苦しめていくという状況。それでも行方不明になった男性の妻が妊婦にもかかわらず、チャンドルと一緒にあちこち歩き回る様子に、それまでかかわりあいたくないとして黙っていた人の気持ちを動かし、新たな事実を法廷で話すシーンがぐっときました。

また冒頭で出てきた、識字率の低い村人達へと文字を教える女性教師。
チャンドルを妻に紹介したのも彼女。
そして映画の後半で、男性が逃走してから電話をかけてきたという証言を翻すことになるのも、この冒頭のシーンの伏線かと思うと、どんなに完璧に隠蔽しても、人が作り上げた事実と異なる事象は突き崩せるんじゃないかという希望がもてます。

タイトルの「ジャイ・ビーム」の意味。ビーム万歳。
チャンドルが影響を受けた人物であるアンベードカル博士のファーストネーム「ビーム」。
調べ切れていないのでここでは詳細割愛します。

映画前にちらと拝見した記事2件紹介。


映画の中で出てくる警察関係の人達が、本当にこれでもかというくらいに皆揃いも揃って……と憤るんですが、中にはそうではない人間も居ることは居る。
映画の前半で、チャンドルがデモ活動で仲間達と叫んでいるところに、プラカーシュ・ラージさん演じる警察官がやってくるんですが(役職忘れました)、中盤で出てくる彼の科白の中に、弱い者を助けるためにあえて警察が不正や拷問まがいのことをすることもあると言うシーンがあり、彼には彼の思いがあるのだな、と。
裁判が進む中、警察のでっちあげがぼろぼろと出てくるため、警察の不正をあばく人間を(警察関係者から)選べとチャンドルに指示が入るんですが、チャンドルはこの彼を選ぶんですね。
そして終盤では彼の協力を得て、事実が明るみに……というシーンは、共闘という感じがしてグッときました。

裁判には最終的に勝利はするものの、一番望んだものは取り返せなかったという結末。

辛いシーンも多いけれど、それ以上にやはり一人でも多くの人に見て欲しい映画の一つ。

最後に

さてそれから、物凄くミーハーな感想も付け加えておきます。
下の劇中歌のサムネにもなってますが、この髪型と眼鏡、そして法廷での法衣姿。この3つの要素だけでもテンション上がります。

もう少し落ち着いたらまた感想を追記するかもしれません。

日本語字幕付き上映で見られて、本当に良かった。

アマプラ配信リンク↓