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IDE「野獣一匹Ⅱ」を見てきた。(ガッツリネタバレ有り)

はじめに

インド大映画祭で、野獣一匹Ⅱ(Ek Villain Returns)を見てきた。
2なんだから当然前作があるんだけど、前作知らないし、どうやら出てくる人物も違うようなので、これ単体でもOKらしかった。

結論から言うと、ハラハラして楽しめました!!
割と暗いお話なんですが、人間ドラマという感じで大満足です。

出演は、アルジュン・カプール氏とジョン・エイブラハム氏。
チラシ画像が二人の対決ぽい配置だから、ほぼ対等の扱いなのかな、と。
で、現在と数ヶ月前の時間軸が交互に出てくるという作りが、非常に見ていてちょっとやりすぎ感あって混乱した。
過去に遡って的な演出は、そう何度もいらないです。

気になったのは、事前に俳優さんのことに触れた関連ツイ見ていて、結構な頻度でアルジュン・カプールさんのこと死んだ目って言っているところ。
うーん、確かに暗い目でしたね。ヒーローぽくない。ダークヒーローにもなりきれてないかな。
対して、ジョン・エイブラハムさんのことは、年を重ねて良い感じで枯れてきて悪役が似合って来た、とか一人勝ちでは?とかのコメントが。

ここからがっつりネタバレ有り感想

ネトフリ配信しているみたいで、公式トレーラーがつべにありました。
既にこの時点でもうネタバレされている気がしますが。
でも誰が犯人なのかとかは、ネタバレの範囲じゃないとされているのかも。大事なのはそこじゃないというか。

野獣一匹Ⅱ
タクシー運転手であり動物園でも働くバイラヴはラスィカーを愛し、大企業のオーナーの息子ガウタムはアールヴィーを愛した。決して出会ってはならない2組のカップルの出会いが交差する時、運命の歯車が大きく狂い始める…。多数の美しい音楽に彩られたサイコサスペンス。関東地方初上映。今年の衝撃枠。
監督:モーヒト・スーリー
出演:アルジュン・カプール/ジョン・エイブラハム
作品データ:2022年/129分/ヒンディ映画

https://www.ks-cinema.com/movie/ide2023/
インド大映画祭2023作品紹介ページ

出演者の記載順で勝手に、ガウタムが主人公なんだとみる前は思っていたけれど、バイラブもほぼ主人公ですね。

冒頭、いきなりとあるマンションの一室でパーティーを開く男女の場に、窓から男が飛び込んできて、惨殺を繰り返すという過激なシーン。

そして警察は、この猟奇的な連続殺人犯「(通称)野獣一匹」をなんとして捕まえたくて、躍起になっている。
実は、最初勘違いしていて、この連続犯を必死に追う刑事がもう一人の主人公かと思ってました。(すみません)

前半、ガウタムが、とある女性の披露宴の場にバイクで乗り込んできて暴れ、花嫁が「(暴力は)やめて。貴方を愛している」と言った途端、「(彼女は俺を)まだ愛している。今すぐ結婚しろ」とかいって笑いながら去っていくシーン。もうこれだけで、え?何この人?やばくない?という印象を観客に植え付けた。
心変わりした女性を奪うヒーロー気取りなのかと思えば、失恋の腹いせに仕返しなのか、ただの遊びなのか、判断が迷うところ。

その披露宴であばれる様子をとった映像を、とある女性ミュージシャン・アールヴィーがミュージックビデオで使用してブレイク。

とはいえまだ注目されたばかりで、野外フェスでは売れっ子ミュージシャンの「Q」の前座扱い。
ガウタムはアールヴィーに近付き、売れるため、Qを蹴落とすためのの裏工作を手伝う申し出をし、彼女と親密になっていく。


やがて彼女は人気を得て、ガウタムに自分を認知しない父親の話をする。愛人だった母を見て育った彼女は、いつか父に自分を娘と悟らせ、そして思い切り拒絶することで復讐をしたいと打ち明ける。
翌朝、ネットではその父親に対して、アールヴィーがターゲットを定めた(?)というスクープが拡散され、父親はそんな娘は存在しないとメディアに否定。アールヴィーは復讐をする前に打ち砕かれて、事務所からも契約を切られる危機に陥る。

さてここでのガウタムなんですが、てっきり何か父親と関係があって、娘を騙して……という伏線なのかと思ったら、全然関係なくて、ただのサイコパスで、自分に惚れた彼女に悪戯をした程度の気持ちだったらしい。いや、お前……そんなんだから友達出来ないんだよ(実際に友達がいるのかどうかしらないが、なんかいつもぼっちでフラフラしている描写が多い)

一方、動物園の飼育係とタクシードライバーの二枚の草鞋をはくバイラブは、高級メンズ服(多分)の店員のラスィカーが好きで、彼女にすすめられるまま、その店の洋服を買わされ、貢がされていた。(収入のほとんど彼女いつぎ込んでいるぽい)
順調に彼女と親しくなり、やがてドライブする仲に。
ドライブ中、煽り運転するバイクに追い抜かれた彼女は(運転は彼女)、やられっぱなしは気に食わないとバイクを追いかけ、止めるバイラブを無視して、「殺るか殺られるかよ」といってバイクに車をぶつけて、横転させて走り去る。
ここで彼女のちょっと狂気的な「自分が一番主義」が見えてくる。
ドン引きするバイラブ、ここで冷静になって彼女と距離を置けばいいのに、惚れた弱みかずっと傍に居る。
そして景色の良い場所で彼女にプロポーズをしようと指輪を準備するも、彼女が男と密会する場を見てしまう。
傷付く彼だが、彼女を忘れることもできず、今日も彼女の出勤前のお迎えとしてタクシーを日々。
彼女は男との関係がバイラブにバレたと気付くが、しだいに本性をあらわして、彼を言葉巧みに犯罪に誘導する。
ここからのラスィカーの表情がもう怖くて、妖艶で。今までのちょっと生意気ではあるけれど普通の女性から、完全にバイラブの支配者の顔に。
バイラブは、女性にひどい振られ方をした男性を見つけては、相手の女性を惨殺する殺人鬼へと変貌していく。そんな彼は、常にラスィカーに対し「(今の俺を)評価してくれ」と繰り返す。犯罪を繰り返す限り、彼女は自分と一緒に居てくれると信じている。

警察は、映画冒頭のマンションの男女を襲った事件で、その場にいたアールヴィー(だったのかよ。ようやく話が繋がった)だけ死体がなく連れ去られたので、ずっと犯人を追っていた。
スマホ映像(?)に残っていた被害者が「ガウタム、やめて」という言葉を元に、ガウタムをずっと追っている。

連続殺人犯「野獣一匹」はガウタムではなく、別にいると確信している警官の一人が、ガウタムを呼び寄せ、彼と話をする。その際に話した内容によって、ガウタムはアールヴィーを拉致した犯人、バイラブの存在に気付き、彼を探す。

二人の男が互いに一人の女性に心を揺さぶられ、ガウタムはそれまでふらふらしていたのがアールヴィーに段々と心惹かれて、彼女を助けるために奔走するようなるし、バイラブはラスィカーの狂気にあおられ殺人鬼として身を落としていく……。

がっつり真相

もう自分の為の記録なので、ネタバレ書きます。
結局のところ、バイラブをさんざん煽っていたラスィカーは、彼女が男と密会していたのを見られた直後くらいにバイラブに殺されていましたー。え、そうきたか。彼が見ていたのが、彼女の幻影。彼女の幻が、彼を殺人鬼にしていた。
となると、今まで描かれていた狂気的な彼女の一面は、すべて妄想か、それとも多少は実話が混ざっていたのか、どこまでが本当か微妙です。
少なくともそれくらい、彼にとって彼女は忘れられない存在であり、殺人を続けることで幻影の彼女が笑顔になって自分に高評価をつけてくれる、日々だった。

お前の傍に彼女なんかいないぞ、と指摘するのは彼と戦っている最中のガウタムなんですが、ぶっちゃけ「お前には言われたくないぞ」と思ってしまった。
どうせならボロボロでも負けずに一人で逃げ出そうと頑張ったヒロイン・アールヴィーが、バイラブに諭すような感じで言って欲しかった。
……いや、それは違うな。
バイラブは、アールヴィーがガウタムをこっぴどく振ったと思いこんで彼女を捕まえたわけだし、彼女のいう事は信じないな。同じ振られた境遇の男(だと信じている)ガウタムの口から知ることに意味があるのか。

結局、もう彼女がいないことに気付いてしまったバイラブは、飼育小屋へ行き、檻の中の虎の前へ。虎は彼にとびかかる……。
ガウタムたちはよりを戻すかどうかは判らないが、二人はその場を去っていく。

しかし最後の警察施設内のシーン。ベッドで寝ているバイラブ(生きていたんか、ワレー!)に車いすの人物が近付いて、何やら不穏な空気のままエンディングに入ったのがめちゃ気になる。

↑劇中歌というか挿入歌というか、バイラブ側の映像集になってますが、結末を知ると、この彼女との恋人ごっこも全部妄想なのかと……泣きそうになる。とはいえ、貢がせてただのアッシー君とか陰で思っていた彼女が、急に犯罪をする男ならOKみたいな感じでバイラブに寄り添うのは、あまりに急変過ぎたので、生前の彼女にその要素は少しあったのかは判らないけれど、そんな彼女が彼の理想だったのかな。フラれるよりも、自分を振り回す女性の方がいいという。