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スルターン初見感想(ネタバレ有)


はじめに

インド大映画祭でみんなが好きといっている「スルターン」、
本日(8/20)、ようやく代々木のマサラ上映で見ることが出来ました。
皆が好きになるの判る。
事前のネタバレは避けつつ、折角のマサラなので、下の劇中歌だけは予習していきました。
これは坊ちゃんが実家に帰ってくるのを皆で出迎えるシーン。
主役は囚人ディリなどのカールティさん。

マハーバーラタとかラーマーヤナとかの叙事詩に詳しいときっともっと深く楽しめるんだろうなと思うのですが、自分はまだ勉強不足で。
あと事前にどなたかのツイートで見たけれど、主人公のボディガードのガダ役の方はプロレスラーさんらしい。
カールティさん自身、180センチくらいの身長らしいが、このガダが後ろにいることで坊ちゃんが小さく見えてしまう。

ネタバレ配慮なしのあらすじ。

ヤクザの一家の一人息子・主人公スルターン(本名ヴィクラム)は、生まれた際に母を失っており、一家の子分たちに大切に育てられてきた。
暴力・殺しを嫌う母親だったため、今は親元を離れ大学でロボット工学を学び、いつか日本と取引をする事業を夢見て、貯金もしていた。
久々に帰郷し、一家に迎えられる中、祝いの席で突然の襲撃。
父親が撃たれ、子分たちが負傷する中、スルターンはボディーガードのガダに守られ無傷だった。
翌日、病院で子分の家族から、自分の息子は一家の為に命をささげているが、一人息子のあなたは跡継ぎから外され安全な場所で守られていると責められる。
返す言葉もなく、実家を離れる決意をし、暴力が絶えない現状に対し父親を責めるが、父は彼を引き止めず、もう帰らないというスルターンに対し、「最後は戻ってきて欲しい。子分たちを見捨てないでくれ」と意味深な言葉を残す。
翌朝、目を覚ますと既に父は亡くなっていた。
(※この亡くなっていた原因が謎。襲撃の際の怪我が原因なのか?それとも別?前の晩まで普通に立って歩いて、息子と普通に話していたのに)
葬儀が行われるなら、ピザ屋に扮して襲撃してきたのが警察だったという情報が入る。彼らはヤクザを一掃し、街の浄化作戦をするつもりだった。
警察を訪れ、襲撃の真相を警視総監?にきくスルターン。
そして子分たちを守るため、彼らに暴力をやめさせる決意をする。

一家に暴力沙汰を禁止するスルターン。
しかし生前、ボスがある村から依頼を受けて、その村を苦しめる悪党たちを退治することを約束していた。
ボスの右腕である総長は、その約束を果たすべく、スルターンの目を盗んで、なんとか村に20人ほど派遣しようとするが、彼に見つかってしまう。
子分の一人のお見合いのためにある村へ行くのだと苦しい言い訳をするが、スルターンはじゃあ自分もついていくと宣言。
村では、事情を知らないスルターンのため、一家と口裏を合わせて偽の見合いを設けるが、花嫁役のヒロインにスルターンは一目惚れ。

なんやかんやあって、村がジャヤシーランという男とその仲間に苦しめられていると知り、最終的にジャヤシーランを叩きのめす(※殺してはいない)んだけど……。
そこまで至る間に、スルターンは警察と約束した「半年間、一家にはどんな犯罪もさせない」を守るべく、子分たちにひたすら暴力を禁止して、部屋に閉じ込めるが、
ボスの残した約束を果たすため総長たちはなんとか村の敵を叩きのめしたいので、スルターンの目を盗んで、なんどかジャヤシーランを仕留めようと画策。
この辺りの、坊ちゃんと子分たちの攻防戦が前半の見どころかな。

(ちなみにジャヤシーラン役、見覚えあると思ったら、KGFのガルダ役の方じゃないですか……。髭と髪型ほぼそのままだから判ったけれど、これ完全にビジュアル変身されたら見分けつかないな。
なお、調べてみたらKGFの方が先らしい上に、ヤシュくんの元々ボディガードさんだったとのことなので、KGFでデビューして、そのまま役者としてスルターンでも抜擢されたってことかな。髪型とかもあえて、デビュー作のオマージュかも。)

ジャヤシーランを追い払ったことで、一時的に村が平和に。
一方、スルターン坊ちゃんの地元では、警察によるヤクザ一掃計画が着々とすすみ、坊ちゃんはなんとか子分たちの命を守りたくて、この村にとどまらせるため、ヒロイン目当ての農地改革という建前で子分たちに農業をやらせる。
農業って重労働なわけだけれど、子分たちがなんやかんや嫌々ながらも、坊ちゃんの命に従って農地を耕して、順調に苗が育っていく。
村に田んぼの緑が広がり、ヤクザを嫌っていたヒロインも、スルターンの努力を認めたのか彼の気持ちを受け入れ、やがて二人は結婚。
実は、ジャヤシーランのバックには別の人間がいて、この村から人を立ち退かせて、周囲から鉄を採掘する事業を画策していた。
政府?の人間がやってきて、その計画を暴露し、村人たちに追い出されないよう農業を盛り上げ、この地は不毛の地ではないことを証明せよと伝える。
最終的に彼ら、金儲け目当ての敵が、スルターンの平和主義にやきもきしている子分たちを煽る為、バス移動中のスルターンとガダと総長の三人だけの時をねらって、彼らを襲撃。スルターンを守る形で総長は亡くなってしまう。
このバス襲撃の直前のシーンで、総長さんはスルターンが屋敷を売り払って、更に自分の貯金もすべて使って、子分たち一人一人の為に村の土地を買っていたことを知り、泣いて喜ぶシーンがあるんだけど、その直後だっただけに非常にしんどい。
総長はなくなる間際、子分たちを見捨てないでと言い残し、ガダに坊ちゃんを守るよう改めて願って、息を引き取る。

村に戻り、総長の葬儀をし、復讐に沸き立つ子分たち。
なんとか彼らを止めようとするも、こんな時まで止めるのかと、ついに子分たちも反論。そりゃ自分達の兄貴分が殺されて、敵討ちしたいにきまっている。
全ては敵の思惑通り。
最終的に、力比べで勝者の意見に従うことになり、苦戦しつつもスルターンが勝利するが、失望した子分たちは、それぞれ去っていってしまう。
スルターンを指示した子分たちも、去っていった彼らが危険にまきこまれないか見ていてやってくれと言われ、彼らの後を追う形でその場を去っていく。

スルターンが一人になったと知り、敵は村を焼き討ちにすると宣戦布告。
子分たちを失って、スルターンとガダだけが残る状況に、村人たちも「今度はあなたの生き方をしてくれ」と村を離れることを提案するが、父の残した約束を守るため、スルターンは村を守ると誓いを新たにする。
そして襲撃に備え、戦う村人以外はすべて他所へ逃がし、ヒロインもトラックで村を脱出。

やがて夜になり、敵がやってくるが、仕掛けた罠などで順調に彼らを阻止。しかし戦う内に、やはり人数的に足りないのと、スルターンとガダ以外が、普通の農民のおじさんやおじいちゃんなので、戦力としては心許なく、満身創痍でなんとか食い止めたのが精一杯。
ぼろぼろの彼らの元へ、今度はずっと反撃の機会をうかがっていたジャヤシーランがやってくる。見るとヒロインは彼につかまり、人質に。
絶対絶命の中、スルターンの後方から新たな車の光が。
お約束と言えばお約束だけど、判っていたけれど、子分たちが戻ってきたーーーーー!
村を離れた彼らだったが、弁護士から、スルターンが彼らのために土地を用意していたことなど事情を聞かされ、ついに彼の気持ちを汲み取った。
というか、スルターンが不言実行すぎたんだよな。(映画あるあるだけど)
最終的に反発していた子分たちも、坊ちゃんに頭を下げ、彼らの姿を見て坊ちゃんの目にも涙。
「暴れ者じゃない、農夫としての闘いだ」ということで、彼らはジャヤシーランへと一団となって向かっていく……。

このシーンで暗転してエンディング入るんだけど、エンドロール流れながら、平和になった村で、秋の収穫をするみんなの姿が出てくる。
当初は嫌々だった農業だけど、豊かに実った稲穂を見て、皆、満足そうな笑顔。これは総長も望んでいた景色。

ツッコミどころはあるんだけどね

ロボット工学専攻の坊ちゃん。
帰郷して宴の席で、ロボット型の映写機みたいなもので、一家の皆に映像を見せるシーン。
その中で、「ラジニカーントのロボットみたいだな」という科白があるのは、やはりタミル映画ならでは。
あとロボット事業で、日本に興味あるみたいなんだけど、日本てそれほどロボット方面で発達している印象ないんですけど。むしろインドの方がすすんでいない?
あとこの設定、何かその後の伏線かなって思ったけれど、特に活かされなかった。ロボット技術で、村を救うとかそういうのも無かった。

ヒロイン。
村の長?らしき一家の娘さんらしい。
インド映画に出てくるヒロインって、なんでみんな、こう気が強いだろう。最終的に主人公に心を開くにしても、あくまでもこの映画、坊ちゃんと子分たちがメインなので、二人の甘いシーンは1曲分くらいしかない。

ヒロインのお父さん、元々ボスに助けを求めてきた人だけど、暴力的な子分たちの面々を見ても、すぐに責めるようなことはせず、ちゃんと冷静に物事を見渡しているようで、理解がある人。とはいえ、まさかスルターンが自分の娘に一目惚れするとは、想定外だったろう。

インド映画のあちこちに引っ張りだこの名脇役、ヨーギ・バーブさん。
この映画では通称ポンコツという名で皆から呼ばれている。
もう少し主人公に近い位置の役かなと思ったら、そうでもなかった。あくまでも常に一緒に居るのは、ボディーガードのガダだった。

子分の一人、マイケル。
子分の中でもちょっと異色で、ウィーアー・ザ・チャンピオンって歌いそうな風貌のマッチョ。
村人に制裁を加えているところを坊ちゃんに目撃され、出ていけって言われるんだけど、実は誤解で……からの、理由も聞かずに自分の事を追い出す発言を坊ちゃんがしたことで、反旗を翻す。
もう一人タラヤ?、割と早くから、平和主義の坊ちゃんに苛立つような顔していたから、マイケルをかばうシーンのところで、てっきり坊ちゃんに刃向けるくらいはするのかな?と思っていた。ボスの椅子にこっそり座って、王座狙うぜみたいな顔していたから。
危険分子になる可能性ありの二人だったから、坊ちゃんを裏切って実は……みたいな事も予想していたが、去っていくだけで割と平和だったな。
これ、他のヤクザ映画だったら、首を狙うくらいの展開はありそうだった。
結局のところ、彼に危害を加えるまではいかないのは、やはり赤子の頃から彼を見守ってきたからなんだろう。

ジャヤシーランとの最終戦、なんで最後まで描かなかったのか謎だった。でもまぁ勝つことよりも、子分が戻ってきたシーンが最終着地地点だったと思えば、端折ってエンディングなのも当然か。

スルターンが生まれる日、一家は襲撃にあう訳だけど、ここで生まれたばかりのスルターンを最初に抱くのが父親じゃなくて、総長ってのが後半になって泣けてくる。
ボスの右腕である総長は、老婆から赤子を託され、愛称「スルターン」を呼び守り抜くことを誓うんだよね。
※スルターンはイスラムの方では、支配者とか王の意味があるよう。

スルターンの帰宅を祝う場で、ピザ屋の配達に扮した複数人から襲撃を受けるところ。
ここのシーンがおそらく、囚人ディリのセルフパロディみたいなことなんだと思う。(※なお、囚人ディリのDVDは買ったがまだ自分は見ていない。但し、そのリメイク版のボーラーは既に見た)

あと総長が襲われた時のバスをスルターンが運転して、敵の攻撃から逃げるところも囚人ディリオマージュなんだろうな。

警察署長だか警視総監だかの役の俳優さん、タミル版ヴィクラムとヴェーダーの親分さんかなぁ。
この辺りはちょっとまだ見分けがつかない。

もうちょっと思い出したら、追記するかもしれません。

最後にかわいいガダさんを。
プロレスラーとのことですが、俳優デビューしたのか、それとも一時的な抜擢だったのか。ガダの科白は少ないんですが、しゃべる声が可愛い。



等身大坊ちゃんの登場

今回は、代々木八幡コミュニティセンターという、いわゆる映画館じゃない場所でのマサラ上映だったんですが、立派な座席とスクリーンが完備されていました。チケット販売はあくまでも地元渋谷の人優先ですが、その時点で完売していなければ区外の人も買えるということで。
インド大映画祭さん協力ですけれど、IDEでも存在しなかった「スタンディ」が今回の目玉。まさかのカールティさんほぼ等身大のスタンディですよ。
一緒に誰も映っていないから大きさが伝わらないけれど、180センチあります。

下見に行った時は坊ちゃんは廊下に立ってました。

おまけ

今回の代々木八幡コミュニティセンターの「夏のインド映画祭り」、
スルターンの他にサーカスの上映もあったのですが、都合が付かず自分は不参加でした。
スルターンの上映回でも、別室に坊ちゃんの等身大パネルと共に、サーカスの顔はめパネルもありました。
用意された鈍器と共に坊ちゃんと一緒に写真撮る方は結構いらっしゃいましたが、顔はめパネルはハードル高いのか、見る限りではやっている人いなかったですね。


こういうのを作る時って誰にOKとるんでしょうね。配給元?
これどこで買うんでしょう、ドンキ?鈍器だけに。


紙のチケットいただけたの、良い記念でした。ありがとうございます。