『魔導書大戦RPG マギカロギア』シナリオ「鮮血が支配する記憶」

■シナリオスペック
 プレイヤー人数:4人
 リミット:2(シナリオ条件を満たした場合は3に変更)

■注意
 このシナリオは、第三階梯の魔法使い4人で遊ぶことを前提につくられたシナリオです。「基本ルールブック」に加え、『幻惑のノスタルジア』の「1.04 断章の回収」「4.01 禁書の変更点」のルール変更を使用します。

■背景
 六分儀市に住む少女、「舞姫ミユキ(まいひめ・-)」は絶望していました。ある日、世界には自分には「見えない力」があることは確信してしまったのです。彼女の恋人(導入1PC)の存在はその確信をさらに強くさせるだけでした。そして「見えない力」への強い憧れと、それに手が届かない絶望によって、彼女は、断章〈鮮血〉に憑依されてしまいます。彼女は断章に憑依されることに抗い、自ら命を絶ちます。しかし断章は既に彼女の血の記憶に憑依していたのです。
 一方、魔法使い「狐耶麻ケンジ(こやま・-)」は、導入2PCを嫌悪していました、とにかく導入2PCを蹴落としたい、その願いを断章につけいられました。
 それらの断章を世に解放したのは、〈混沌主義者〉に属する〈書籍卿〉「犬神博士(いぬがみ・はかせ)」でした。彼は、自らの蔵書である、禁書「鮮血が支配する記憶」による魔法災厄の進行で、世界をキャンパスとして生まれる芸術を愉しんでいるのです。

■舞台
 シナリオの舞台は、六分儀市と呼ばれる東京郊外にある地方都市です。六分儀市に関する詳しい設定については『Roll&Roll Vol.78』に掲載されています。『Roll&Roll Vol.78』をお持ちの場合、ルールブックに収録されたシーン表の代わりに、「六分儀市シーン表」を使っても構いません。

■準備
 各PCには以下のいずれかの設定がつきます。GMはキャラクター作成時によくプレイヤーと相談してください。

●導入1
 キミは大法典から「鮮血が支配する記憶」という禁書の回収指令を受ける。危険な魔導書は収集され、管理されなければならない。推奨経歴は書警。
 ※導入1のPCは、セッション開始時にプライズを自動的に取得します。

●導入2
 キミは愚者(一般人)を魔法で殺した罪で、狐耶麻ケンジ(こやま・-)に告発された。キミは自らの無実を証明しなければならない。推奨経歴は訪問者。

●導入3
 キミには舞姫ミユキ(まいひめ・-)という愚者(一般人)の友人がいる。彼女は魔法で死亡した。キミは彼女を殺した魔法使いに復讐を誓う。推奨経歴は異端者、または外典。

●導入4
 キミは予知夢を見た。それは六分儀市が魔法災厄で消失する夢だった。キミは破滅の未来を止めなければならない。推奨経歴は書工、または司書。

■導入
 このシナリオには、4つの導入場面があります。
 各シーンの最後に、シーンプレイヤーは1D6を振って、それに【根源力】を足します。その値が、そのセッションの初期の【魔力】となります。

●シーン1
 導入2PCが、愚者(舞姫ミユキ)を魔法によって能動的に殺した容疑で、狐耶麻ケンジ(こやま・-)に告発されるシーンです。
 PCは〈大法典〉の魔法廷に容疑者として出廷しています。狐耶麻ケンジは、抗弁を受け入れず、PCに罪があることを信じて疑っていません。罪を認めた場合は、魔導禁固100年の計が下されるでしょう。
 このシーンでは、「狐耶麻ケンジ(こやま・-)」のハンドアウトの【人物】欄を公開してください。そして、PCは関係欄に彼の名前を記入し、【運命】を1点持ちます。【運命】の属性は、「運命属性表」でランダムに決定しましょう。

●シーン3
 導入3PCが、愚者(舞姫ミユキ)による死を知り、復讐を誓うシーンです。
 まず過去のシーンとして、PCと舞姫ミユキが中が良かった頃の演出をしてください。彼女は街で見かけた通りすがりの恋人たちをみて、どんな話をしているのだろうと興味津津でした。そしてPCに恋人がいるか否かを聞いてきます。その回答に関わらず「世界は謎だらけね」と大仰に言って笑います。自分のことは話しません。
 そして後日、彼女の死亡を知ります。魔法の痕跡があることは確かなようです。原因をつきとめることを決意したら導入シーンを終了してください。
 このシーンでは、「舞姫ミユキ(まいひめ・-)」のハンドアウトの【人物】欄を公開してください。そして、PCは関係欄に彼女の名前を記入し、【運命】を1点持ちます。【運命】の属性は、「運命属性表」でランダムに決定してもいいですし、選択しても構いません。

●シーン3
 導入4PCが、六分儀市消失の予知夢を見るシーンです。
 六分儀市は、曇天の空が太陽の光を遮り、生き物や物体すべてが赤黒い鉄と化して、廃墟のようになっています。PCはこれが予知夢であることを認識します。そこにシルクハットを被り、ビロードのマントを纏い、手にはステッキを携えた老紳士、犬神博士が登場します。彼は赤黒い鉄の美しさを褒め称え、それらは自らの存在を失念した故に生まれた抜け殻のオブジェであると語ります。そしてPCの反応の如何に関わらず「真なる理解に至るものが少ないのも現時代性ゆえ致し方なし。賞賛と喝采は後世に遅れてついてくるものであろう」と言って消え去ります。
 このシーンでは、「犬神博士(いぬがみ・はかせ)」のハンドアウトの【人物】欄を公開してください。そして、PCは関係欄に彼の名前を記入し、【運命】を1点持ちます。【運命】の属性は、「運命属性表」でランダムに決定しましょう。

●シーン4
 導入1PCが、〈大法典〉より禁書の回収を命じられるシーンです。
 PCは、六分儀市にある市立図書館に呼び出されます。ここは〈大法典〉の六分儀支部があります。呼び出したのは、市立図書館の館長代理である影原文子(かげはら・あやこ)。彼女は、第三階梯にある司書で、六分儀市の魔法使いたちの統括をしています。
 彼女は最近、六分儀市の崩壊を予知した魔法使いがいることを告げ、それが魔法災厄の予兆であること、禁書〈鮮血が支配する記憶〉の仕業であることを告げ、封印結界の発動を成功させるために、2日以内(2サイクル)に断章を回収して、最終的に禁書を回収ように命じます。なお断章の1つを「舞姫ミユキ」が持っていたことは判明しているが、既に彼女は死亡しているとのこと。
 このシーンでは、PCは関係欄に「舞姫ミユキ」の名前を記入し、【運命】を1点持ちます。【運命】の属性は、「運命属性表」でランダムに決定してもいいですし、選択しても構いません。

■マスターシーン
●断章〈鮮血〉を回収している、かつプライズ「彼女との想い出」を使用していると発生するマスターシーン。
 断章から生まれた過去の空間。予知夢シーンの一種として扱います。
 そこには舞姫ミユキがいます。彼女が死んだ時の場所、そして服装。断章に憑依された彼女は、その絶望から今まさに、自ら死に至ろうとしています。彼女は誰かに殺されたのではなかったのです。
 本シーンに登場するためには、ゲームマスターが「夢」の分野からランダムに選んだ特技で判定を行い、成功する必要があります。本シーンに登場したPCは、舞姫ミユキに対する【運命】が1点上昇します。

 本シナリオでは、このシーンで運命介入を行うことが出来ます。運命介入に成功すると、彼女の死を時を遡り、妨げることが出来ます。運命介入を行うPCは、1D6を振った後、2D6を振ってランダムに特技を1つ選び、その特技による判定を行います。成功した場合は、過去彼女は死ななかったことになり、現在もそのように事象が改変されます。ただし彼女に対する【運命】は0になり、彼女は運命介入に成功したPCに関する記憶をすべて失います。失敗した場合は、判定を行ったPCは、”クライマックス終了時に”消滅します(本シナリオルールとして即座には消滅しません)。運命介入は1セッションに1回しか行えません。また「自己犠牲(『大夢消滅』p.227)」のルールを用いて、運命介入判定を行う前に、魔法使いが運命介入に成功しても消滅することを選んだ場合、その運命介入判定にプラス4の修正がつきます。
 上記判定に関するルールは、判定前にプレイヤーに説明してください。

 運命介入の判定に成功して、舞姫ミユキの死亡を覆した場合は、断章の力が弱まり、禁書に封印儀式を行うまでに、自由に行動する僅かな時間を稼ぐことが出来きます。リミットを2から3に変更してください。以降のシーンは、本シーンで起きた事象を踏まえて、禁書との対決を決意し、準備する展開を想定しています。

■クライマックス
 禁書〈鮮血が支配する記憶〉は、六分儀市の人、物すべてから、自らを成す記憶を奪い、赤黒い鉄に変えていきます。それを止めるため、〈大法典〉の儀式魔法が発動し、禁書がバインドされます。禁書本体との魔法戦を行ってください。この魔法戦は集団戦になります。
 舞姫ミユキを生き返らせていない場合は、禁書は彼女にそっくりな姿をしています。彼女は自分に可能性の扉(魔法)を開かなかった世界に絶望しながら、PCたちに呪詛を吐きます。
 狐耶麻ケンジに断章が憑依したままの場合は、彼は禁書の従者になっています。血走った眼で狂ったように笑い、導入2PCを糾弾します。禁書が【騎士召喚】した場合は、彼が騎士となります。
 犬神博士の持つ断章を回収しなかった場合は、禁書は彼の制御下にあります。新しいコレクションの能力を十分に楽しむつもりです。

■結末
 禁書の回収に成功すれば、六分儀市の異変は元に戻ります。わずかな人々の記憶にはあやふやと残るかもしれません。
 禁書の回収に失敗した場合は、六分儀市は赤黒い鉄と化し、世界は大混乱に陥ります。禁書の力は広がりつづけるため、再度回収に臨む必要があるでしょう。

■ハンドアウト
 このシナリオのハンドアウトは4個あります。導入フェイズ終了時に3個が公開になります。残り1個(「導入1PCの秘密」)は「未公開ハンドアウト」に対しての調査判定に成功しなければ、公開されません。第1サイクル終了時に、このことにプレイヤーが気づかなかった場合はGMが示唆してください。

●狐耶麻ケンジ(こやま・-)
【人物】
 〈大法典(コーデックス)〉に属する魔法使い。第三階梯の司書。漆黒の長髪で、冷たい目をした細面の青年。
 愚者(舞姫ミユキ)を魔法によって能動的に殺した件で、(導入2のPC)を〈大法典〉に告発した。舞姫ミユキの身体に、(導入2のPC)との繋がりを示す魔法の痕跡があるという。

【秘密】
 彼は(導入2のPC)を毛嫌いしている。
 それは彼と(導入2のPC)の魔法名が偶然にも同じだからだ。彼はそれを我慢出来ない。その苛立ちが心の隙を生み、断章〈記憶〉に憑依された。

断章〈記憶〉
初期憑依深度:1(第2サイクル以降、サイクル開始時に+1)
攻:3 防:3 魔:6
魔法:【騎士召喚】
特技:《歪み》

●舞姫ミユキ(まいひめ・-)
【人物】
 六分儀市に住む愚者(一般人)。都立東雲高等学校に通う女子学生。
 よく市立図書館で本を読んでいた。シェークスピアが好き。

【秘密】
 彼女は世界に絶望していた。世界には自分には「見えない力」があることは確信していた。その力への強い憧れにより、彼女は、断章〈鮮血〉に憑依されていた。
 この【秘密】を公開した者は、断章〈鮮血〉から魔法戦を仕掛けられる。

断章〈鮮血〉
攻:5 防:1 魔:6
魔法:【吸精】p.193 呪文《血》
特技:《血》

●犬神博士(いぬがみ・はかせ)
【人物】
 学派〈混血主義者(クロスオーバー)〉に所属する〈書籍卿(ビブリオマニア)〉。魔法名は『混じり合う水銀(アマルガム)』。古参の間では有名な変人魔法使い。奇妙な美学の持ち主で、不思議な力を持つ魔導書を好んで蒐集している。

【秘密】
 犬神博士は、プライズとして「断章〈支配〉」を持っている。「断章〈支配〉」のスペックは下記の通り。
 「断章〈支配〉」を倒したPCは犬神博士に対して1点の【運命】を獲得します。属性は「宿敵」となります。
 犬神博士は「断章〈支配〉」が回収された場合、天才の芸術は理解されないのは致し方あるまいと言って去っていきます。

断章〈支配〉
攻:3 防:3 魔:3
魔法:【支配】
特技:《裏切り》

●導入1PCの秘密
【人物】
 (導入1のPC)は〈大法典(コーデックス)〉に属する、六分儀市の魔法使いだ。
 現在、〈大法典〉の指令で、禁書を回収している。が、どうやら(導入1のPC)の目的はそれだけではないらしい…。

【秘密】
 かつて(導入1のPC)と舞姫ミユキは、恋人同士だった。
 (導入1のPC)は自身が所持するプライズ「彼女との想い出」を公開して、使用すること。

■プライズ
●彼女との想い出
 キミと舞姫ミユキは恋人だった。彼女は死んでしまった。しかしその記憶は今もキミの胸の奥でそっとくすぶり続けている。
 キミは、いつでもこのプライズを使用して、魔素が発生することが出来る。サイコロを4個振る。そして、その目に対応する魔素が発生する。キミが許可すれば、そのシーンに登場しているほかのキャラクターが発生した魔素を獲得しても構わない。プライズの使用に際しては、キミとヒロインの幸せな過去を語ること。
 なお本シナリオでは、未公開のハンドアウトの1つとして「(キミのPC名)の秘密」がある。当該ハンドアウトが調査された場合も、上記プライズを使用しなければならない。
 本プライズの受け渡しは不可。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?