見出し画像

不器用なお子さんはこの3つを確認しよう

振り返り

 前回は感覚調整機能について、まとめの記事を書いてみました。
 感覚の偏りがあることにより、日常生活が難しくなり色々な問題が起きてくるんでしたね。まだ記事を見ていない方は、参考にしてみてください。

行為機能(プラクシス)とその障害

 今回からは、この感覚統合機能の中でも中核的な機能でもある『行為機能』についての記事になります。

行為機能(プラクシス)とは・・・
『なじみのない行為を計画し、実際に動かす力の事を言い、行為機能障害は、この運動を計画して、実際に行うことが苦手で不器用になっている状態を指す。

 自閉スペクトラム症のお子さん方は、力が弱かったり、麻痺があることで不器用になっているわけじゃないんですね。この行為機能に何らかの不具合があって、身の回りの動作や遊びが十分に育たないんですね。

 このプラクシスには段階があり、頭の中では『観念化』『企画』『実行』の順で進んでいきます。

行為の『観念化』

 ある目標となる動作を行うために、複雑な動作を思い浮かべる段階になります。この段階が難しいと、何をやっていいか分からなかったり、同じ遊びばかりやって遊びが広がらなかったり、自分から遊びを始められなかったりします。

行為の『企画』

 観念化したものを、実際にどのように体を動かすかを決めたり、正しい動きの決定を行う段階になります。この段階が難しいと、工作を使用と準備をするけど、なかなか形にならなかったり、字を書くときに上手に書けなかったりします。

感覚とプラクシスの関係

 頭の中で行為の観念化や企画をする場合には、それらを行うためには十分な感覚が必要になります。ここでは『触覚』『固有感覚』『前庭感覚』に分けて解説します。

触覚とプラクシス

 皮膚から入った触覚の情報は、神経によって脳へ送られます。その途中経過で感覚情報は整えられて、脳に着くときには、それがなんだか分かるようになるんですね。

 ポケットの中に手を入れるだけで、目で見なくても『あ、家の鍵、あったあった』と分かります。

 この時、触覚に感覚の偏りがあり、識別する力が弱いと外界からの十分な情報が入力されることはありません。感覚が偏っているから、運動の観念化や企画にも影響があることが簡単に想像つきますね。

触覚の確認(準備物:羽毛)
 お子さんには両腕を出してもらい、目を閉じてもらいます。確認する人は指、手のひら、前腕のどれか1つを選び、羽毛でごく軽く触れます。お子さんがどこを触れられたか分からない場合には触覚の課題がありそうですね。

固有感覚とプラクシス

 コップの中にコーヒーを入れた状態で、よそ見をしながらでも、私たちは歩くことができますよね。歩くたびにコップの中のコーヒーがこぼれてたんじゃたまんないです。また、電気がついていない部屋に入っても、『電気のスイッチはこの辺だったよなー』なんて、目で見なくてもスイッチを点けることができます。

 触覚同様、固有感覚でも同じことが言え、感覚の偏りがあれば、もちろんプラクシスに影響が出るのが分かります。

固有感覚の確認(準備物:紙、鉛筆)
 紙に『〇〇さんのお家』『1つ目の家』『2つ目の家』を描いて準備しておきます。お子さんの指を、『お家』に置いておき、『1つ目の家』と『2つ目の家』を確認させ覚えさせます。その後、お子さんの顔を別の紙で隠し、記憶を頼りに『お家』から『1つ目の家』へ指を移動させます。また『1つ目の家』から『2つ目の家』へ指を移動させ、その動きを確認します。大きくずれるようであれば課題がありそうですね。

前庭感覚とプラクシス

 前庭感覚は、固有感覚や触覚から入ってきた情報や筋肉の緊張をコントロールします。十分な感覚情報を脳に伝え、脳の中に体に関する地図(身体知覚、身体図式など)を作ります。
 触覚や固有感覚の情報が統合できなかったり、筋肉の緊張が低かったりすると、脳の中に体に関する地図が十分に作られず、不器用につながることが想像できますね。

前庭感覚の確認
 猫背姿勢になっていないか、お子さんの腕や足をマッサージしたときに筋肉が柔らかすぎないか、一定の姿勢を保持することが苦手ではないかなどの聴きとりで、難しさがあれば要注意ですね。

注意

 確認で挙げたものは、本から引用したものや私が作ったものになります。十分な検査ではないので、気になる方は、感覚統合療法を実施している施設で感覚処理・行為機能検査(JPAN)日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP)といった検査の受験をおススメします。

まとめ

 今回は行為機能(プラクシス)について記事にしました。
 前回まで記事にしてきた感覚に関する機能が、ここでも必要になります。皮膚や筋肉から入った情報が、脳に行くまでにどのように統合されていくか、詳しく知りたい方は神経生理学の観点からみてみると、更に分かりやすいかもしれませんね。

引用・参考図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?