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万引き家族がどうスゴイのか

カンヌ最高賞を受賞した『万引き家族』は緊張感溢れる愛いっぱいの細部まで拘った、今の時代にふさわしい映画だ。

この映画から強く伝わってくるのは、法の外側。ルール(法律や決まりごと)よりもっと根源にある、「生存」を知る。皆それぞれ、一生懸命生きているということ。

そのみなぎるパワーったら半端なくって、出てくる登場人物全員とにかく一生懸命で必死で、その生き様と圧倒的な生命に胸を打たれる。ヒトなら、わかるであろう根源的なものに迫ってくる。胸が苦しくなる。

    ________ここからネタバレ注意________

特に私は、松岡茉優が演じるサヤカちゃんと、5歳のリンちゃんが私そっくりで、もうなんか観てられなかった。甘えん坊で優しくて、一生懸命で、自分の居場所を必死で探して見つけて腰をおろして、役に立ちたくて、がんばり屋さん。みんなそれぞれのやり方で、薄っぺらい正義なんかなくて、形式だけの「家族」や「居場所」でない、本物の思いがそこには存在する。世の中法といい、制度といい、形ばかり。あの家の繋がりである「絆」と「愛」が、感情をもたない「制度」によってバラバラにされる。今の日本社会の実態や生き方を描き、生きるパワーをくれて、人生の応援をしてくれる、そんな心強い映画だ。

「万引き」という言葉に批判する政治家や「貧乏なのに…」と騒ぐネトウヨがいるみたいたけど、そんな小さなことじゃなくて、この監督が伝えたい思いはもっともと壮大。そんな主のストーリーとはズレた小さいところにしか目が行かず、そんな感想しか持てない人がいるなんて、こんなに工夫して伝えているのに「貧乏映画」なんて思ってしまう日本はどうかしてると思う。万引き家族よりよっぽど、今の社会のほうが問題だ。

全員分かりやすく、映画で伝えたいことは言葉で言ってたのになあ。
全然演出難しくなかったのに。
「お金で繋がってるんじゃない」って言うリリー。
リンちゃんの服縫うおばあちゃん、
おばあちゃんが大好きなサヤカちゃん、
リンちゃん抱きしめる安藤サクラ、
リンちゃんを大切に可愛がるしょうた君。
それぞれの言葉や姿勢は、映画観れば、考えなくても自然と感じるし、わかる。

なんだろうなあ。映画って、みんな娯楽娯楽カンタンに言うけど、そうじゃなくて、「世の中の生き方」だったり「社会のおかしさ」を直接言葉にして訴えても誰も聞いてくれないから、老若男女皆にわかるように伝えている媒体ってただそれだけだから、もっと映画を集中して観た方が監督の思いや映画を見た意味が深まるんじゃないかなあ。ただ見るだけじゃなくて、どういうメッセージなのかを考えたり、映画を見たあとの帰り道と映画の演出を照らし合わせて、こういうことか!と考えたり。

『万引き家族』この時代で一番いい映画だと思うから、もっとその価値が広まって欲しい。映画見たあと、すぐツイッターで映画の感想をサーチする友達が周りに結構いるんだけど、ツイッターっていわゆるネトウヨの巣窟でかなり偏りあるから、そんなの見るより自分の感想や感情を見つめた方が有意義だと思う。

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