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選ぶ勇気 捨てる勇気

「高みを目指せば必ず、厳しい選択をしなければならない時が来るんだ」(by由利菖次郎)
「俺は両方取りに行く」(by由利匡平)

「初めて恋をした日に読む話」第9話。
大波乱の第8話を経て、残り2話。山下くんが順子への大きな愛を示して、四角関係の一角から離脱……残るは20年戦士の雅志と、順子のしくじり人生を大きく変えた匡平、順子がふたりのどちらを選ぶのかが最大の焦点になる。そんなタイミングで雅志にロシア転勤の話が舞い込み、雅志は意を決して順子にプロポーズをした。

一途に想い続けながら何もできなかった20年分の想いをぶつけた雅志のプロポーズは、とんでもなく素敵だった。「あの雅志が……ちゃんと男の子じゃん」と思わず山下節を言いたくなるほど。普通の女子なら十中八九、落ちる。でも残念ながら順子にとって雅志は従兄弟という存在で、それ以上でもそれ以下でもないというのが正直な気持ちだろう。それでも雅志の真剣な気持ちを受け止め、雅志のことをちゃんと考えようとするのは順子らしい。

ただそう伝えた直後、順子は思う。「雅志といるのに、自分が自分じゃなくなるみたい」と……そう、残念ながらそれは恋じゃない。これは前回山下くんが教えてくれたこと。「好きになりたい」と言った順子の言葉に、諦めがついたと。結婚をしたいなら、それでも進めるのかもしれない。でもこの作品が大切にしてきたのは、順子が初めて恋を知り、新たな人生を歩み始めること。そう考えると……雅志エンドは限りなく遠くなった気がする。誰よりも人のことを考えられる、優しくて包容力のある素敵な人なのに……そう思った雅志押しの視聴者がどれだけいたことか。

対する匡平は前回の辛い経験を乗り越えて、受験勉強に邁進。父とも本音を言い合える関係を取り戻し、本来の素直で芯が強い匡平に戻っていた。
「取り戻すんじゃ足りない。大逆転」
100%自分の意志で東大を目指す決意をした匡平に、もう迷いはない。目に力が戻った匡平の表情は完全にゾーンに入っていて、この子のチャレンジがどんな結末を生むのか、わくわくするばかりだ。

それでも順子をめぐるライバルの動向は気になってしまう。父に宣言した通り、匡平は東大と順子、両方を掴みにいこうとしているから。でも「お前ならできるかもしれないな」と父に思わせるくらい、今の匡平には勢いがある。実際、順子と匡平の心の距離はどんどん縮まっていた。初詣で、初めて順子が匡平に勉強を教えた時のことを思い出すシーン。「何を選ぶかで人生変わるんだよね」という順子に、「俺は春見を選んだんだよ」とまっすぐ見つめて伝える匡平。「好き」という言葉がなくても、もはや告白にしか聞こえない。しかしそんな矢先、雅志が順子にプロポーズしたことを知ってしまう。

さすがにショックを隠せない匡平。あんなに体調管理が大切だと言われたのに、事実を確かめるために寒空の下順子を待ち続けて発熱してしまう……そして駆けつけた順子に尋ねる。「結婚するって本当?八雲さんと」と。なぜそれを知っているのかと困惑する順子を見て、「断ってないの…?」と更に切ない表情を浮かべる。このシーンのふたりには、胸が締めつけられた。匡平の気持ちは言わずもがな、順子の気持ちも間違いなく今までと違うように見えた気がしたから。これは大きな変化だ。

結局順子の本当の気持ちを確かめられず、体調も万全でないまま迎えたセンター試験。自己採点の結果は合否ギリギリのライン…それでもこの状態でここまでやれたのが匡平の強さ。頑張ってきたのはダテじゃない。結果は見事に一次通過。この時の自信に満ちた匡平の笑顔は輝いていた。
そしてセンター試験の結果が出る直前、もうひとつの約束の日を迎える。
2月3日――匡平の18歳の誕生日だ。

匡平は順子に初めてはっきりと自分の気持ちを伝える。「好きです。好きです。先生のことが好きです」…と。「ご褒美ください」と伝えた時よりも、初めて順子を抱きしめた時よりも、匡平の順子への愛が溢れていた告白。そのまま慈しむように抱きしめる匡平に応えるように、順子も匡平を抱きしめていた――初めて匡平の気持ちに心から応えたいと思った瞬間。自分自身の気持ちに、はっきり気づいたのは間違いない。ふたりの想いが重なった瞬間、わたしの涙腺は決壊した。

これであとは東大に合格して、ふたりの夢が叶ってくれれば……そんなハッピーエンドを想像していたのに…そう簡単には終わらせてくれなかった。二次試験の当日、順子が事故に遭うという予想外の展開が待っていたのだ。ここまできて、まだふたりに試練を与えるなんて…思わず吉澤先生(脚本)を恨みたくなってしまった。

二次試験の前夜。「元気?」と電話をかけた順子。自分が落ち込んでいた時、匡平に励ましてもらったのと同じ方法で。それに「…元気」と答える匡平。ふたりの間に流れる空気からは、お互いを大切に想い合っていることが伝わってくる。それなのに、たった一夜で状況は激変してしまった。

それでも匡平は、何とか心を落ち着けてこれまで順子から言われた言葉を思い出す。順子の夢は、自分が東大に現役で合格すること。何よりもそれを望んでいる。そう気づいたからこそ、順子の元に駆けつけるのではなく、受験することを選んだ。一方を選ぶということは、もう一方を捨てるということ――これは順子がセンター対策で教えてくれたこと。どちらも勇気がいる決断だ。だけど匡平は「両方取りに行く」ことを目指している。だからこそ、この決断が彼の目指す幸せに繋がってくれることを願わずにいられない。

いよいよ明日、最終話を迎える。
どんな結末が待っているのか…もはや順子・匡平エンドを見られることが一番の望みだけど、できれば登場人物全員が幸せになってほしい。そう思えるくらい、はじこいメンバーはみんながみんな素敵で魅力的なのだ。どうかこの上なく最&高なハッピーエンドを!

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