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さわちゃんの学校

#こんな学校あったらいいな  5月

さわちゃんは、4月から東京から来た転入生。学校が大好き。山沿いにある小さな学校で、窓からは海と空が見える。そして近くにある動物園からお客さんがやってくる。

ある日りょうが、さわちゃんに言った。

「えーやーひまかー?」(時間ある?)    

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背が高く、優しいのだけどいよく先生に叱られているりょう。おじいちゃんと暮すりょうは、生粋のうちなーんちゅ(沖縄の人)。そして先生はバイリンガル。さわちゃんは、「なにがあるの。」と聞いたら「先生の畑仕事、放課後に手伝わない?」とりょうが言った。さわちゃんは、戸惑った顔でうなずいた。りょうは、ニヤッとわらって遊びに出かけた。(もうすぐ3時間目のチャイムが鳴るよ。)やはり、りょうは遅刻して教室に戻ってきたらやっぱり叱られた。                            放課後、森先生が車から苗を下ろしていた。さわちゃんは、先生と一緒に運んだ。りょうはまだ来ていなかった。森先生は、楽しそうに野菜を植える準備をしていた。「今日はね、からし菜♪ オクラ♫ キュウリ♬ へちま♩、島唐辛子を植えるよ。」さわちゃんも先生の手伝いをした。

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りょうやっと来る

「りょう、おそいよー。」と手を振った。何やら、りょうはおおきなダンボールを抱えていた。りょうが近づくにつれて、何やら音がする「ばさっ。」また、事件がお起こる。「わーぬにわんかい、カモうてぃ、母ちゃんが学校んかいむっちいけーでちてー。」(俺の家の庭にカモがきて、お母さんが学校に持っていきなさい)りょうも困っている様子。・・・だからって。  森先生は、大笑いしながら、そこへ放しておきなさいね。と言っただけで、動物園に返す話はしなかった。このカモどうするのだろう?心配になったさわちゃんは、2羽のカモが歩き去ってい行く姿を見つめていた。


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りょうは、森先生と楽しそうに話していた。「ぬーうぃーるばー?」(何植えるの)「からし菜、オクラ、キュウリ、 へちま、うん?これ何だったかな?・・・」「ぱぱやーか?ゴーヤーあらに?」(ではないか?)「こんな所にパパイヤの木を植えたら栄養取られて野菜が育たないさあね。」「だーるやー。」(そうだね)「先生、からし菜ってぬーやが?」(何ですか?)りょうは、野菜の種類を知らないのか?さわちゃんは、心配になって説明した。「少し辛い葉っぱで、塩もみしてチャンプルーに混ぜる野菜。」りょうは全く分からない。すると、森先生は言った。「さわちゃん、大丈夫、いい説明だったね。りょうには、こう言えばいいのよ。「シマナー。」りょうは「あはあ」とうなずいた。

りょうは、他の野菜を調べている。「ねり、キューウイ、ナーベーラーやさやぁ。」森先生は大きくうなずいた。さわちゃんは、おどろいた。「先生、果物のキーウィ植えるんですか?」 すると、りょうは、「あらんやさに、キューウイ。」と言いながら種の入った袋の写真を見せた。さわちゃんは、それがきゅうりだということをやっと知った。その時だった・・・・・。 

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 「バサッバサッ」  

森先生とりょうは、空を見上げた。さわちゃんも後から見上げた。「カモが帰ったね。」「どこに?」さわちゃんは聞いた。「動物園にさぁ。」とりょうが言った。森先生も大笑い。「本当に動物園に帰ったのかなぁ。」とさわちゃんは心配だったけれど、あのカモは次の日も校庭を散歩しているのを見てほっとした。そろそろさわちゃんが帰る時間になった。森先生は「これも必ず植えてちょうだいね。」2人で「はーい」。何だか不思議な香りのする苗だった。それは、りょうも知らなかった。「さわさん、今日はありがとうりょうさんあなたもね、カモも帰ったから帰ろう。そう言った途端りょうは一目散に走っていった。

  収 穫     

あれから、2か月がたった。畑に植えた野菜の収穫時期だった。りょうは毎日野菜を観察していた。理由は、自分が早く見つけて食べたいからだ。畑には、色とりどりのやさいがそろった。

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ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! 事件は起こった。

りょうは、このところ毎日畑のそばであそんでいた。その理由は、実った野菜を一番に食べたかったからだ。ある日のこと、りょうが畑のそばで泣き叫んでいる。森先生もおどろいて鳴き声の方向にはしっていった。すると、手で口をあおぎながらりょうが立っていた。森先生は、りょうの足元に落ちている島唐辛子を見て、すぐに口をゆすいで冷やして!と大騒ぎ。(いくら赤い実だからってサクランボじゃないからさあ)

さわちゃんは、のんびり、へちまの緑のカーテンをみながら、メスの花を探していた。森先生の説明の後、私たちは、身を見つけて収穫をすることになった。さすがに、りょうも緑色の野菜を探していた。この学校では、ネイティブのりょうとの話は絶えない。私もだんだん方言も使えるようになった。

自然と生きる

森の中の小学校の隣には、牛小屋があり、教室には備品のハエたたきが置かれている。給食の時間が来た。私は、スープを入れる係。りょうは、ハエたたきを持って、勇者のように飛んでくるものがいないか見張っている。これは、楽な仕事じゃない。どうしてかと言うと、教室中をいつでもどこでも走っていかなくちゃならない。もちろん窓を閉めているからほとんど来ない。「へー!へー!」(はえ)と言いながら給食を守る勇者。勇者は時には慌てふためくが、だれよりも速かった。 

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この学校にはもう1つ自慢がある。ダチョウを飼っている家があるのだ。ある日、森先生が1つだけ卵をもらってきてくれた。すると、りょうが、自分の上着を脱いで、「おれ、親鳥」と言って抱きしめる。そうやって、森の中での生活は優しい風を運んでくれる夢の楽園だった。