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エンドレス学校

今年のクラスの担任の先生は、去年まで算数だけを教えていた先生。そして、僕の名前は、翔。自分で言うのも変だけど、大人しい方かな?これから僕が話する物語を見れば僕のことが分かってくれるはず。

僕たちが、授業中に騒いでいると、必ずその先生がやって来た。すると嘘のように静かになる。だけど、算数が分かりやすくて人気で自称永遠の28歳、美渚先生だ(半世紀は生きてるはずだ)

いよいよ新学期、僕たちの学年は、男の子がやんちゃで、女の子は大人ぶっている。というより、やんちゃぼくたちとトラブルがあった女の子を見てたらしく、黙っていたほうが割がよい。美渚先生は、ちっとも笑わなかった。去年まで、すれ違う僕たちに必ず声をかけて冗談を言っていた。なのにどうしてだろう。だけど、僕たちには1つ楽しみがあった。それは、美渚先生のクラスになると一人ひとりにタブレットパソコンがあるってこと。教室の横の方で充電中のパソコンが輝いて見えた。

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美渚先生が黒板に何やら書いた。読んでみると。『自分で自分をコントロールできる子』何のことだろう?美渚先生の話が始まった。「皆さんのことは、3年生の頃から知っています。この中にも先生のことを知っている人がいるでしょ?」「はーい、3年2組によくいた。」「はーい、ちこちゃんの人形持っている。」「はーい、怒られたことがある。」声を出したのは、ぜーんぶ男の子だった。僕は、知っていたけれど言わなかった。「よく知っているね。さあきちんと座っていますか?」いつも斜めに座っていた人も真っすぐ座っている。「美渚先生は魔法使いだ。」「みんなに伝えておきたいことがあります。左側にあるパソコンのこと知っていますよね。このパソコンは、学校にあるパソコンとは違います。」

①セキュリティーはおうちのパソコンとだいたい同じです。

②学習に使います。但し、設定は触っちゃいけません。 

③買い物もできちゃいます。

「但し、買った時はお金をもってきてね。」 「ゲームできますか?。」「出ました!」先生は即答だった。「②になんて書いているの?皆さんの考えいるゲームは、お家でやってください。ハイ次。」「ユーチューブも見れますか?」※ここから長くなるので結論からにする。要は、動画を見たら無茶苦茶でデーターを使うのでやめましょということです。「動画を見るっていうことは、音が出るよね。」(だから何?)「隣に座っている人は君の動画に興味がない場合どう思うかな?」「一緒に見ようっていう。」「だから、見たくないのよ。」「音を小さくする。」動画を見るためにはWIFIにたくさんの力が入ってしまいます。すると例えば、1か月を20日として考えますよ。5分で約90MBの力が必要です。」「メガバイトって何ですか?」「それはねえ、データの消費量の単位。」「皆さんが運動するにはエネルギーが必要でしょ。インターネットも必要です。」「僕たちのエネルギーって何でできていますか?」「炭水化物と糖分と脂肪です。」・・・・。(何の話だけ?)

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美渚先生はとても丁寧に話してくれたけど、僕たちの特徴は、こうやって時間が過ぎて授業が進まないってことなんだ。「キーンコーンカーンコーン。」美渚先生の話は面白い。ても、結局パソコンを触れなかった。美渚先生は僕たちのエンドレスにはまってしまった。でも僕は算数が好きだから、5分で90MBだから、10分で90×2=180MB、1時間で180×6=1080MB=1GB(ギガバイト)っていうことを計算したことを先生と話にいった。美渚先生にすごい!って言われた。

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パソコンをさわりたい!

美渚先生が僕との話のことをみんなに伝えてくれた。僕は、みんなに「すごい。」って言われて嬉しかった。先生が「分かった人。」と聞いたら手を挙げた人は10名くらい。先生が大げさに、教室の真ん前で倒れて見せた。昔やってた、バカ殿って感じ。みんな笑い転げた。美渚先生が立ち上がり「残念なことがあってもこんな風に立ち上がりなさいね。」先生から勇気をもらった。僕たちは、パソコンをたくさん使えるようになった。もちろん3つの約束を自分でコントロールすることを守りながら。ある日、3人の友だちがパソコンを取り上げられた。理由は、設定を勝手に変えてしまったからだ。でも先生は怒らなかった。その代わり、『もとの設定に戻したらいいよ』と伝えた。「変えたくらいなら、元に戻せるに決まっている。」僕は信じていた。しかし世の中そう甘くはなかった。「先生変えました。」と1人がパソコンを持って行った。ここで稲光が光った。その子は、別の絵を探して変えただけだった。またエンドレスの始まりが始まった。あれから4か月たったが未だにあの3人の設定はそのままだった。

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事件勃発2度あることは3度ある

図工の時間に工作をした。くるくる回しながら絵が動く仕組みだ。但し、先生は作り方は、取扱説明書にあるので作り方の説明はしませんだって。でも早く終わればパソコンでプログラミングができる!    みんなはりきって作っていた。なかなかできなくて破っちゃった子もいたけど落ち着いたら先生と一緒に作っていた。「先生、できました。」くるくる回る厚紙の隙間を美渚先生はじっと見ていた。見た後に先生は3秒間ため込み顔を笑顔にして、「おおおおおお、いいねえ。」と言った。作った友だちは不安な顔から笑顔になった。僕もみたけど、バスケットのシュートをうつ瞬間が見えた。そう来るとみんなが早く仕上げにはいった。集中力が凄い。おしゃべりしていたら損ということやっと気づいたらしい。

全員が出来上がり、家に持って帰りたいという友だちがいた。美渚先生は、評価してからだから来週かえすね。と言ってくれた。いよいよ月曜日が来た。「では、全員持って帰ってくださいね。」先生はそう言ってみんな大事そうに抱えて持って帰っていた。放課後、事件は起きた。「学さん、カウンターにあなたの工作が置いてあるよ忘れないで帰ってね。「先生ちょっと待って、友だち待ってるんだ。」「いやだ、待たない。手にくっつけておきなさいね。」美渚先生の言うとおり。学さんは、ついつい物をどこかに置いて忘れる事件が多い。その前も、理科の先生が上履きを持ってきてくれていた。次の日の給食時間、6年生から鉛筆やペンの落とし物6本が届いた。どうも、この鉛筆には『学』と書いてあるらしい。美渚先生は学さんを呼んだ。やはり、学さんの物だったらしい。美渚先生は、「あったからよかったよねでも、探してた?」と聞くと学さんはおどおどしていた。「無いなら探すか、先生に声をかけてね。」学さんの様子を見ていると何だかぎこちなかった。(まさか、筆箱もないと言うことは、誰にも知られていなかった)

いよいよ休み時間パソコンを使って勉強する時間が来た。書いたものを友だちとアイディアを出すことができる。僕は引っ込み思案だけど、友だちが見てくれて、アドバイスしてくれた。嬉しくてたまらなかった。                 5時間目に先生が何やら黒いものを持ってきた。こないだの工作だ!!!「これは誰のでしょう?ヒント5年3組って書いてあります。」教室の空気が一瞬止まった。その時、学さんが手を挙げた。「トイレ。」「トイレだったら言ってきてね。」と先生が言った。すると、学さんが立ち止まった。クラスのみんなは、トイレに行くと思っていた。すると、先生の前で「ぼ、ぼ、僕の物です。」「ドンマイまなぶ!!」クラスのリーダーがみんなの緊張をほぐしてくれた。さすがに美渚先生も怒る気力がなかった。「また?」×5回、先生のセリフはそれだけだった。

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次の日の朝、目を疑った。先生の机の上には、学さんの工作が置かれていた。これで2度目だ。どうやらその工作物を2年生がひろい、2年生の先生に渡し、ちょうど音楽の先生と話していたら、それ、5年3組の子と言われ、職員室に届けられたらしい。この工作物はいつになったら家に帰れるのだろう。美渚先生は、怒っていなかった『2度あることは?』といったらみんなが『3度ある』と答えた。『3回目楽しみにしてるよ!』と美渚先生は笑って伝えた。さすがに3度目はなかった。あとで聞くと、どうも学さんはめんどくさいから、あの工作を折りたたんでランドセルに入れたらしい。これは、内緒。 

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次の日、副リーダーが「最近落とし物が多いです。」という意見が出た。「そういえば、先生、このパソコンでセンサーを付けることができるとききましたけど、本当ですか。」「本当です」「じゃあ、机の1/3の所に物が落ちたらセンサーが反応して電気がつくものを作りませんか?」(その前に落とすなよ。)早速パソコン好きのメンバーが集まり、計画を練っていた。その日の給食時間、またもや隣のクラスの悟さんと担任の先生がやって来た。美渚先生も呼ばれて廊下で話していると、学さんが呼ばれた。僕は、5年生になって「また」というワードを何回使ったことだろう。後で聞くと、学さんの落とした鉛筆やペンは、筆箱に入っていたらしく、学さんが公衆電話で電話をかけた時、そばに置いていたらしい。それを見つけた悟さんは、この筆箱かっこいいと思って、中身を出して筆箱だけをもっていったらしい。でも、学さんは、探していなかったはずの筆箱を見て、驚いていた。(こっちが驚くよ)探していない学さんも悪いのですが、この場合悟さんが持って行ったということで、悟さんが謝っていた。

学級新聞発信

僕は、いつも友だちを観察している。最近、友だちいないのか心配になってきた。すると美渚先生がやってきてこう言った。

「翔さん、いつもありがとうね、今、悩んでたでしょ。」先生は魔女か?なぜわかる。「うちのクラスはパソコンをつかいつづけたいけどねぇ。」翔さんが、いつも学さんと話してくれてるでしょ。先生は、翔さんや学さんがいてくれてるからこそ頑張ってくれてるのよ。」「3月のエンドはあるけれど、見守っててくれる?」「先生僕ね、このクラス好きなんだ。だって、いつも笑顔でいられるんだ。そしてね、さっきパソコンチームに入ったんだ。」「何かやりたいことがあるの?」「はい、ネット新聞です。落とし物も載せたいです。」僕らはみんなでチームを作り発信していこうと思う。すると、学さんが、走ってきて僕も入れて?と言ってきた。僕たちは、いいよと言って仲間に入れた。学さんは、落とし物コーナーの係になった。

コメント 2020-08-10 173208