見出し画像

バーのマスターに素朴な質問をしてみた(後編)

JR中央線立川駅北口から歩いて3分のところにある「ショットバー ザネリ」のマスター大沼さんへのインタビュー後編。なぜ立川にお店を出そうと思ったのかとこれから目指していきたいことについて伺いました。

前編はこちらから

3.立川を選んだ理由


大沼 まわりの先輩方がやはりみんな雇われバーテンダーで、独立が目の前に迫っているような人たちばっかりだったんで.、必然的に自分もいつかは独立みたいなものが頭にありましたね。資金とかの話もあるので、まずは自分一人で小さいお店でもなんでもいいからやりたいと思ったときに、食べ物も作れなきゃだめだなって思って、別のスペイン料理のお店に一回勤めています。その後に立川のバーに勤めて、独立ですね。

ースペイン料理のお店は荻窪とか中央線沿線だったんですか?

大沼 いや、全然違う場所でしたね。

ー違う場所だったんですね。スペイン料理屋のあとになぜ立川のバーで働こうと思ったんでしょうか? 中央線沿線だったからですか?

大沼 そうですね、それが大きかったです。やはり、最初に働いたところのイメージが良かったのと、あとは、そのスペイン料理屋さんが残念ながらあんまり僕には性に合わなくって。まあ、一つはそのかっちりした会社組織だったっていうのとか、他にも理由はあったんですけど。そこも飲食店が何店舗かある会社で、最後に働いたのがお茶の水で、主な顧客層がそこに通勤している人だったんですよ。お店のスタイルもあったんですけど、やっぱり住宅街でやってるお店のほうが、お客様との距離が近いなと思って。
 僕は荻窪や阿佐ヶ谷とか、住んでる人が主な客層だったときがすごく楽しかったイメージがあったので、住宅街がいいなあと思って。そこでなじみがあるのは中央線沿線だなと。それで中央線沿線の募集かかっているところをちょっといろいろ見て面接の約束を取り付けてみようとしたんですね。「吉祥寺も受けるかー、なんだこれ、立川かー」って、行ったことないけど、吉祥寺過ぎれば中央線も住宅街が多いだろうと。都心の方はどうも自分には違う気がするし、と思って、立川の面接のアポを取り付けて、当日電車を降りて立川駅北口出てみたら、伊勢丹があって、その伊勢丹の建物になんかでっかいモニターついてて。

ーそうですね(笑)。

大沼 話違うなーと。これはどうやら僕の知っている住宅街ではないぞと。間違えたなと思って、面接受ける前から、断ろうと思ってました(笑)。「他のところも並行して受けてて、ちょっとそっちの方が……」と言って断ろうと、大変失礼ながら思いまして、面接に臨んだわけですよ。

ー(笑)。

大沼 でも結局は立川で働くことになってたんですけど、いざ働き始めてみたら、住宅街がいいなっていうのも狭い価値観で、住んでいる人もいれば、働きに来る人も、遊びに来る人もいるっていうのがすごく立川の強みなんじゃないかなと思ったんですね。いろんなお客さんの層があるっていうのが、働いていてすごく楽しいので、立川いいなーと思って、結果的には自分がここでお店を開くことになったわけですが。


ー独立を決めてから、この場所にお店を出すのはすんなりと決まったんですか?

大沼 いや、それがもう立川大人気で。立川で勤め始めたのは13年前なんですけれど、そのころはそんなに人気があるような気配があんまりなくて、3年ぐらい勤めた時点、10年くらい前ですかね、立川に店出したら意外とまだ都心のほうの同業者にも気づかれてない穴場じゃんと思ってました。

 独立を考え始めて、具体的に探し始めたのが7年前なんですけれど、この間にガラッと立川の市場価値が上がったようで、いざ探し始めたら、小型の空き店舗が全然ありませんという状態でした。これは困ったなと。結局1年ぐらい不動産情報をチェックしたりして、ずっと探しました。やはりこういう小型物件は内輪で決まっちゃうところも多いみたいで。

 実はこの店もそういう感じで決まったんですよ。たまたま以前勤めていたところのお客さんが、とある居酒屋さんによく飲みに行くよっていう話をされていて、すごいおいしいから行ってごらんて言われて、休みの日にそのお店に行ったんですよ。店主さんも気さくな方で、話しているうちに「おー! なに、どっか飲み屋働いてるの?」って聞かれて、「これこれこういう立川のバーで働いてます」って言ったら、「じゃあ今度飲みに行くわ」って言われたんですよ。僕も酒が入ってるんで「いやいや、今のところじゃなくて、いまちょっと独立しようと思って物件探しているんで、独立したら僕のところに飲みに来てください。そのほうが(自分に)お金入るから」って言って(笑)。

ー(笑)。

大沼 そうしたら「なに、物件探しているの?」って言われて、「そうなんですよ、なかなか出ないんですよ」って言ったら、たまたまここのお店の前のオーナーさんとその店主さんがお知り合いで、「知り合いでね、駅前のお店たたもうかどうしようか、みたいな話をしている人がいるから、話聞いてみてあげようか」って言われて。

ーすごい。

大沼 そうなんですよ。それで連絡先、電話番号を書いてっていわれて帰ってきて。でもそうはいっても連絡来ないだろうなと。初めて行ったお店だし、話の流れでそうなったけどお酒も入ってたし。そう思ってたら、翌日速攻電話がかかってきて「マスターに電話したら、一回お店来てって言ってたから行ってみて」と言われて。当時勤めてたお店終わったあとに行ってみたら古い感じの内装のお店で、僕はこういう古いものが好きだったんで、内装なるべくそのまま使わせてもらいたいなぁと思ったんですよね。だから「あー、こういう感じ好きなんですよー、いい内装ですよねー」って言って、「このまま使えるんだったら、使いたいですね」みたいな話をしてたら、そのままトントンと決まって。 

ーすごい引きですね。

大沼 それでも、やっぱり自分で想定していたよりお店が広かったんですけどね。たぶん最初にここが紹介されたら、ちょっと広いなぁとか、ちょっと出店したい地区と違うなとか、いろいろ考えちゃってたと思うんですけど、1年探して本当に出ないなっていうのを身をもって実感していたんで、もう即決でした。

ーこういうのは決まる時って縁みたいなのありますよね。

大沼 いろんな人からそれは聞かされていたんですけれど、やっぱり身をもって実感すると、「あー、こういうことか」と思いますね。

カウンターからの眺め。奥にテーブル席がある。

4.目指していきたいこと


ー最後にこれからやっていきたいこと、こうしていきたいとか思っていることはありますか?

大沼 あー、立川最高齢バーテンダーになりたいですね。まあ、要は誰よりもうまいフードを出そうだの、誰よりも儲けようとか、まあ、なんでしょうね、興味がないわけじゃないけど、なんていうのか続けるほうが大変だなと思ったんですよ。自分で目指すっていったらそこですかね。いや、もちろん、そのためにはまずいもの出したらお客さんも来なくなるし、続かなくなるから、たぶんそこに全部集約されると思うんですけど。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?