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人知るとも人知らずとも花は咲く ブルーアーカイブ『陽ひらく彼女たちの小夜曲』感想

人見るもよし、人見ざるもよし 我は咲くなり

武者小路実篤


 皇帝陛下万歳!(40K地方のあいさつ)

 異端者に向かってボルトガン撃ったりチェーンソードをブンブン振っていたらいつの間にかブルーアーカイブが三周年を迎え、ヒナがピアノを弾いていました。早すぎる……時の流れが……


 今回の記事ではタイトル通りブルアカのイベント感想を書いていこうと思います。
 当然ながらネタバレを含んでいるため未プレイの方は読むのを避けていただいたほうがよろしいかと思います。また本文中には個人的な解釈が多大に含まれますので、勝手におれが言っているだけでとくに公式の裏付けがあるものではないことにご注意ください。


全体的な感想

 良かったな~~~~~~……。

 いままで部活ごとにスポットライトが当たってきたゲヘナに対し、総体として「ゲヘナ学園ってこんな感じ」を見せてくれたイベントでしたね。

 今回とくに良かったのは、ヒナの視点からの断章をはさむことで「(先生のいない自然体での)生徒と生徒同士の関係」を眺めることができた点ですね。このへんはスイーツ部イベでも上手いなと思ったところですが、今回もまた気合が入っていました。カスミはヒナとどれほど相性悪いのかとか、食券をなくしたジュンコに対して美食研究会が超ドライでカスの公安9課みたいな温度感なのも面白かった。こいつらスタンドプレーから生じるチームワークしかなさそう。
 また、風紀委員会や万魔殿といった組織がどう運営されているのか、組織内でどういう人間関係があるのか、生徒たちからはどう思われているのか……というところもリッチに描かれており、世界観の深掘りとして面白かったですね。


万魔殿のイカれた女たち

 驚きの政治的無関心から爆誕した、羽沼マコト体制下の万魔殿。現実のおれたちはちゃんと選挙に…行こうね!と改めて実感できましたね。

 アルちゃんもそうですけど、なんか芸人向きの人材が多いですねゲヘナは。なんていうか、なりたい職業と職業適性ってほんとに違うんだな…と思いますね。
 アルちゃんは営利団体やってるくせに収益出さないのが上手なんでNPOに勤めたほうがいいんじゃないですかね、と平生おれは思っているのですが、そういった視点で見るとマコトは地図を眺めながらピンを差して「わがゲヘナの領土が広がる…」とかニヤニヤ笑うより地球儀を回しながらピン芸人やって「まだ助かるまだ助かる、マダ・ガス・カル!!」とか叫んでたほうが絶対名声を得られると思うんですよ。適職に就くっていうのは難しいですね。


 ただマコトという人物を見てみると、同じ笑いの神に愛された陸八魔アルとは少し違い「笑いによって全ての欠点が許されている」という人物なんですよね。
 このへんホントにアルちゃんと比較してみるとわかりやすいのですが、たとえばアルちゃんは優れた戦闘能力や部下への的確な指示出し、仁義を通す人間性、ハルカへのきめ細かいメンタルケアなど、本人はリーダーとしてハイスペックなんですね。なのにテンパり癖などのあふれ出す笑いの才能ですべてを破壊してしまう。マコトは彼女とはまったくの真逆でエデン条約の件といいガチのやらかしが多く、すべてを破壊する無能さを天性の笑いの才能がカバーしている人物像に見えます。


 そんなマコトを取り囲む女たちも相当アホで本格的アホの集団なのが面白いですね。イブキとイロハが居なかったら芸能事務所やってたほうがよかったまである。

 とはいえある程度の善性があるというか、マコトがおかしくなったときには狼狽えたりと根っから悪い連中ではないのがうまいバランスだと思います。あくまでマコトが面白いから乗っかっているだけで、イブキが泣き出すようなことがあれば辞めるなど人として最低限のラインを守っていて不快にならない。


 マコトってちょっとバランスの取り方が難しいキャラクターな部分があって、行動だけを文字に起こすと「真面目にやってる他人に嫌がらせをして自分に権威が集中するのを目論む」、という正直かなり際どいところがある……。そこへコメディリリーフやほどほどで真っ当な意見を出してくれるサツキたちがいてくれるのは、いい具合に中和してくれていると思います。

 まあ、どのみち一番まともなイロハにしわ寄せが来るのですが……。なんか、イロハが何かにつけてサボりたがる理由もより一層説得力を増しましたね。こんなオモシロ政治団体で官僚やっとったら頭おかしなるで。

 

風紀委員会は意外と組織として健全

 一方でストッパーを務める風紀委員会は思っていたより健全な組織でびっくりしましたね。


徹夜と休日出勤は…ヤバい!


 まず前提として、いままではヒナのオーバーワークがフィーチャーされており、徹夜や居残りなどで風紀委員会は非常に(労働環境が)ブラックな組織なのではないかと思われていました。”先生の存在は、もはや限界に達しているヒナにとって精神的支柱となっている”………たぶんこれまで多くのプレイヤーから先生とヒナの関係はそう見られていたでしょうし、イベント前半でもそのように見せている部分があるのですが…



 実際のところ、ヒナはヒナで納得して仕事ができているし、万魔殿の無茶振りも「よくあることだから」と流していることが明かされるんですよね。日々起きるトラブルに対してしんどいはしんどいけどそれなりに受け流す体制、仕組みづくりができている感じ。少なくとも業務でメンタルを病むまでは行っていないんだな、と推察できます。

 さらにアコが自主的に動いてくれたり、何かあればイオリやチナツが分担したり、言わなくても準備して「一緒に行こう」と同行を願い出たりするなど、自分で判断して行動できる人材がメチャメチャ育っている組織だということがわかってくる。


👺判断が……早い!!

 細かいところなんだけど、これ本当に良かったな~~……と思ってて。

 このあたりは過去イベントの感想記事でも書いたんですが、たとえば山海経の生徒会に当たる玄龍門なんかはキサキのワンマン経営に陥ってコントロールが出来ていなかったりするので、そこを比較すると「トップが全部事細かく言わなくてもやっといてくれる」「中間層で指示出しをやってくれる現場リーダーがいる」といった点で風紀委員会はかなり先行きが明るい。
 末端の風紀委員もやらかしてしまったときは正直に報告しているし、ヒナも「大事なのはその次の行動よ」と諭している。言いにくいときでも報連相がしっかりできてて上司も寛大と、教育がよくできている組織ですよね。ヒナの威光に頼り過ぎだったりアコ・イオリがちょっとヌケてるのがやや問題なものの、もう少し成長すれば十分あとを任せられる程度なんじゃないでしょうか。

 個人的に、いわゆるワーカーホリック属性というか「頑張っている人が頑張り続けて潰れる」という展開を(シリアスとしてはいいですが)ギャグとして消化できないしあんまり好きになれないかも……と思っていたので、今回のイベントではこれまでの描写を逆手に取って「ヒナにとって潰れるほど負担があるわけではないよ」「そこそこ分担はできてるよ」と内情を描きつつバランスを取ってくれたのは良かったなと思いますね。ちょっと軌道修正というか、あんまり重たすぎないちょうどいいところを狙って深掘りしてくれたなぁと。


ゲヘナ学園の良いところ

君は君 我は我なり されど仲良き

武者小路実篤


 とくにこのイベントで素敵だなと思ったのは、ゲヘナの面々が「我が強いけどそれはそれとして互いを認めている」というところですね。

 組織間のしがらみというのが、よく見てみると今回マコト以外さほど気にしてないんですよね。いろいろお互いの組織に文句を言いつつ、イロハもヒナに対して「お互い大変ですね…」と同情してたりと個人主義の良い面がクローズアップされているように思います。
 どこに属しているかではなく、自分がどう思っているかがハッキリと言える校風なのはいいことですね。ゲヘナも治安がムチャクチャすぎて良くないと言えば良くない学校ですが、これが派閥主義のまかり通るトリニティだったらそうはいかないでしょう。


 さらにたまげるのはこのへんですよね。ヒナが取り締まっている校内の要注意組織からすら、「演奏がんばって!」とエールが送られているところ。マジで割り切りがすごくないですか……。ヒナ自身もジュンコに食券を譲ってあげたりと粋な計らいをしてあげてたりしますし。
 敵とか、味方とかじゃなくて、ただその場その場でのみ「私はなんとしてもこれをやりたい」「あなたが今やっているそれが良くないから止める」の関係でしかなく、なんなら「なんや、よう顔合わせとるアイツの晴れ舞台らしいやんか。ほなウチらも背中押してやらなぁイカン」くらいに好ましく思ってるのがビックリですよね。こういう罪を憎んで人を憎まずというか、オンオフの区別の付け方って大人でもできないことがありますよ。
 ヒナ、「怖がられるのは慣れてるから」みたいなこと言ってるくせして周囲からすんげぇ〜愛されてますよね。たぶん本人が気づいてないだけで両津勘吉くらい慕われてるんじゃないですかね……。


 これは逆に言えばヒナも普段からそう考えているということで、あ~疲れるな、問題児たちが静かにならないかなとは思えども、別にひとりひとりを嫌っているわけではない。心底憎いやつらのなかで心を軋ませながら仕事をしているのではなく、「悪いことはするけどあの子たち性根が悪いわけじゃないのよね」という程度の認識で風紀委員を務めているのだろう……と考えられますね。
 恐れられてはいるけども、悪いことをしなければ助けてくれる、というある種の信頼関係が築かれているのかなとも思えます。


頑張っている人の頑張りをきちんと見ている人がいる

 ゲヘナの「お互いを認めている」という特色はこういうところにも出ている気がしますね。


 何かと美食研究会に拉致されたり、異常な量の給食を食材の発注から切り盛りしたり、作った料理を台無しにされたり、いきなり無茶なケータリングを頼まれたり……とヒナに負けず劣らず苦労人のフウカ。そのフウカに対しても、きちんとヒナが努力を評価している。
 そして当のヒナに対しても、アコたち風紀委員がしっかり働きを見ていて末端に至るまできちんとリスペクトしていたり、セナから心配されていたりとしっかり労りがある。


 やっぱりね、仕事してていちばんキツイのは……身を削って頑張ってることが当たり前だと思われることじゃないですか。
 誰かに人一倍の頑張りをやってもらってることが当たり前になってるところってマジでロクでもない。本人も辛いし何かあったときマジで洒落にならないんですよ。ある日フッと糸が切れたようにその人がいなくなって、重大な業務が回らなくなって大惨事が起きるんですね。遅くまでやってもらって悪いねとか、あんとき気を回してやっといてくれたでしょとか、その一言で全然違うんですよ……。


 そういう意味では、ゲヘナの面々って「ありがてえな」と思ったらその場ですぐお礼を言ってることが多いんスよね。だからキツイはキツイけども、ヒナたち風紀委員や給食部、セナのような縁の下の力持ちに対してきちんと正当な評価やケアが施されていて、クラスメイトに至るまで「いつも頑張ってるの見てるよ」と言ってくれる。良い校風ですよね。



お豊もそう言っている



 まあそのせっかくの良いところが他校にまで破壊をまき散らしている所業でトントンになっているのですが……。こいつらあまりに刹那的な生き方すぎるやろ……ゲヘナの生徒って薩摩隼人なんか……?

 ともかく、所属している組織がどうとか関係なく、モジモジと裏表を抱えて永遠に察してゲームをやったりもせず、その場でズバッと「ありがとう!」と言えるのはゲヘナの良いところですよね。今回のイベントを見ていると一種の武人気質というか、竹を割ったようなハッキリとした物言いがゲヘナの学生に浸透しているのかなと思ったりします。


先生の知らないところでも花は咲く

 さて、こうしてみると、今回のイベントストーリーはいままでのイベントの良いところを踏まえつつ更に発展したものになっていたな…と思います。

 本編のストーリーやグループストーリーでも生徒同士の関係は描かれていますが、とくに今回のイベントではもっと直接的にヒナ自身を動かして世界を見ることで、先生が介在しないところでどんなことが起きているのかを特によく知ることができたなと。つまり多感な思春期を過ごす子どもの世界が描かれていたのではないかと思っています。


 これはかつて過去イベントでキサキが言っていた通り、ふつうは先生からの視点が中心で、「先生ならこう言う」「先生ならこう指導する」「先生からは問題があるように見える」という見え方になっていて、それもそれで青春の先の広い世界を見た我々大人からしかわからない視点なのですが、そもそも子どもたちにとっては口出しされなくても特に問題なく円滑に進んでいるところなんかもあったりするわけです。そういうところはやっぱり大人からは見えない。

 大人からすればあれは良くないこれは良くない、と思っていても、学生が自分たちで自治して「ここまでは良いということにできませんか」とやりたいかもしれない。男しかズボンを履けない校則を変えたいです、とか。車通勤の先生は知らないだけで生徒たちは通学中に足が寒かったりするかもしれません。あるいは、学校に決められた服装と自分の自然体でいられる姿が異なっている子かもしれない。
 子どものほうがよく理解していて気づけたり、子どもに自発的にやらせていたほうがよいこともあります。大人からだけではなく両方の視点が大切ですよね。

 今回で言えば、いままで「先生に精神的に依存しているのかな……ちょっと危うげだな……」という見方も若干されてきたヒナが、いやいや先生の見えていないところではわりとうまく仕事割り振ったり友達と交流しとるで、という両者の見ている世界の違いを見せてきたのが興味深かった。



 「ピアノ」は特に重要なキーワードですよね。
 今回、先生は万魔殿側の視点でものを見ているので、おそらく演奏が終わって話をするまでは「ヒナは万魔殿の無茶振りのせいでピアノを弾かされることになったんだな」と思っています。
 ところがヒナとしては、「むしろ先生の前でいいところを見せられるチャンスでは!?」と若干下心ありで食い気味に引き受けてたりしましたよね。かなり最初のほうで先生とヒナのあいだで認識のズレが生じていたことになります。

 先生からすれば今回のヒナの行動は「やらされている」「しんどそう」「辛そうで心配だ」と見えているのですが、ヒナからすると「今までやらなかったことをやるいい機会」「あの人先生にいいところを見せたい」とかなり楽しみにしていてモチベーション高め。いよっしゃあ!!バリバリ仕事片付けてピアノの練習じゃい!!!とまったく先生の見立てとは逆の精神状態だったりするわけですね。


 ヒナとしては、むしろ「先生が期待してくれてるんだ」「あなたのような立派な人に近づきたい」という解釈で動いていますから、何も言わなくても自発的に成長しようと努力しているのですね。
 子は勝手に育つ、とはよく言ったもので、こっちから見た様子と本人とではまた違う見方をしていて、先生の見ていないところでも生徒はひとりでに大きくなっているかもよ、と示唆しているようにおれは思いました。


 一見やりたい放題なマコトも、イブキの行動を見て気付かされたり少しずつ先のことを考えられるようになっているのかもしれない。先生から見たヒナが折れそうでも、意外とヒナはしたたかだったり自分の人生経験のひとつとして捉えているかもしれない…。
 一方的に先生(プレイヤー)から見た生徒たち、という視点にとどまるのではなく、あくまで子どもたちの世界があって、彼女たちなりの思いや彼女たちのあいだで成り立っているルールがあるんだよ……とさりげなく見せてくれたイベントでしたね。青春の記録ブルーアーカイブを題するゲームの三周年にふさわしい、偉大なイベントだったと思います。





 では先生!そんなヒナさんのがんばりに応えて夜勤ミッションをぜんぶ達成してあげましょう!現在総力戦が開催されてますからそっちも忘れないでくださいね!あと…わあ!モモトークの着信件数が大変なことになってます!ちゃんと読まないと生徒さんが困っちゃいますよ!特別依頼も進めていますか?スランピアの様子も見てあげてくださ




Huh?



 あと先生!グループストーリーがせっかく解放されたのにまだ読んでない部がありますよ!早めに目を通してあげてください!ショップの更新タイミングも忘れないでくださいね!こんなにコインや熟達証書があるのに交換してないのはもったいないです!製造も忘れずにやっておかないとダメですよ!それからウィークリーも進めたほうが良いです!アユムさんのお手伝いを忘れないでくださいね!あ!!!対抗戦チケットが余ってるじゃないですか!アロナ言ってますよね?生徒さん同士が切磋琢磨するのを見守るのも先生の大事な仕





Huh?



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