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アフリカ発のリバース・イノベーションの可能性について考えてみた

この投稿は東アフリカにあるエチオピア・首都アディスアベバの友人宅で書いている。SolveITというエチオピア最大のビジネスプランコンテンストの審査員としてJICAに招聘頂いたためだ。弊社カウンターパートナーであるiCog Labsが米国大使館、JICAとともに運営している。

本noteでは審査員をしていくことで気づいたことをまとめていきたい。テーマはリバース・イノベーション。この言葉をぐぐると色々と出てくるのだが、一言で言えば新興国発のサービス、プロダクトが先進国で受け入れられることである。エチオピア発でその可能性があるんじゃないかと思ったのが筆を取ったきっかけだ。

約70近いピッチを受けた傾向をまとめるとこんな感じ。

70% 1)ToB ToC向けのWebサービス 
10% 2)特定の病症に特化したIoT医療検査機器 
10% 3)農業向けIoT検査機器 
10% 4)IoT 

(1)についてはユーザー視点が著しく欠如しているサービスが多かったが、中には良いものもあった。(1)の良いものについては別稿にて説明したい。

本稿では特に (2)〜(3)についてまとめる。

説明する前に超簡単にエチオピアという国を箇条書きで説明する。

・GDPに占める農業はトップ。農業大国。コーヒーが有名だが、近年ではコーヒーより利益率の高い薔薇に移行している農園が増えている。
・極度な外貨不足。銀行口座に米ドルを置いておくと28日後に自動的に現地通貨・ブルに変えられてしまう・・・・
・アフリカ大陸で2番目、東アフリカで最大の人口1億700万人を抱えている。平均年齢は17歳。
・エチオピアで唯一植民地支配されておらず、良い意味でプライドが高い。アフリカの京都である。
・人類の始祖はエチオピア("ルーシー"をぐぐってほしい)ということもあり、独自のエチオピア聖教、アムハラ語といった言語があり文化意識が高い。

最初のこの写真を見てほしい。

これは点滴が正しく打たれないという課題を解決する機器。エチオピアでは点滴が一定の時間幅で適正量が落ちないことで患者に身体的なダメージを与えているケースが多い(ゆっくり落とさないといけないところを早く落としているかと推測される)。この機器を通過させることによって適正に点滴を打つことができるようになるとのこと。末端価格は米国製の同様のものよりも3分の1以下とのことだった。

この説明を聞いたときに、「輸入すればいくらでも安いのはあるのではないか?」と感じたが、エチオピアの経済状況を考えればそう簡単にはいかないと気づいた。輸入を行う際の基準通貨は全て米ドルベース。つまり、輸入を行う度に米ドルがエチオピアから流出していくことになる。そのためエチオピア政府は会社毎に輸入枠を定め、外貨が流出しないように規制しているのだ。

結果、”自由に輸入できないので必要なものは自国で作らなければならない"という発想が生まれる。エチオピアとしても製造業を起こしたいという考えはあるようで原材料であれば輸入枠は大きくあるとのことで逆に推奨されているようだ。

近年ではセンサー類の機能が著しく進化し、安くなっているので市場から評価さえもらえれば、エチオピア発のプロダクトは受け入れられる可能性は大いにある。そう思わされた背景として、医療機器系IoTプロダクトで出展していた起業家たちの優秀さを感じたためだ。

・女性
・医療、薬学修士レベルの学生
・現地アムハラ語ではなく英語ピッチ、内容は非常に洗練。
・課題感が超明確。シンプルに1機能をワンプロダクトにまとめきっていた。日本企業からすると「え、そこの部分だけ!?をプロダクトアウトしちゃうの?」と感じるかと思う。

起業家として自分の経験を通じてマーケティングをしているので、切り取り方は現地を知る上で日系企業は大いに学ぶべきだ。なので、日系企業はこういった女性起業家たちと連携し、プロダクトの洗練のさせかたのところで技術協力を行い、ちゃんと支払ってくれること期待して後からライセンスフィーをもらうことが一番の良い進出手段ではないかとも感じた。

アフリカだから支払ってくれないんじゃないかと思う人も多いかと思うが、私自身は彼女たちの熱量から、信頼に足る人物だと確信している。

上記の写真は土壌内の湿度といった土壌管理を行うためのIoTセンサーである。上のボックスで測るための機器が入っている。写真で見ると、しょぼいのだが、製造コストは先進国のそのものの比較すると10分の1ぐらいであった。しょぼくてもちゃんと測定できればいいという発想だ。

個人的に一番興奮したプロダクトがこれだ。なんと3Dプリンターを自作しているのである。価格も末端価格で8万円程度だった(原価レベルではもっと低いし、量産すればさらに価格は下がりそう)。あくまでもモックなので、みかけはダサいが、しっかりと3Dプリンティングしていたので驚愕した。入力側のソフトウェアも自らでOpen Licenseのものを利用し作成したとのこと。CEOはソフトウェアとハードウェアを自ら組み合わせられる優秀な技術者であることを見事に体現していた。

エチオピアが面白いと思う理由は次の通りだ。
・外貨不足であることから自国で生産しなければいけないという課題感からイノベーションが生まれやすい。
・1億を超える人口ボリュームがあることから優秀な層の厚みが他国に比べて厚い。
・歴史的背景から自国、自分に対しての自己肯定感が強く、日本人とも協調しやすい。
・iCog LabsというエチオピアトップのIT企業が同国を牽引しており、同国のトップ人材を集め続けることができ、人材プールが非常に充実している。先進国とも十分に渡りあるける人材育成能力が高い。

ということで最後はポジショントークになったが、弊社としてもカウンターのパートナーのiCog Labsの強みがよく分かる出張となり、本当に来てよかった。

まだまだ発注金額は少ないが、弊社発注だけでiCog Labs内に5名の新規雇用が生まれたとのこと。現在弊社内でいくつか大型プロジェクトを進めているが、エチオピア側のエンジニアの成長力が著しく本当に驚いている。

『仕事だけが人生を変えられる』

この現場を共にできているのが本当に嬉しいし、楽しい。これからもひたすら前に進んでいきたい。仕事を通じて僕自身も人生を切り開いてきたのでその価値、意味がよく分かる。日本からもっと面白くてエキサイティングな仕事をエチオピアに持っていきたいと改めて使命を感じた次第である。

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