「パンドラの匣」太宰治著を読んで
登場人物の渾名がよい。
雲雀、マア坊、竹さん、つくし、越後獅子、固パン、かっぽれ。
お決まりのやり取りが楽しい。
「ひばり。」
「なんだい。」
「やっとるか。」
「やっとるぞ。」
「がんばれよ。」
「ようし来た。」
それは結核療養所という過酷な空間を、
なんだか不思議に明るく彩る。
私がなによりこの小説で重要あると感じたのは、文章がすべて「手紙」であるというところだ。
手紙とはすなわち「書き手が受け手に伝えたいこと」であり、それが事実であるか真実であるか、読み手には決してわからない。
面白おかしくユーモラスに「道場」での日々を綴る雲雀。
死を横目に、必死に前を向いて生きている姿に胸が打たれる。
囀る雲雀。流れる清水。透明に、ただ爽快に生きてあれ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?