ゲスい男 要潤演(仮) / 「鳩の襲撃法」佐藤正午著 を読んで

佐藤正午さんという人は、プラモデルを組み立てるような文章を書く人だ。全体の設計図をしっかり描いてから、細かい部品を一つ一つ丁寧に作り、それらを組み立てて全体を完成させる。

面白い。構成も凝っているし、台詞も描写も隙がない。

そして何よりこの人は捻くれている。捻くれ者の私は捻くれ者が大好きだ。

主人公は津田さんである。「愛とスープは冷めるものだ」の。「困った時頼りになるのはやっぱり女だ」の。

佐藤さんの以前の作品「5」にも登場するこの彼は、バツ2で40代の小説家で、恋と性欲の区別がつかない(と自覚している)、今時に言うとにかくゲスい男だ。恋人も浮気相手も出会い系のメル友もいるが、友達はいない。ゲスい。
しかし本人はおそらく無自覚に、その時一番信頼している人の口癖が移ってしまう、なんとも素直な一面もある。

ここら辺もまた佐藤さんは凄く上手い。

うっかり津田さんを好きになってしまいそうになる。と言うかもう好きだ。物語の最後の方では、もう津田さんに会えなくなるのが淋しくて、ページを捲る手が鈍ってしまった。

思うのだが、ゲスい男の恋というのは、全体を見渡すと確かにゲスいが、その一瞬一瞬は無償の愛なのではないか。一途な人は、その人しか愛さない分相手にも同じ量の愛を求めるが、ゲスな男は、だって好きなんだもんしょうがないじゃんと一方的に、しかし見返りを求めない愛を与えてくれるのではないか。

そんなゲスい津田さんを是非是非要潤に演じてもらいたい。眼鏡の要潤に。

もしくは佐藤さんにまた津田さんの物語を書いていただきたい。

(とにかく津田さんに会いたい。)

(重症である自覚はある。)

#コラム #本 #佐藤正午 #コンテンツ会議

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