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180611 梅雨、パラメトリック、耳

梅雨。ずいぶん強い雨と風のなか、新宿でひとつ重要なミッションを終え、東大駒場IIキャンパスへ。目当ては、「Parametric Move 動きをうごかす展」

山中俊治さん(Suica改札機などをデザインしたデザイナー)が率いる、東大の研究室による展覧会。

今回の目玉のひとつが、藤堂高行さんによる「SEER(Simulative Emotional Expression Robot)」。

対象を視線で追うことができるヒューマノイドロボットで、目の前に立つと、なんだか見つめられているような不思議な感覚に陥る(写真よりも動画の方が分かりやすいです)。
等身大サイズなのかと思っていたのだけれど、それよりはずいぶん小さく、どんな理由があるのか気になった。

そしてもうひとつ、とても興味を引かれたのが「E.E.E(Emotional Expression Ear)」。

空気の流出入によって、動物の耳のように立ったりたれたりする不思議な物体。会場の中で唯ー、モーター音がしない&手作り感のある設計で、動きは控えめではあるもののかなり目立っていた。

四方から眺めまわしていると、制作者のGuo Xinyuさんに声をかけていただいた。「第一印象で、これはなにに見えましたか?」と聞かれて、考え込んでしまった。解説文を読むまでは、あまり耳のようには見えていなかったので。
第一印象をなんとか言語化しようとあがいた結果、「はじめは、お辞儀をしている人のように思えました」と答える。これまでに何人かにそう言われたことがあったのだろうか、彼は静かに頷いてくれた。

その後、いろいろ気になったことがあったので質問をさせていただいた。
空気で動きを作ろうと思ったのは、動物的な質感を作り出したかったため(モーター音が嫌だったそう)。布と空気の流入ポケットははんだとミシンで接合しているらしく、全て手作業。「布の種類や色はいろいろ試されたんですか?」と聞くと、「はじめは白とか青とか人工的な質感のものでも試したけれどしっくりこなかった」とのこと。

将来的には、スマートスピーカーなどへの応用をめざしていると語ってくれた。たとえばいまのアレクサは光で声に応答しているけれど、それを動物の耳のようなものに置き換えることができたら、もっと人が親近感を感じることのできるモノへと進化できるのではないか、というのがモチベーションなんだそう。
「まだまだ改善点はたくさんあるんですけれど」と笑いつつも、彼の目は真剣だった。

「人間の耳は退化してしまったけれど、感情や心のうごきを表現する動物の耳には可能性があるのではないか」という彼のことばには、とても好奇心をかきたてられた。
実際に試行錯誤して制作した方のお話は、やっぱりとても面白い。

そんなことを話していると、さっきまでモノにしか見えていなかったものが、だんだんと耳のように見えてくる。会場を出るときには、まるで生きている動物の耳のようにしか見えなくなっていた。
人間の認識ってふしぎ。

#日記 #エッセイ #デザイン #動きをうごかす展 #東大 #耳

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