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雲ひとつない夕空。

昨日も同じような空だった。光を映す雲がなくて、太陽の残照がどこまで届いているかはっきりとわかる空。暗くなる前のうすあおい空と、落ちた陽の光とが溶け合うあわいの、あの白いような金色のような色。いや、そう思ったのは今日で、昨日は、そう、落ちた陽の光が丸く光っている、その広さと、それがうすあおの空に広がってほんの少しだけ紫がかっているのが見えた、そのはかない色あい。神社の木々は真っ黒く影絵のようで、コウモリが窓の前を横切っていった(たぶん、コウモリだと思う、変な角度で方向転換しながら飛ぶのだ)。金星が光って、もう一つ星が見えた。

昨日と同じようだけれど、昨日とは少しずつ違っていた。橙色は昨日よりも全体的に南にのびていた。南に見える山々の稜線がほとんど橙に縁取られていた。北の山ははやくに暗くなっていった。昨日みたいな、うすいうすい紫は見えなくて、たぶん赤みが昨日よりもないのだろう、白いような金色のような、うすあおとのあわいの色が印象的だった。今日も星が二つ。コウモリは二匹飛んでいた。南側の橙を見るのに身を乗り出すと、ライトをつけた車が行き交っていた。車の音が聞こえない程度には離れてはいるのだけれど、そのうえ窓は閉まっている、でもとてもへんなかんじがした。夕空があまりにも静かだったから、音などないような気がしていたから、車が走っていることはまったく頭にはなかったことだったから。わたしはただ夕空とだけ相対していた。


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