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コミュニティヘルスアセスメント - Program Planning 海外MPH 授業の実際

米国東海岸の公衆衛生大学院にリモート留学しているAshです

公衆衛生学と専攻分野


大学院では社会行動科学を専攻しています。

公衆衛生学とは、社会の人々を健康を促進または損ねてしまう原因を分析し介入することで病気の負担を軽減し、健康水準の格差を是正しながら向上させるための学問です。

私の所属する大学院の社会行動科学コースでは公衆衛生学の基礎学問である疫学や統計学をさらっと学ぶ一方で、職業、教育歴、収入、人との関係性など健康の社会的決定要因と呼ばれるものについて分析、研究する社会疫学と、地域のコミュニティに対して実践的なアプローチをデザインするコミュニティ介入手法を深く学ぶというのが主なカリキュラム構成です。2020年の秋学期は必修の基礎コースばかりでしたが、春学期は理論を扱ったりなどかなり深い内容の学びとなり、より充実しています。

コース紹介:コミュニティアセスメント SBS203


本日はコミュニティを対象にしたヘルスアセスメントのコースに関するご紹介をしたいと思います。

1月から後半からProgram Planning(SBS203)、Program Implementation(SBS204)という2つのコースを受講しており、コミュニティヘルスワーカーとしていかにして実践活動計画を立てていくかということを学んでいます。今日はその前半であるProgram Planningについてご紹介いたします。

Program Planningは、州・県や市町村を単位としてマクロレベルで健康指標を分析し、対象自治体全体に起こっている問題を把握し、介入ポイントを定めるという方法論に関するコースです。グループワークでプロジェクトを進めていくわけですが、米国の都市や地域を1つ選択して調べる実践的な作業を行います。過去にへき地の臨床現場で行ってきた地域把握、地域診断に近いものを感じ、なかなか楽しんで取り組めました。

指定テキストは以下になります。

プロジェクトの詳細

以下、専門用語も含みますが、取り扱った項目の列挙になります。この授業においてコミュニティは地理的な区画に基づいて決められた人口単位ということになります。他にも職業、性別、趣味、Sexual orientationなどコミュニティの定義の仕方がありますが、今回は地理的なものに限定して扱っています。

1. コミュニティに関する記述 Description of the community of focus and at least one "priority population"
・コミュニティの同定 Identify the community
・サイズの基準 Criteria met (Larger cities and urban areas)
・重要な人口動態に関する情報 Key demographic information
・注目する集団とそれを選択した理由 Priority Population & reason for selecting this population

2. アセスメントを行う組織の理念 Mission statement of the organization conducting assessment
・組織・団体名
・ミッション・ステートメント

3. コミュニティパートナーに関する記述とコミュニティエンゲージメントアプローチ方法 Description of community partners and community engagement approach
・コミュニティパートナーをリストし、それぞれの役割を記述
・コミュニティエンゲージメントアプローチを記載
 コミュニティアドバイザリーボードの設立、Photovoiceなど

4. 計画モデルに関する記載 Description of a planning model that guide assessment
・数あるモデル(別に記述します)のなかから、SMARTモデルを選択

5. 重要な健康問題を5つ列挙
・健康問題を上げて、上げた理由をデータから説明する

Google検索でたどりつける2次資料を使って、情報の整理を行いさらに問題を深堀りするための1次情報を得るための計画を立てるという訓練になりました。このコースはNIHのグラントを取得するためのWriting Training Courseとしてもデザインされており、コミュニティ介入計画の研究計画書を作成するという点でも大変勉強になりました。

しかし、米国はほんとにデータに富んだ環境だなと感じます。同じような調査を日本で実施しても教育歴、人種などの情報を得るのはおそらく難しいでしょう。社会として収入格差や人種といったsocial constructにどれだけ意識しているかというあり方のち外のようなものを感じました。

このコースの学びと似たような内容の書物を上げるとすれば、Community as partnersが該当するでしょうか。地域看護学、またはプライマリ・ケアに関わる医師なら馴染みがあるかもしれません。


ちなみに私のグループメンバーは台湾やベドナムからリモート留学をしている学生であったのですが、皆非常に優しく協力的で非常に取り組みやすい環境でした。我々はPriority Populationを青少年に設定し、肥満や十代妊娠など5つの健康問題を上げました。

以下にして有効な介入方法を立てていくかということに関して、理論を中心にした学びが多いのですが、こういった対象がみえる形の実践型学習のほうが向いているなと感じることが多いです。

こういった学びをいかにして目に見える成果にどうつなげていくかは、こういった専門職大学院における課題です。

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