72時間ホンネテレビ ー テレビとネットを変えた伝説的番組


インターネットが変わった日

インターネットやテレビだけでなく、日本のエンタメの歴史上、伝説として刻まれる番組が生まれた。ー 72時間ホンネテレビである。

90年代から00年代のテレビを代表するトップアイドルグループSMAPのメンバーで、2017年の9月にジャニーズ事務所を退所した香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎(敬称略・以下、慎吾、剛、吾郎)ら3人が、サイバーエージェント社が運営するインターネットテレビ・AbemaTVにて、2017年11月2日の21時から11月5日の同時刻まで、72時間ぶっ続けで生放送を行うという前代未聞の番組。

「今日はインターネットが変わる日」

番組の冒頭で登場したサイバーエージェントの藤田社長はそう語った上で、3人のトップアイドルたちに世界的なSNSで「バズる」ことを目標として課した。そこから72時間、3人は大変な量の企画を、たくさんのゲストとたくさんのファンの応援を味方につけ、ものすごいパワーでやりきったのだ。

結果、累計視聴数7,200万以上、Twitterでの番組関連ワードトレンド入りが107個以上(世界一位を含む)、関連ワード総ツイート数 508万以上という、世界トップクラスのバズを巻き起こしたのである。

この規模のバズを巻き起こせるのは、日本のテレビ番組としてもトップクラスのものだけと考えられる。(放送時間の違いや、関連ワードの範囲から単純比較はできないが、参考までに2016年の紅白歌合戦にて、出演したアーティストに関するツイート数合計が52.8万(白組: 33.56万, 紅組: 19.23万)である。)

トップクラスのテレビ番組といえる紅白と同等か、それ以上のバズをネットテレビの番組が生み出した。これはついに、ネットが、テレビと並んで「マスメディア」になった転換点だといえるかもしれない。

業界の悲願ー「通信と放送の融合」

ネットがマスメディアとなること、これは藤田社長、そしてネット業界全体としての悲願だったといえるのではないか。ライブドアがニッポン放送買収をしかけ、楽天がTBSと提携交渉をした2005年から、業界で語られてきた「通信と放送の融合」。先陣をきりながらも、うまくいかなかった2社を省みて、藤田社長は静かにじっくりと駒を進めつつ、ずっと機会を伺っていた。そして様々なピースが重なりはじめていた。

・2004年に開始したアメーバブログを軸に着実につくりあげていった芸能界とのコネクション。
2011年に全社的なスマホシフトを行い、蓄えていったスマホサービスやアプリのマーケティング力・開発力
・好調な広告事業とCygames社によって生み出される大きなキャッシュ。
・YouTubeやライブ動画、SNSのインライン動画等、スマホ動画の一般化

これらを踏まえた上で、2016年に動画元年と打ち出し、テレビ朝日社と共同出資の形でつくられたのが「AbemaTV」だった。それでも黒船NetflixやAmazonプライムなどが日本でも勢力を伸ばす中、決定打となるコンテンツが欠けていた。

そんな中、日本の芸能界・テレビ界を揺るがす大事件がおこる。SMAP解散騒動である。ニュースを知った藤田社長はすぐにコンタクトをとり、今回の番組が生まれることになった。

本気で勝ちにいった企画と3人の底力

今回の番組を見ていて、本当に衝撃を受けたのは、絶対に世界的にバズらせて数字として結果を出す、という気迫だった。絶対に成功させてやるという藤田社長の本気を垣間見た。その気迫のあらわれが、72時間に詰め込みきったたくさんの企画。

「72」という3人のオリジナル曲でファンを歓喜させた後、藤田社長の別荘ではじまった72万円山分け企画。クイズ、カラオケ、ゴルフと爆笑問題や矢口真里をはじめとするゲストたちと深夜まですすめた後、YouTuber剛が、ヒカキン、はじめしゃちょーが所属するUUUMとコラボしたり。三谷幸喜とバズる動画をつくったり、山崎賢人、山田孝之と新宿や原宿に出没し、慎吾がインスタグラムを更新しまくったり、DDTプロレスで剛を登場させたり、海老蔵とキャラ弁つくったり、マチャアキと解散後の焼肉会の裏話について話したり、亀田三兄弟と対戦させたり。

11/4は番組成功の決定打となった森くんの試合を観に行ったり、最終日は吾郎が表参道でナンパをした後そのままネタの結婚式を行ったり、慎吾が来日中のドナルド・トランプの仮装をしたり。そして最後に72曲の生歌ライブを行ったり・・とにかくものすごい数の企画量で、そしてどれもバズりそうなものばかり。ただ、普通の体力では絶対にやり遂げきれない量なのは間違いなかった。しかもバズるためとはいえ、ジャニーズ時代では考えられないような企画(ナンパやネタとはいえ結婚式をあげたり、プロレスに参加したり等)も多々ある。

それでも嫌な顔や疲れた顔もぜんぜん見せず、しっかりと視聴者を笑わせながら、ひとつひとつの企画をやりとげていく。そして森くんとの再会で涙させ、最後の生歌ライブでは、SMAP時代の曲は一つも歌えないというハンデをものともせず、全世代にささる最高のセットリストの72曲を力いっぱい歌い、視聴者みんなを感動させた。

慎吾、剛、吾郎は正真正銘のプロで、トップアイドルだったのだ。これらの企画をすべて成し遂げ、日本中に番組をバズらせ、視聴者にしっかりと感動を与えることができたのは間違いなくこの3人だったからなのだ。決してうまいわけでもないのに、彼ら3人が声を揃えて歌い、踊った瞬間、スマホを見つめていた視聴者は、笑わせたり、泣かされたりして、とことん感動してしまうのだ。それが何より彼らが正真正銘のエンターテイナーであることの証明だった。

そして同時に彼らだけでもこの企画は成功できなかった。ジャニーズ事務所との関係性もある中でも、彼らと共演しようと一肌脱いだゲストたち、様々な調整や進行、技術開発を行っていったAbemaTVのスタッフ(サイバーエージェントとテレビ朝日、そして外部の会社、みんなが力を合わせたのだと思う)。そして業界のしがらみを踏まえた上で、この番組をやると決めた藤田社長と飯島マネージャーの存在。本当に本当に、全員がやりきっていたから成功したのだと思う。

ちなみに以下は、自分で独自に作成した時間毎の番組累計視聴数の推移グラフである。確認できた範囲で、視聴者数の伸びが大きかった箇所の企画も記載している。様々な企画を打つことで、伸びの角度をどんどん高めていったことがわかる。
(基本目視やTwitterでの番組視聴者数に関するつぶやきを参考にプロットしており、ヌケモレがあったところはExcelのデータ補完機能を使っているのでズレもあると思うが概ねの数値はずれてないかと思う。)

まとめ

この一つのネット動画の大ヒットと数値実績は単に元人気グループにいたアイドルがネット番組に出演したから生まれたのでは、決して無い。

テレビではやらなかったことさえも前向きに、果敢に取り組み、できないことのハンデを逆にチャンスに変え、新しい場所で自分たちの能力をフル発揮した、慎吾、剛、吾郎の尋常じゃない努力。

業界のしがらみを一気に断ち切り、勝負にでた藤田社長と、飯島マネージャーの決断。そしてこの番組を成功に導いたゲストやたくさんのスタッフの莫大な努力。そして番組のおもしろさを伝えるために、SNSでどんどん感動をシェアしていったファンのひとたち。

テレビとネットの人たちが徹底的に協力してつくりあげたからこそ、生まれた大ヒットなんだと自分は思う。そしてこれこそが、正真正銘の「通信と放送の融合」なんじゃないかと。

本当に素晴らしいネット動画番組だったと思いどうしても一つの記事としてまとめておこうと思いました。ネット業界で働き始めて、12年ぐらいたったひとりの人間として、とても感動したコンテンツでした。

関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。そして大ヒット本当におめでとうございます。ぜひこれを機に、3人のレギュラー番組をAbemaTVでやってもらえたら嬉しいです^^

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ninoP🎀

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