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ドラマ日記『その女、ジルバ』(第9話)&『ここは今から倫理です。』(第7話)

人生を諦めていた負け組OLの笛吹新(池脇千鶴さん)が、ひょんなことからバーで働き始め、パワフルな高齢ホステスたちに感化され変わっていく、人生賛歌ドラマ『その女、ジルバ』第9話。くじらママ(草笛光子さん)の壮絶な過去が語られました。

くじらママ(草笛光子さん)がダウンし、エリー(中田喜子さん)たちも相次いで体調を崩す大ピンチに、颯爽と救世主が現れる!一方、新以外、誰も見舞いにやってこないことに少しすねるくじらママは、部屋に顔を出した幸吉にポツリと告げる「思い出すわね…ジルバの最期」。

店の危機を救ったのはチーママ(中尾ミエさん)。くじらママが乗っ取りを心配するほど店を賑やかにしたのは、“天岩戸作戦”というオチ。一方で、過去のトラウマにうなされるくじらママは、新に“花売り娘”を強要された壮絶な過去を語り…。

敢えて再現部分は最少にして、舞台風の一人芝居にした演出が秀逸。そして、87歳の草笛さんの圧巻の演技。誰にも話したことがなったというくじらママを「ママは何も悪くない」と抱きしめる新の存在という救い。

3月11日を前にしたこのタイミングであればこそ、震災後の性暴力や貧困からの売春という現実が、戦後のくじらママの体験が重なり。次週はいよいよ最終回。例の感染症に、彼女たちはどう向き合うのか。正座して待ちます。

続いて、『ここは今から倫理です。』第7話。雨瀬シオリさんの異色の学園コミックを実写ドラマ化。高校生たちの答えの出ない悩みに寄り添う、倫理教師・高柳(山田裕貴さん)の姿を描いたもので、今回は最終回に向けての2話連続の前編。

体育祭を前に加熱するクラス全員参加のグループチャット。高柳の授業で個人主義という言葉を覚えたいち子(茅島みずきさん)は、独断でグループチャットから抜けて、クラスメイトからいじめを受けることに…。高柳はその問題について倫理の授業で対話することを提案する。

個人主義と集団主義(全体主義)、資本主義と社会主義など、いち子(茅島みずきさん)に言わせれば「主義が多過ぎる!」話ながら、よくまとまっていました。

クラスの団結(チャット)に馴染めない、いち子と香緒里(中田青渚さん)という対比がわかりやすい。いち子はバカだからこその突破力、香緒里は下手に頭が良いだけに日和ってしまう。クラスの仲良しごっこを、バカバカしいと感じながらも、孤立を恐れている人間は多いのでしょう。

ドラマの最後には「常識は、既に或る信仰である」という三木清の言葉。主義主張には流行り廃りがあり、最先端と思っていた思想や、新常識とされた考え方も、また変わりゆく。マルクス主義も、人権主義も、フェミニズムも、ただのイデオロギーであり、不完全な仮説に過ぎない。

それらは、現状を把握する新たな切り口であり、難題を突破し、多くの人たちがよりよく生きるための手段、ベターな選択肢にはなり得るけれど、往々にして信仰となり、他者への抑圧となることも、そんな感じでしょうか。

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