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『エルピス-希望、あるいは災い―』(最終回)

エースの座から転落した女子アナ・浅川恵那(長澤まさみさん)と、彼女に共鳴した仲間たちが、連続殺人で死刑が確定した男・松本良夫(片岡正二郎さん)の冤罪事件を追う中で、自分の価値を取り戻していく社会派エンターテイメント『エルピス-希望、あるいは災い―』の最終回。

「ニュース8」のスタジオに殴り込んできた村井(岡部たかしさん)のただならぬ様子を見た恵那は、その真意を知りたいと、拓朗(眞栄田郷敦さん)のもとを訪ねる。

亨(迫田孝也さん)の死に責任を感じると共に、手段を択ばない権力の怖さを実感した拓朗は、手を引くというのですが、亨の残した言葉に「信じられる人=希望」を見出した恵那は、「ニュース8」で大門副総理(山路和弘さん)の「レイプ事件もみ消し」を取り上げる強行突破に出ることに。

しかし、そこに現れたのが、今は大門の側近となった斎藤(鈴木亮平さん)。たしかに大門は失脚するけれど、国家的な危機をもたらす、と一見“正論“な言葉で説得にかかるのですが、恵那は冤罪事件の真犯人逮捕を止めないことを取引き条件に交渉。斉藤も大門の関与を伏せた上での条件付きで了承し、「明日まで待つと、君は事故か病気で出れなくなるよ」とくぎを刺し。

結果、松本は釈放され、事件のきっかけとなったさくら(三浦透子さん)とカレーライス&ショートケーキを二人で食べ。拒食気味だった恵那は拓朗と牛丼を口一杯に頬張る、平穏で幸せな時間。村井と拓朗も映像会社を立ち上げ、これまでのキャリアを活かせる仕事が出来て良かった。

とはいえ「大門の強姦事件もみ消し」はまた明らかにされず。勧善懲悪的なスッキリ展開とはならないグレー決着。今期ドラマ『ファーストペンギン』にも似て。『エルピス』が渡辺あやさん、『ファーストペンギン』が森下佳子さんと、奇しくも両方とも女性脚本家作品。同じ問題意識を感じます。

渡辺あやさんの前作ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』にも似た終わり方。大学当局の隠蔽事件を、理事たちの反対を押し切って総長(松重豊さん)が発表。しかし、その後の信頼回復と大学再建のため、隠蔽の首謀者の理事(國村隼さん)を起用し続けるという結末でした。

善悪二元論に陥ることなく、全てを疑い、自らにも問い続ける姿勢。良い人や悪い人といった一面的なキャラではなく、多面的に人間を描く。渡辺さんはそんな作風だけに、いつも見応えがあり、信頼ができます。信じられる人。信頼できる脚本家。

とはいえ「大門の強姦事件もみ消し」だけは許せないという視聴者へのエクスキューズシーンもあり。「首都新聞」記者の佐々岡(池津祥子さん)が、大門を厳しく追及する場面。バトンは恵那たちから佐々岡へ渡され、いずれ必ず…。エルピスの“希望”は佐々岡だったというわけです。実にいいキャラ。信じられる人。信頼できる記者。そんな人も現実に僅かながらいます。

とりあえず、牛丼大盛、つゆダクダクで食べたくなりました(笑)。『silent』と並んで、フジ系ドラマが2つの傑作を生んだ今期。大河ドラマも最後まで最高でしたし、朝ドラも(辛い展開ながら)いい感じに年越しと。ドラマが充実していると日々楽しいですね。


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