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カーくんとか、ポコ太といつ別れを告げるんですか?

KindleUltimateの大半はエロ漫画である。

大半というと言い過ぎだけど、体感としては所謂普通のコミックよりエロマンガが圧倒的に多い。男性向け女性向け共に尋常ではない数の作品がある。

女性向けのエロマンガ。レディスコミックと呼ばれるそれとは厳密に対応しないのかもしれないが、KindleUltimateがなければ僕は読まなかっただろう作品群だ。

 ところで、何作もそうしたレディスコミックを読んでいてはたと気づいた。もっと幼い少女向けの作品や、少女を相手にした物語にあって、レディコミに見当らないものがあった。

妖精である。

妖精、という言い方は適切ではないかもしれない。強いて言えば

肩の辺りをふよふよしながら浮かんでいる純心無垢な生命体で、よく笑いよく泣きよく少女をサポート……し、毎日漫画を読んで暮らしていたり変身するときになんかしてくれたり、イザって時に守ってくれたりするあれ。

である。

こんなんとか

こんなんとか」

こんなんとか

こんなんとかだ。いったいいつ始まったのか定かではないが、少女的世界の中では、少女のそばにはイケメンの照れ屋さんで重度のトラウマを抱えた少年とかがいて、少女は少年のメンヘラリテイをキュアリティして大人になっていくのである。

そしておおむね、大人になった少女はかわいいぬいぐるみ的な妖精たちと別れを告げるのだ。

そんなのってないよ! 

と僕は思うのである。

少女も恋人ができたぐらいでは、この晩婚社会、「大人」になるのは難しいのではないだろうか。もっと妖精さんを大事にしてほしい。ふかふかそうな生き物をぎゅっぎゅしておいてほしい。

妖精さんとお別れすることは彼女たちの通過儀礼であり、大人の女とか、高校生とかTLの世界に「肩に飛び乗ってくれるかわいい妖精」は存在しなくなってしまうのである。

なんでなのー。かわいいのにー。

レディスコミックに登場する男は、一見冴えないがその実見どころがある男であったり、社長で御曹司で野獣な高校生だったり、まあいろいろいる。女子もまた、そのいろいろな男性と話をして駆け引きして恋愛に勤しむので大変忙しい。家に帰れば一人っきりの生活を悲しそうに謳歌し、嫌いなはずのアイツのことばっかり気になって……夜も……。

……。

こんな生活をしている女性にとって「かわいい妖精」なんてものは存在しないほうが良いのかも知れないし、中途半端にゴクつぶしのぬいぐるみなんて飼育していたら本当におひとりさまになってしまうのかもしれない。

いずれにせよ、レディスコミックの世界ではかわいい妖精はほとんど見られない。

ここで疑問が湧き上がる。

女性たちはいつ、かわいい妖精とかカーくんとかポコ太と別れを告げるのだろう。

もちろん、別れを告げられなかった女もいる。

東京タラレバ娘の鎌田倫子のそばにいる「タラちゃん」と「レバちゃん」だ。

タラちゃんもレバちゃんも33歳で若い子に押されている倫子の脳内にしかいない。自分を守ってくれるマスコットとかではない。守ってもらえる王子様がいない時には、孤独を自分だけで癒やすしかない。しかしタラもレバも倫子に「33過ぎの未婚女性」という現実を突きつけることしかしていない。

と、ここまで書いていて思い出したのだが、ある時、ぬいぐるみが部屋にたくさんあるという女性と話をした。そのとき「ぬいぐるみが話してくれたらいいと思いませんか?」というサイコパスな質問をしてしまった。彼女は「TED」というゴミクソ下品なクマのぬいぐるみがサイコパスなことばかりする映画を例に上げて。

「たぶん、うちの子ももうああなってる。喋りだしたら、ほんと、ゴミみたいな話しかしてくれないだろうから……アハハ」

と言ってくれた。いったい家の中でどんな話をぬいぐるみにしているというのだ。

僕は沈黙で答えた。TEDはでも楽しそうにしてるじゃないか。彼女を笑うことは許されない。たぶん笑って流してほしかったんだと思うが、それは出来ない相談だ。

うるせー!! フラッシュ・ゴードン見ろ!


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