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タピオ・カーン INTO SWEATIA【侵略】


前回

強力粉 100g
薄力粉 100g
ベーキングパウダー 1.5大匙
卵 1個
ミルク 70g
砂糖 30g
塩 0.5小匙
植物油 40g

 材料をボール入れ、全体が滑らかにるまで混ぜる。バターを塗ったワッフルメーカーに生地を入れて、蓋を閉める。メーカーの横からワッフル生地が溢れる。

 焼き上げるまで少々時間が要る。男はその間にフライヤーの様子を確認しにいった。いい具合に揚げた鶏もも肉が泡立てながら油の表面に浮かんでいる。トングで挟み取って、キッチンペーパーを敷いたプレイトに移して、しばらく冷ます。

 ワッフルメーカーから香ばしい匂いが漂ってきた。PiPiと音が鳴り、メーカーについたLEDライトがオレンジから緑色になった。蓋を開いた瞬間、この世の善き物をすべて凝縮した甘い芳香が昇り、皺を刻んだ男の顔を燻った。男もまた貪欲に鼻孔を広げて、芳香を肺いっぱいに吸い込んだ。

 闇色の肌、灰色の口髭、寂しい頭頂部の初老の男。彼の名は瓦夫郎、ワッフルの瓦夫郎。このオーリアン村でシェリフを勤めている。

 匂いを十分堪能した瓦夫郎はナイフでワッフルをメーカーから剥がして、溝を沿って丸いワッフルを1/4の四枚に切り分ける。

 皿にワッフルを乗せ、傍にフライドチキンを、更に昨晩の夕食に残った芽キャベツのサラダも載せる。野菜は大事。最後はワッフルにメイプルシロップをかけて……アフリカン・アメリカンのソウルフード、ワッフル&チキンの完成だ。

 スイーツと主食を一気に味わえる、理に適った料理。土曜日の朝食に作って、食べるのは、瓦夫郎にとってのリチュア。祖父、父親もそうしてきた。そして実際に美味いのでやめる理由が見つからない。フォークでフライドチキンの皮を破り、肉汁が溢れ出る。それをシロップが染み込んだワッフルに乗せて、一口サイズに切る。肉汁がシロップと交わり……。

「ギャアアアアアアーー!!!」

 突如の悲鳴!「Holy shit……!」食器を放り捨て、家を出る一歩前にドアが開けられた。玄関に怯えきった表情の老女が立っている。彼女の名はラヴァン、ラヴァケーキのラヴァン。

「ああっ!シェリフ!オウマイショコラダッ!オウマイショコラダ!」
「ラヴァンばあさん、一体何が起きている!」
「すっ、そ、それはっ」

 言い終わる前に、ラヴァンの眉間に矢先が飛び出た。その矢はまるで馬鹿でかいストローような形だった。ストローの穴から液状のチョコレートが勢いよく湧きでた。

「ラヴァンばあさん!」瓦夫郎はラヴァンの遺体を受けとめて、床に寝かせた。「クソっ、どうなってやがる!」

 銃を抜き、室外へ出た、瓦夫郎は見た。

「ぐっふ」『タピオ、カァーン!』

 頭が撃ち抜かれ、矢の穴からホイップクリームが飛び出るポストンパイのヤンケ。

「げっへええ!」『カーンハハハッ!』

 背後から脇腹引き裂かれ、チョコレート色の内臓をまき散らすブラウニーのブラザー。

『タピーンヒヒヒヒーン!』

 月餅のエンショを蹴り倒し、ダメ押しに何度も蹄を叩きつける漆黒の馬。そしてその馬に乗った、黒ひげを蓄えて、モンゴル鎧をまとった男。

「やめろォ!」

 銃を構えた瓦夫郎の視界が砂色に染めて、時間の流れが鈍化した。空中に巨大なワッフルの幻影が現れて、タピオ・カーンに重なった。ワッフル・サイト、瓦夫郎の一族代々伝わった技。瓦夫郎は目を凝らして、ワッフルの格子を凝視し、D-3、D-4、G-8、G-9、タピオ・カーンとモンゴルナイトメアの頭部と重なった格子を埋める。

 BBLAM!時が正常に戻り、瓦夫郎の手が霞んだ、一瞬4発を撃発!『タプッ』頭を撃ち抜かれたモンゴルナイトメア!3発目がタピオ・カーンのヘルメットを砕き、4発目が額にめり込んだ。『ガッは』カーンの上半身が大きく反らした、しかし落馬にならず。

「カァァァーンッ!!!」

 崩れて、地を滑るナイトメアから躍起、黒真珠を振り抜いた!タピオカ伸縮性を持つ刀身がしなり、伸びる!鞭めいて空を裂いて、瓦夫郎を逆袈裟に截断!

「ラハァーッ!」

 切断面からシロップが漏れて、上下2ピースになって地べたに転がる瓦夫郎のもとににタピオカ・カーンが近づいた。

「お前……何者だ……」瓦夫郎は声を絞り出すように尋ねた。『タピオ、カーン』答えながら、タピオ・カーンは眉間に空いた穴に小指を差し込んで、潰れた弾をかき出した。
「タピオ、カーン……お前も、スーイティアの……覇権を、狙っているのか……」
『……』
「ここはオレも含めて、年老いて、無力のスイーツ達が暮らす村……いくら殺しても、為に、ならんぞ!」

 力が消えつつある。もうすぐ瓦夫郎は死ぬだろう。タピオ・カーンは瓦夫郎の銃を拾いあげて、口を開いた。

『老爺よ、貴様が勇敢に戦った。敬意を表し、貴様が分かるように話してやる。ワシはここが落ちこぼれ共の集落だったとは知らなった。しかし襲撃を仕掛けたことにワシは後悔しない』

 瓦夫郎はカーンを見上げた。その目は冷酷でありつつも、殺戮への興奮を表している。瓦夫郎は理解した。

「乱世のおいて、誰も局外ではいられない……てか」
『その通りだ』タピオ・カーンは銃を瓦夫郎に向けた。『貴様の道具はもらてっゆくぞ』

 最期に、瓦夫郎の脳裏に浮かんだのは、村から出て行った、息子の顔だった。

(俺はオヤジみたいにこんな村で腐るつもりはねえ。定番力を超えた主食(メインディッシュ)力を、とことん鍛えて、王位について見せる!)
(すまない、そして元気にな)

 銃声が二回響いた。

🥤🥤🥤

 
 同時刻、スイーティア、橋の上。

「ヴッ!」

 タピ子は頭に疼きが走り、見知らぬ男が銃で撃たれて絶命した映像がよぎった。

「勝機!」

 願ってもない相手のその隙を看過するはずも無く、ワッフルの瓦風流がワッフル・サイトを発動した。狙いは頭と重なっているE-3、E-3、E-3……とりあえずE-3!ショットヘッド連発を受けたらどんな堅いスイーツだって死ぬ。と瓦風流はそう考え、精神を研ぎ澄ました。

 しかしタピ子を仕留めたい一心ゆえに、周りを見ていなかった。

「ソイヤッサー!」軽快なシャウトと共に射線に割り込んだのはホットクのホユン!銃を持っている瓦風流の右腕を蹴り上げる!

「なに!!?」

 BLAMBLAMBLAM!銃弾が全部真上に飛んでいった。「イィィィ……」ホユンが右足を曲げて、力を込める!

(まずい)瓦風流は咄嗟に防御体勢をとった。ホユンが緊迫していた右足を解き放った。「ヤァァァーッ!」

「ヌワッ!!!」槍めいたサイドキックをクロス腕で受けた瓦風流はふっ飛ばされ、箸の下に落ちた。忽ちココナッツミルクの濁流に飲み込まれて、見えなくなった。

「よっしゃー!」ホユンがガッツポースした。「タピ子姉貴を窮地から救ってやったぜ!褒めてくれっすよ!」

「はいはい、ありがとうね……」気だるげに返事しながら、タピ子はさっきのヴィジョンを思い浮かんだ。

(妙な胸騒ぎがする……気のせいだったらいいが)

 そして川の中、白いダイバースーツを着て河水と同化した男が潜望鏡を通してタピ子を監視していた。彼はティラミスのティラ夫、自称タピ子のフィアンセだが、タピ子は彼の存在を知っていない。

(タピ子ちゃん、戦闘中に異様が……何があったかな?なんか重い表情しているし🥺……うぅ……抱きしめて、慰めてあげたいよ!😭)

(続く)

ワッフルのレシピはこちらを参照しました

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