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ジ・エンド・オフ・コーン・ウォー②

「ミャラダ(糞)!やりやがった!」「消火器だ!」

 炎上するバリケードを鎮火しようと、タコス店員が慌てて隅に置いてある消火器を取り、ホースを持って噴射し始めた。その時である。

「オーホッホッホホハハハハーッ!」CRAAAAASH!哄笑と共に、燃えているバリケードを半裸の男が体を丸めた姿勢でぶち破り、空中で体操選手めいて一回転してテーブルに着地した。

「バスタード!」銃を構えなおす店員に対して、男は余裕そうにゆっくり立ち上がり、重金属麺棒を水平に突き出した。「よう、お客さんだぞ。早くチリポークブリトーをおくれ」

「うちはタコス屋だ」店員は男のブリトータトゥーに目をやりながら言った。「ブリトーが欲しいのなら自分の股間にある短小にでもしゃぶってろ!」

「オッホ!態度悪いな。これでもサービス業の人間」BLAM!先にトリガーと引いたのは強気のパーマの店員だった。ストリートギャング時代から鍛えて来た、正確にブリトータトゥー下の心臓を狙った一発。麺棒男が胸に穴があけられ、膝が崩れ落ちる画面が想像できた。店員は自分の勝利を確信した。やったぞ店長!今日も店とタコスのプライドが守れた……

 しかし予想が外れた。男の麺棒が銃弾を弾き飛ばし、致命な一撃を防いだのだ。

(バカな、銃弾より早く動けた!?映画じゃねえんだぞ!)パーマ店員の脳は現象の回答を求めるべくフル回転した。ふと男の鼻の下が粉末のようなもので白く染まっていることに気づいた。そういえば聞いたことがある。昔、どこかの麻薬王は新しいドラッグを求めて遺伝子操作で新種植物を作ろうとした、大部分の試作品は失敗に終えたが、その中で唯一、強靭なコーン種植物が生き残った。その名は「トルナード」、吸引すれば一時的に五感を増幅させ、反応を限界まで早めるという……

 男はテーブルを蹴って跳躍し、空中で一回転してパーマ店員の脳天にめかけ麺棒を振り下ろした。ボグン。鈍い金属音。店員Aの頭蓋が陥没し、血と脳漿が破裂所から溢れ出る。まるでサルサ・ロハをたっぷりかけたタコスみたいに。

「ウオオオオオーー!!!」BLAMBLAMBLAM!同僚が悲惨な死を遂げた若手店員は叫びながら拳銃を連射する、しかし麺棒はまるで一つの生物みないに男の手の中で翻り、銃弾を弾けてゆく。CLICK!CLICK!弾切れ!

「クソッ!クソッ!」店員はリロードすべくポケットに手を伸ばした。「オーホッホッホッホハハハハ!」麺棒男の顔は戦闘的高揚で紅潮し、まるでカートゥーンの悪魔の形象だ。迫ってくる!

(だめだ、間に合わない。こいつは化け物だ!)しかし店員は逃げようとしなかった。選ばれしタコス店員たる僕は、生きたまま店がブリトー派に穢されるのを見せられるより、最後まで店を守って死んだ方がマシだ!きっとその方がコーン・ヘヴンに行けるはず!ようやくマガジンをポケットから取り出し、クリップに嵌めようとした。

「ヌゥン!」「ガァァーッ!」

 拳銃が打ち落とされ、指関節が骨折!激痛で店員が右手を抱えてうずくまった。

「それがおたくの接客態度かよ?まあいいわ。お前をやって、キッチンでブリトーを作ってやる」

 男は麺棒を高く持ち上げた。店員は自分の頭がタコスになると悟り、目を閉じてしめやかに失禁した。瞼の裏にいままでの人生が映し出す。放課後クラスメイトとだべていたタコス店、初めてのバイト、月間最優秀スタッフに自分の名前が書かれた時の嬉しさ、そして勃発するコーン・ウォー……この戦争はこれからどうなるか?人間は何を間違えたのか?知らない。僕はだたタコスが好きで、食べたいしずっと作っていたいだけだ。

 フォウ!麺棒が空気を切るおと。ガギャン!金属が衝突した音。

 んん?自分はまた生きている?疑問に思った店員は目を開けた。すると、悪魔じみた男の麺棒は小太りの中年女性が左右の手に持っているヘラ・トマホークとオタマ・メイスで鍔合わせしている。男は驚愕に目を開いている。

「よぉ、ペンデハ(あほ)。うち若い子をいじめとは大人げないね」不敵に笑う!「サイズに見合う相手とやったらどうだ?」そして床に座っている店員にウィンクした。「悪い、買い物の途中でちょっと手こずった!」

「店長ォオオオーー!!!」

 まるで聖母マリアを見たかのように、店員は泣き叫んで、顔中洟だらけになった。

(続く)





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