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閉ざされる剣闘ロード

「こ、これはっ!?おごごごg」

 スマホ画面を覗き込み、あまりの驚きで俺は知能指数が降下して言葉が塞がった。

「これは一大事だぞ!」

 俺は午後の職務を放棄し、意識をニューロンの深層に飛ばした。

ーカードダス時空、深層ー

「スゥー……ハゥー……」

 レッスン室。右手に35cmの競技鉈を握り、DOOMは息を整っていた。彼女の前に、六本のサトウキビが万力で固定し、2×2の方陣で立たされている。ヒストリーチャンネルをご覧になったことある読者なら身に覚えがあるだろう。刀剣の鉄人:死のラウンドにおいて難関で有名なステージ、つばめ返し(自己翻訳)だ。立っているサトウキビを切断し、上半部がまた空中に留まっている間さらに切断しなければならない。一本でも成功に切断できなければペナルティをかけられる。

『D選手、つばめ返しの前で少し息を整えている。未だにペナルティを喰らわずクリアできた挑戦者が未だに居ない。この難関をどうやって攻略するのか』

 離れた場所に、パイプ椅子にかけたあやはヘッドホンを付けて実況している。

「スゥー……フッ!」

 強く息を吐き、DOOMは動き出した。一本目のサトウキビを右上から左下、斜めに切断!そして急速に腰を捻り、ナイフを左から右へ水平に繰り出し、切断!

『D選手は見事に一本目を空中に切断!幸先いいぞ!』

二本目のサトウキビに向かって同じ要領でナイフを繰り出す。切断成功!

『鮮やかな太刀筋!残り二本、成るか!?』

 三本目、斜めにナイフを振りターゲットを両断した。続く水平に切り、刃がめり込んだが、切断にならず、サトウキビはふきとばされる。

『切断失敗!一回のペナルティがかかる。D選手は顔色変わらず四本目のターゲットに向う……今回は掠りすらしなかった!集中力と筋肉は限界か!?二回のペナルティ、これは決勝進出に響くか……』

「響くのはお前だ、あや」DOOMは腕に巻き付けているパラローブを解いてナイフを鞘に戻した。コーグルを外し、雑に放り捨てた。「実況がうるさくて気が散った」
「本番だと実況以外に八方からカメラが追ってくるぞ。ストレス要素がこれの4倍だと思え」
「チッ」
「あぁ?いま舌打った?なんだその態度フィールドを用意してやったうえに練習も付き合ってやったのによ」

 ヘッドホンを投げ捨て、DOOMに然るべき教育を仕掛けるべく指の関節ならしながら立ち上がった。

「あん?やんのかオラ?」

 DOOMもファイティングポースを構えて対応。剣呑な雰囲気がレッスン室を充満した。その時、パーン!と、ドアで勢いよく開いて、一人の男が闖入した。

「てえへんだ!二人とも、てえへんだ!」と男が慌てて言った。

「「誰が底辺だって?」」

 二人の敵意は同時に、闖入者の男に向けた。


 五分後、俺、DOOM、あやはサトウキビジュースを手にしてテーブルに囲んでいた。

「びっくりしたよ。マスターくんが自らカードダス時空に来るとは。『乙女の花園を異物なるオジサンで混入してべからず』って言ってなかった?」
「そう言ってられない状況だよ。これを見てくれ」

 俺はスマホをテーブルに置き、二人に見せた。

「うーむ。三カ国の言葉がわかるグローバル視野を持つあたしはともかく、純粋日本人のあやがこれ読めないんじゃないか」
「失礼だぞ。ではアクズメくん、翻訳をお願いできる?」
「アッハイ」

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「って、なります」
「なんと。つまり隣にあるアニマルカイザーみたいに腐るまで放置されることになるのか」
「ハッ」DOOMは両足をテープルに乗せた。「驚くほどのこったねえよ。これでわかったんだろ。家族なり、ローマ帝国なり、宇宙なり、終わりはすぐそこにある」
「随分達観なこと言う。もっとこう、『おのれパブリッシャー!バンダイナムコ!あたしを裏切りやがったな!ぶっ潰すッッ!』と激怒するんじゃないかと思った」
「にあ、こう見てもいまのあたし、穏やかじゃないぜ。悲しい気持ちがいっぱいで暴れたい気分を必死に抑えてるんだよあや氏」DOOMはクラスを傾け、サトウキビジュースを啜った。「でも怒ってどうする?企業相手に戦争でも起こす?たかがゲームだぜ?惜しいけど、人生はそれだけだねえだろ?更なる価値を見つけ出せばいいさ、こいつ次第で」

 とDOOMはグラスを握っている手で俺を指さした。

「なあマスターくん、単刀直入に聞くぜ。あたしらはひょっとして、あんたがいままで触れて来たホビーみたいに、興味が薄れるとともに、忘却の彼方へ置き去りにされるんじゃあないかね?」
「……そうならない保証は、ない、正直」DOOMの黄色い目を直接できず、俺は自分の手を見つめながら言った。「ゲームがバージョンしなくなり、新しい刺激に触れず、インスピレーションが途絶えて、心のローマが滅亡する……終焉が目に見えるよ」
「だそうだ、あや」
「ふぅ……」

 あやは嘆くように息を吐き、椅子に体を沈めた。

「二人とも随分悲観的だな。でも企業の意向は古代の神々みたいに気まぐれなものである。ひょっとしたら数年後、淘汰されてた日本のカードダス筐体が海外に輸出され、オンパレード以降のタイトルがまた遊べるかもしれない。カードを畳んで剣闘士引退ちょっと早とちりじゃないか?」
「無論、アイカツ出来なくても、剣闘士を止めるつもりはない。俺がようやく見つけた真理で、世に放ったミームだ。簡単にあきらめてたまるかよ」
「よういった!乾杯しよう!」
「あっはい、乾杯」
「乾杯!」

 三人はサトウキビジュースで乾杯し、イッキした。

「ぷはー。で、マスターくんはこれからどうする?」とDOOMが尋ねた。
「そうだね……現時点ではフレンズの第四弾はまた導入されていない。バージョンアップしたら今まで通りやるつもり。ある程度カードを集めて、納得出来たらバイバイマイフレンズって感じか」
「バイバイマイフレンズ、悲しい響きだぜ……」
「じめじめのはよそう。そして剣闘小説はまた続く。デルマエ編と異世界から来た鎧職人キルハード編もまた書いてない。楽しみにしているろくおくにんの剣闘ファンのためにも、これから頑張っていくつもりだ」
「それを聞いて安心だぜ。これであたしも安心して次のEntraceの先へ行ける」

 DOOMは立ちあがり、この間の剣闘士読書会の際に撮った記念写真を飾ってあり壁に向かった。写真の中、目の横にピースサインをあげるDOOMとあやの間に、淑やかで奥ゆかしく微笑んでいる灰金色髪のアイドル、五色かさねが挟んでいた。DOOMは写真を触れて、こっちに振り返った。その表情は闘志に満ちっている。

「なぁ、次はアイカツの本場、JPローマで剣闘ってみない?」



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