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ジ・エンド・オフ・コーン・ウォー④

 ユカタン州、チチェン・イッツァ。

 古代マヤ文明の遺跡とケツァルコアトルを祀るカスティーヨで世界的の観光地域だったこの場所はコーン・ウォーが勃発し、メキシコ政府無力化されて以来原、コーン派によって占領され、フォトレスを建設し、ピラミッドの頂上に祭壇を建て、勝手に聖地だと指定した。彼らはコーンはコーンのまま食べるべきと提唱する、アナーキー思想とオーガニック信仰が染まった最もカルト的な派閥であり、リーダーである古代マヤの司祭と自称するネイティブアメリカンの男、ゾッサイ・サーモンライズ、今日も神妙な顔つきでカスティーヨを登り、その頂上に立つ。彼は烽火台めいて燃え盛る祭壇の篝火に向かった高熱に表情人る変わることなく、懐から一箱のコーンフレークスを取り出し、火に投げ入れた。パッケージに書いてあるタイガーのマスコットは燃やされ、灰に化してゆく。

「コーンはァー!コーンのままで食べよォー!」

「「「「コーンのままで食べようー!!!」」」」

 サーモンライズの呼びかけをカスティーヨのしたに集まった信者たちは応じた。彼らはコーン加工食品を憎んで、異端視している。トルティーヤはもちろん、コーンパン、コーンフレークス、コーンシロップ、ドリトス……コーンの原型が留まっていないコーン製品をすべて敵視している。サーモンライズに続いて信者たちは次々とカスティーヨに登り、冷凍ブリトー、冷凍タコス、家庭パックトルティーヤ、”狩り”で手に入れたコーン製品を火に投げ入れた。食べ物を大事にしている日本人が見たら卒倒しかねない焚コーン的光景!燃料を得た篝火は勢いが増し、コーン煙が天に衝く。

「皆の者よ、よくこれほどの偽コーンを集めて来た!かつてこの地に大いなるケツァルコアトルが降臨り、我らの先祖にコーンを授けた。コーンはその頑丈の構造のため、人間の胃と腸を持てしても完全に消化できず、コーンのままで排出される。人間はコーンで腹を満たし、コーンは人間の活動によって運ばれ、肥やしで繁栄ができた。しかし、いつしか’人間がコーンの恩恵を忘れ、禁忌に手を出したー」サーモンライズは息を吐き、そして深く吸った。「人間はコーンをすり潰し、粉末にしたのだ!」

「「「「BOOOOOOOO!!!」」」」

 信者たちは一斉にビーイング!

「粉末コーンから作られた薄焼きパンーーつまりトルティーヤは吸収率が増えたと当時に、コーンが糞便とともに排出され、大地に芽生えるチャンスを奪った。これは即ち、ケツァルコアトルの意志にたてつく行為である!」

「「「「うおおおおおおー!!!」」」」

 信者は激昂し、泣き出す者すらいた。

「答えよう!神に逆らい、偽コーンを擁護するどもに対し、我々はどうすべきか!?」

「コロセーッ!」「モヤセーッ!」「偽コーンを燃やせ!」「コーン敵に裁きを下せ!」

「「「「「コ、ロ、セー!コ、ロ、セー!コ、ロ、セー!コ、ロ、セー!」」」」

「その通りィ!今日は聖コーンで精気をつけ、聖戦に赴こう!そしてまた偽コーンを燃やし、その煙が我らの働きをケツァルコアトルに伝えるだろう!死を恐れぬなかれ、正義とコーンは我々にあり!」

「「「「うおおおおおおー!!!」」」」

 信者たちはコーンを模して作った金属バットを掲げて鬨を上げた。その目に宗教的熱狂が帯びている。カスティーヨの上でサーモンライズは満足そうに信者を見下ろした。群衆、宗教、コーン、三者を結び付けた結果、その力はサーモンライズ当初の想像を遥かに超えた。彼は過信した、この力があればユカタン半島はおろか、メキシコ全土、ひいてはアメリカ大陸を手中に収め、新生マヤ帝国を建てることも夢ではないと……初代皇帝の玉座に座る自分の姿を想像し、無意識に口元が吊りあがった。

「おい、あれはなんだ?」

 カスティーヨの下、信者の一人がコーンバットで空に差して言った。

「飛行機?」「いや、流れ星?」「近づいてきていない?」

 続々と空を見上げる信者たち、サーモンライズは彼らの視線が向かう先を見た。

「ああん?」

 何かがった、錘状の物体が、光の尾を帯びて飛んでいる。いや、落ちている?段々大きく見える、近くなったからか。

DOOOOOOOOOOOM!

 錘状の物体ーー巨大コーン状飛行物体はカスティーヨに直撃し、古代マヤ文明の遺跡を爆砕した。その際に生じたソニックブームは半径3kmを薙ぎ払い、原コーン派を滅ぼした。

(続く)


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