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いざなうはワールド・コーン・ラビリンス −Aftermath− #ppslgr

これの直後の話になります

 敵性コーン生物テラフォーミング、後に第二次コーンウォーと呼ばれた事件が終結し、R・Vは報告を済んでから我々は観光する暇もなく、翌日の朝、成田へのフライトに乗り込んだ。

 航空会社の心遣いにより私とRVの席はビジネスクラスにアップグレードしてくれた。足が真っ直ぐ伸ばしてくつろげる、実際快適。

 因みに王子は今朝シャンパン色のスーツとサングラスというわざとらしい格好で空港に現れ、出発ロビーを沸かせ、僕達と同じ便のファーストクラスチケットを見せびらかした。本人曰く「王子だからな」らしい。搭乗ゲートでファーストクラス乗客が呼ばれたときは「先に失礼。美しいCAのご婦人たちとパーティーを開くぞ」と言った。ふざけやがって、ファーストクラスをなんだと思ってんだ。

エルフの王子はA・Kの「傲慢」「強欲」「好色」の側面を顕すイマジナリーフレンドである。金、美貌、武力。人生にこの3つの要素が揃えば大体上手く行く?彼はとにかくモテる。しかもとても強いし、ひかる。

 イヤホンを外し、左を見ると、隣席にいるR・Vはラップトップを開いてタイピング作業の最中だ。大仕事が終わったばかりってのに既に次の作品に着手している。さすがとしか言いようがない。僕といえば慣れない戦闘、体力労働、イマジネイシヨンの過度使用で心身ともにへどへどで、機内で提供された缶ビール三本だけでもう眠くてしょうがないというのに。毎日投稿をモットーとしている彼はたとえ冒険中であっても、更新を断たせぬためこうして文章を書きためている。

「なあR・V」「ん?」

 僕の呼びかけに、彼はキーボードを叩いてる手を止めてこっちを見た。

「邪魔してわるい。一つ聞いていいか?」
「なんだ改まって」

 彼はそう言い、ビールを呷った。

「なんつーか、済まなかったな」
「なにが?」
「その、せっかく冒険に連れ出てもらったのに、あんま役に立てなくてさ。ずっとビビりっぱなしで……」
「話の主旨が見えんぞA・K」

 R・Vはそう言い、飲み干したビール缶の握りつぶした。その男らしいモーヴメントを目にした僕は鳥肌が立った。

「な、つまりだな」歴戦の冒険者しか発せないプレシャーに気圧されつつ、僕は自分を奮い立たせた。ここで萎縮したらパルプスリンガーのメンツが持てない。「もしかして、俺が居なくても、なんとかなったんかなかったかなって。イクサ・プロウラの機体性能を全開放すれば何とかなったんじゃないかなって、俺が居なくても全然問題なかったじゃないかって……」

「ハァ……」
 
 R・Vは大きなため息をし、頭をシートにもたげた。しまった、言いたいことは言ったものの、彼の返答次第で僕は耐えられず非常口から飛び降りて太平洋の藻屑になるかもしれない。

「得意の自虐ネタか?」
「えっ」
「A・K、謙虚は美徳ではあるが、度がすぎると本当腰抜けになってしまうぞ。確かにあの状況で、俺はともかく、他のパルプスリンガーならもっとスマートで格好いいやり方で解決できたかもしれないが、彼らはそこにいなかった。お前と王子、レディ、ダーヴィ、そしてケツァル・コーン・アトルがいたから、犠牲を最小限に抑えた。実際にお前と、お前のイマジナリティが世界を救ったと言ってもいい。だからもっと胸を張れ、救世主殿」

 染みる話だ。一ヶ月に一回の頻度で世界を救う勇者からの有り難い言葉、重みが違うぜ。

「そ、そうか?そうだな、もっと自信を持ってもいいよな。こればかりはA・Tに見習わないとなァ!俺はすごい!」
「いいぞ、その意気だ!A・K酒持ってるか?もう一度乾杯」

「シィーッ!」

 右から突如の声、右隣席の屈強な黒人中年男性がものすごく不機嫌な顔で指を唇の前に立てている。額に被っているアイマスクから察するに、安眠が俺らたち邪魔されたようだ。

「Sorry man」

 俺は短く謝罪し、R・Vは顔の横にチョップを振った。おっさんは何も言わずアイマスクをかぶり、毛布をかけ直してくつろいだ。

(では今度は控えめで……)
((かんぱい))

 音量をできるだけ下げ、俺たちは各自の飲み物で乾杯し、飲み干した。

「ふわ〜ん。言いたいこと言えたから急に眠くなっちまった。寝ます。R・Vもできるだけ寝ておいたほうがいいよ。時差はきついからね」

「ああ、一段落ついたらそうするわ。おやすみ」

「うん、グッナイ」

 R・Vはラップトップにタイプ作業を再開し、僕は機内エンターテイメントシステム内のAC/DCセレクションをイヤホンで聞きながら、すぐに眠りに落ちた。

🌽

 宇宙、月の背面、ダークドメイン。

 コーン……コーン……コーン……コーン……

 完全の暗闇で、深海魚めいて脈打つ生物発光体あり。なんと、昨日倒されたばかりの覇王トウモロコシと同じ物体、しかも四本!そしてその更に後ろ……嗚呼!我がコーン神よご加護あれ!覇王トウモロコシがベビーコーンに見えてしっまうほどの超弩級巨大トウモロコシ!ここは便宜上、暗黒コーン宇宙要塞と名付けておこう!

 コーン……コーン……コーン……コーン……
 コーン、ココーン……ココーン、コーン
 コココーン
……コココーン……コココーン……

 何ということだ、コーンたちはエネルギーを発することで意思疎通しているというのか!?翻訳を試みよう……「アルファがやられた」「想像主の捕獲に失敗」「反応消失直前に高コーン反応を探知」だと?やはりこいつらは進化した宇宙コーン生命体、明確な意識を持って地球圏に来ていたというか!

 コォォォォォンン!

 暗黒コーン宇宙要塞は唸り声をあげ、そのコーン体表にマグマめいた赤橙色の生物光が走った。「今すぐ岩石惑星へ降下し、創造主を捕縛してテラフォーミングを行う」だと!?

 BOOOOM……BOOOOM……巨大コーンは天然ガスを吹出し、宇宙船の動作制御みたいに向きを変え、進みだした。最初は緩慢だが、徐々にその速度が増していき、ダークドメインから離脱した。その時である。

 コォーン!コォーン!コォーン!コォーン!

 コーンサイレンが宇宙コーン艦隊の間に飛び交う!「進路上敵影アリ」だと!?

 実際月の上空に、腕を組み、仁王立ちの姿勢で宇宙コーン艦隊の俾倪する人影が居た。クラスジェムコーンを模した薄いドレスを纏った100mの巨体、上質のコーンみたいに金色に輝く膚に、羽が生えた蛇のタトゥーが刻まれている。コーンひげめいた薄緑の頭髪で編んだ戦士三つ編みとコーン葉っぱで作ったマントは無風の宇宙空間でも人間が未発見の粒子の流れを掴んで靡いている。

『玉蜀黍を支配(コーントロール)』

 ココココーン!!!?

 コーンを司る女神ーーケツァル・コーン・アトルはアメシストの魔眼は輝き出し、手を翳すと、覇王トウモロコシの一本、チャーリーがコーン的悲鳴をあげて、痙攣し、コーン粒が剥がれてケツァル・コーン・アトルの元へ飛んでいく。忽ち彼女の周囲に黄色、青、白、深紅など、月光と地球光を反射するキラキラのコーン粒が彼女を中心に、円形の軌道を描いて公転している。さながらコーンの小宇宙。

 COOOOORNN!

 覇王トウモロコシのブラボーが生体ガスを急噴射し、ケツァル・コーン・アトルに向かって高速コーンひげ触手を伸ばし、ジャパニーズ・ヘンタイ・コミックめいた攻撃を仕掛ける!

『挽かれた玉蜀黍・切断の型(コーンフレークス・スラッシュ)』

 ケツァル・コーン・アトルの魔眼が輝く!コーン粒が潰され、固めて、巨大なコーンローラーブレードを成型した!

 コッッッ!?

 急いで逆噴射を行うもブレーキが間に合わず、ブラボーがそのままコーンローラーブレードにぶつかり両断された。ローラーブレードは玉蜀黍を支配(コーントロール)の力で飛び回り、そのままデルタとエコーをも大切断した。

 コォォオオオオオンン!

 残された暗黒コーン宇宙要塞は怒りを表徴するかのようにマグマのような赤い生物光を発した。そこへコーンローラーブレードが殺到!しかし。

 コーン、コンコーン

 暗黒コーン宇宙要塞が禍々しいを発すると、コーンローラーブレードが腐ったかのように黒ずんで、崩れて分解!

『なんと』

 始終余裕綽綽だったケツァル・コーン・アトルは初めて眉間にしわ寄せた。相手は彼女に似た能力を持っている。

『玉蜀黍の賞味期限切れ(コーン・エクスパイア)を使ったのか。貴様、何者だ?』

 コーンコーンコーンコーン……

 まるであざ笑うように、要塞コーンが振動し、北京鳥の巣体育館ほど大きさのコーン粒を一つパージした。巨大コーン粒はケツァル・コーン・アトルと同じ高さに飛び、緩やかに展開した。中にはなんと、黒モチトウモロコシを模したローブに包まれた。肌が黒紫色以外にケツァル・コーン・アトルとうり二つの男神である。

『なるほど。広い宇宙なのかで、コーン神が吾だけではないと思っていた。だが』

 ケツァル・コーン・アトルは右掌を翳し、目を輝かせた。

『ここは吾のリージョンである以上。オヌシには帰らせて貰えないといかぬ。これは最終通牒だ。立ち去れ』

『コココォン……』

 しかし名もなき男神はただせせら笑い、ケツァル・コーン・アトルと同じ姿勢を取った。真似されたケツァル・コーン・アトルは当然心地よいものではなく、不快な表情を露にした。

『それは笑い声か?気味悪いな。去る気が無ければ、還って貰おう。玉蜀黍の昇華(コーン・ライズ)!』

 ケツァル・コーン・アトルの掌が異端コーン神に向かってコーン・ライズを放出!相手また同時じ力を解き放った!

『玉蜀黍の変化(コーン・モーフ)!』

 ZOOOOM!DOOOOM!COOOOORN!

 コーン力が激しく衝突!ビームの打ち合いのように、膨大なコーンエネルギーが二神の間に拮抗している。虚無よりコーン粒は生まれ、崩れる。空間が歪み、重力が捻じ曲げられる。そしてついにコーンのブラックホール、01コ001011ン010シ1011101ン1011011ギュ000101ラリ1100010ティ001

🌽🌽

「A・K!」
「ぅん……スペース・コーン……ゴッド・ファイト……」
「何言ってるんだ?ほら、早く起きろ」
「んあ?ここは」

 夢の記憶は泡のように消えていった。周りを見ると、黒ずくめの男、R・Vが席から立ち上がって荷棚からバックパックを下ろしていた。窓の外に夕日が差し込ん来てでいる。僕が寝ている間に、フライトは目的地に着いたようだ。

「アアー、頭いってぇ。なんか悪い夢を見た気がする~」
「寝すぎなんだよ。立てるか」
「うん、大丈夫だ。あっそいえばもうインターネット使えるだっけ」

 退機指示が出るまで少し時間がありそうなのでスマホの機内モードを解除し、ネットに繋がった。すると。

 PPPPPPINPON!

 通信アプリからメッセージが一気に寄せてきた。王子からのだ。

「うわうるせぇ!なんなんだよ王子!」
「王子からメッセージか?何を書いてんだ?」
「ちょっといま開くから……あっ」

 メッセージの内容は若かりし頃のオーランドブルーム似のエルフがCAたちとのいかがわしいセルフィーであった。20枚ほどある。

「「ウエー」」

 R・Vと僕は同時に顔を顰めた。

(おわり)

このnoteは承認を得たうえで書かれた二次創作です。

 パルプスリンガーズ、これからもよろしく!


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