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【剣闘日記】キャラグッズは畏れ多い

前はコンビニでこんな物を見つけて、即購入したことを覚えているか?

いやぁ素晴らしいね。特にあかり同志の太ももは露出が激しい上にポースも危ういがスミレ同志とひなき同志とのラブメンテナンス重点構図の尊さで一切の邪念が起こさない。私が極めて紳士なだけかもな。ハッハッハ。

このカードを活用しているかと言うと、全然だった。一つの理由としてはこちらのセヴンが発行している電子マネーカード(icashという)の方も電車に乗れるし、ポイント貯めるとコーヒーなどに交換できるので主にそっちを使っている。あとはやっぱりちょっと恥ずかしい。おかしいね。おっさん一人がデータカードダスの前に座っている時点で羞恥心なんてかなぐり捨てたはずなのに。

そんなわけで、このSuica的のやつはずっと他のアイカツカードに挟んで、机の隅に眠っていた。だが先週の木曜日、起床して男を紳士にたらしめるスールに着替え、最後に名刺入れをシャツの胸ポケットに入れるところ……おや?名刺入れがない?どうやら昨日の夜、大君(祖母のことだ)の家で食事していたさいに置いていったようだ。

仕方なく、俺は机の隅からそのカードを取り出し、しばらく眺めた。

(同志たちよ、久しぶりに力を貸してくれ)

と思いながら、習慣通り胸ポケットに入れた。

今日は気温が上がっている。スーツを着て電車に乗るとちょっと蒸し暑い。

車両を降り、いつも通りポケットからカードを出して改札を……ちょっと待って。カードの表面に、俺の汗の蒸気で出来た水滴が付いている。


ーローマ時空ー

「ボワッ」

 薄暗いデントの中、左頭側部が蹴られたアクズメの目に星が行き来して、腕が崩れて俯きになった。

「誰が寝ていいと言った!四つん這いになれ!」

 菫色の長髪を楊柳樹のように下げている女、元剣闘士のヴィオレッティは吠えた。その美しい顔は怒りに歪んでいる。

 男は震え、肘で地面につき、体を起こした。顔は土と血液、そして自分の涙と涎に汚れて、ひどい様になっている。

「フッ!」「ゴバッ」

 今度は右側が蹴られた!再びダウン!

「貴様、よくもスパルタカス姉妹の御姿が書かれたグッズをその薄汚い中年体液で汚したな?すぐにでも処したいところだが、弁明ぐらいは聞いてやる。申せ!」

「すみませ……でした」俯き状態で、男は言葉を絞り出す。「私の不注意で、スパルタカス同志を穢しました。100%私が悪いです……」
「当たり前でしょうがーッ!」
「オブッ!」

 男の後頭部に踏みつけ、グリグリと踵を動かし侮辱をかける。「いぎ……んぐぉ……」唇と前歯が地面と接触し、土の味が口の中で広がる。

「さあ続け。どうそうすれば良かったのか、述べてみよう」

 頭上にヴィオレッティの冷酷な言葉が降り注ぐ。アクズメは顔面が圧迫されながら、口を動かした。

「ふぁい、ぢゃんろざいヴにいれれおぐぺきれじた」

「財布だど!?」「ぎゃおん!?」

 後ろに立っている雛鳥めいた黄色い短髪の女ーーアヴィチュエラがそう言い、アクズメのケツを蹴り上げた!

「てめえのケツポケットに入れるあれのことか!!?ふざけんなよてめえ!!!人間は男女問わず、ズボンに必ず3gのうんこが付いていることを知ってるな?なのに財布だと!!?てめえのうんこたれで姉妹を汚す気か!!?こうしてやる!ウンフッ!ウンフッ!ウンフッ!」
「あぉん!ぎょえ!ぶぉおん!」

 激昂した女はアクズメのケツを槍の柄で打擲!肉と棒が衝突してパチン、パチンと響いた。

「汚ぇ声で鳴りやがって、恥ずかしくねえのかよ。おいヴィオレッティ、こいつは反省するが気がないようだぜ」
「そうみたいね。ではこの場合はどうしましょうか?」
「処す!!」アヴィチュエラは残酷に笑ったを見せた「DEATH(死亡)な!!!」
「その通り」ヴィオレッティもまた目に嗜虐の光がよぎり、腰に帯びた剣を抜いた。 

「じっとして、四つん這いになれ……そう、いい子ね。誤って違ったところ斬ったら余計に苦しむだけよ。では……」

 アクズメの延髄を断つべく、剣を握っているヴィオレッティの腕の筋肉が隆起した。しかし剣は振り下ろされなかった、できなかったのだ。ヴィオレッティの背後から、分厚い剣タコに覆われ、亀裂だらけの掌が刀身を握り、動きを阻止した。

「スパルタカス姉妹……!」

 訝しんだヴィオレッティはその者の名前を呼び、アヴィチュエラは息を呑んで、さっきまで見せた興奮から覚めた。

「やめよう。わたしは気にしていない」
「だが!」
「やめよう」

 スパルタカスは穏やかだが、異議を認めないという強い意思が秘めていた。ヴィオレッティは姉妹の目を数秒見つめて、やっと諦めて剣を鞘に戻した。スパルタカスはアクズメの前に歩み寄り、片膝ついた。

「可哀想に、面をあげよう」
「いや、私は……同志に申し訳ないことを……合わせる顔がないよ!」
「気にしていないと言ったはずだ。面をあげよう」
「う……ぐぅ……」

 男は頭を前に向け、初めて彼を救った者を目にした。『夢幻の冠』の鎧を身に纏い、体格は剣闘士として平均的だが、露出している皮膚に刻まれた大小様々な傷跡が歩んできた修羅場を語っている。波を打つ鮮やかな錆色の髪、強い意思を宿る顎。彼女こそがかつてスターライトスクールの新星、ローマの新しき希望、そして今は帝国に仇なす不倶戴天の反逆者、ブライトごと、スパルタカスである。

「嗚呼……」訳のない感動が沸き上がり、アクズメは涙目した。

「我々はすでに血で汚れている。そして未来はもっと手を汚していくだろう。カードは友達、君の役に立てたことに光栄だと思うよ」

 スパルタカは微笑み、右手をアクズメの肩に掛けた。

「それはそれとして、もしうんこが付いてしまったらまあ、流石に嫌だな」


ー現実ー

というシーンが頭の中で流れたのさ。いやはや、畏れ多い!俺はハンカチ(未使用)でカードを拭き、上着のポケットに納めた。これで比較的に汚れることがないはずだ。しかしアイカツは完全に頭の中で聖域に化しているな。参った。限界オタクになりかけているか?

会社に入ったらアルコールスプレーでもう一度消毒しよう。

最後に、大空あかり同志、お誕生日おめでとう!


スパルタカス同志初登場回:



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