見出し画像

辛い麺メント2.5 #ppslgr

「ふえーからーい!ギンギン冷えたミルクがほしい!もしくは杏仁豆腐!」
「俺もうだめだ……家に帰りたい。道を出て右すぐにコンビニがあるからそこで休んでいかない?杏仁豆腐は多分売ってないけれど」
「そうしようか」

 白玉辣麺の洗礼を受けたM・JとA・Kが汗だくで店から出た。M・Jは満足に食べられてすっきりした模様に対して、A・Kはもうへどへどだ。一刻も早く冷たいものを口にしたい、口内の火事を鎮めたいのだ。

「えっ」「なっ」

 しかし数歩歩いたところで、道の真ん中に突如現れた橙色の壁が二人妨げた。否、壁ではなく、そう見えてしまうほどの広い背中だ。

「えっ、あの……?」「ダーヴィ!びっくりしたよ!来てたのか?」「ダーヴィってあの?」

 下にある筋肉ではち切れんばかりの橙色ポロシャツを着ている偉丈夫が首だけで振りむいた。ツーブロックに剃り上げ、真ん中は攻撃的なモヒカンにまとめたヘアスタイルが実際BADASS。ブラックミストの幻を纏っていない彼はこうしてジムのコーチ姿で身を隠している。

ダーヴィ。人間とデーモンの混血。黒魔術と東洋の神秘的武術「テン・マーク」の使い手。アクズメの中にある「正義」「ヒーロー性」「筋肉崇拝」を象徴するイマジナリーフレンドである。

「DUDE、飽食後とは言え油断し過ぎたぞ」
「それはどういう」

 ダーヴィは背を向けたまま、指に挟んでいる物をA・KとM・Jに見せた。小ぶりの椎状の刃、間違いない、ニンジャが用いる投擲武器、クナイ・ダートだ。

「クナイ・ダート?ってことは……」「おい、おいまさか……」

 ダーヴィの肩越しに、こげ茶色の人影が二人の目に入った。その者が纏っている服は表面が煮えたぎる麻辣火鍋スープのように赤い蒸気を立っている。顔は頭巾と赤銅のメンポに覆われ、唯一露出している両目は超自然に赤く光っている。どう見てもニンジャだ。

「「アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」」

 M・JとA・Kは急性NRS発症!しかし流石は訓練されたニンジャヘッズと言ったところか。腰を抜かしつつも、下半身に意識を入れて失禁を免れた!研修の成果だ!

「ドーモ、レッドローブです」

 レッドローブは掌を合わせてアイサツした。

「アイエエ……ドーモ、レッドローブ=サンA・Kです」「……M・Jです」「ダーヴィです」

 アイサツされたら返さねばならない。古事記にもそう書いてある。アイサツ直後、ダーヴィはブラックミスとの守りを纏い、両手の人差し指と中指を突き出しテン・マークを構えに入った。武術経験者のM・Jは何とか平静を取り戻し、アイキドーのジェスチャを取った。「はは……やはり百忍街にニンジャがいるんだ……僕は間違っていなかった……」A・Kは未だにNRSで白昼夢みたいにうわ言発している。

「白玉辣麺の突破おめでとう。辛い麺の探求者」ニンジャは男とも女とも聞こえる怪しげな声で話しだした。「しかしこの地にはまた凄まじい辛味を持つ相手がいる。もし本物のイーターを名乗りたければ」

 ニンジャじゃ懐からマキモノを取り出した。

「食らいつくせ。さすれば目の前にドーが現れるだろう」

「M・J、おまえに受け取ってほしいようだぞ」
「アイエッ、俺が!?だ、大丈夫なの?」
「相手が殺す気ならとっくにやっていただろう」

 ダーヴィに言われたM・Jは数秒躊躇したが、勇気を出して失禁を堪えながら歩き出した。「ケッホ!クッコォ!アマノミナトォ!」レッドロープに近づくにつれて、赤い蒸気が目や鼻と粘膜を刺激し、あっという間に顔中涙と鼻水まみれに!

「励め。オヌシがいずれ我々に加わる日を期待している」
「アッハイ、ありがとうございますグェーホォホ!」

 赤い蒸気に苛まれつつも、M・Jは両手でマキモノを受け取った。レッドローブは満足そうに頷くと、PON!と赤い蒸気に化して散っていった。

「ゴッホ、ガッホ!なんだたんだよもう……ウェーコポッ!」
「とりあえず無事でやり過ごせた。あのレッドローブとかいうニンジャ、かなりの使い手と見た。もしやり始めたら二人を守りきることは難しいだろう。じっとしていろ」
「えっダーヴィ何を……」

 ダーヴィはM・Jの顔を掴むと、素早く指先で数回突いた。

「テン・マークを施した。これで痛みを納めるはずだ」
「うお、本当だ。さっきより遥かによくなった。ありがとう」
「さて、兄弟のほうは」

 A・Kが居た場所に見やると、彼は未だに尻餅体制で空に向かて何かつぶやいている。

「あの理髪店にもきっとバーバーニンジャがいる……ドラッグショップにはケミストニンジャ……カフェの店主はバリスタニンジャで……」
「A・K、起きなさい!」
「ウオ!なんだ!?ニンジャは!?」
「ニンジャはもう行っちゃったよ。それより、このマキモノ読める?中国語で書いたけど」
「えっと、見たところヌードルショップのリストだけど、幾つ知っている店もある」
「じゃあ連れって行ってもらえる?」
「別にいいけど……でもナンデ?」
「レッドローブ=サンが、ドーが現れるとか言ったのさ。実際見てみたいじゃん?それに暇だし」
「アッハイ」

 NRSがまた残っているのか、A・Kは反論せず、素直にM・Jの要求を受け入れた。

当アカウントは軽率送金をお勧めします。