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【8】#かんたんなアンケートと300字で勝手に本をおすすめする 吉野弘『二人が睦まじくいるためには』

かんたんなアンケート(年齢や性別、好きな色など)と300字の文章を書いてもらって、それを読んで独断と偏見で本をオススメする、という連載をやっています。

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【#9】25歳・女性・会社員 事務系

好きな映画:ムーンライト、ルーム、ギフテッド、スリービルボード、マイインターン、セッション、ブルックリン
好きな作家:松浦弥太郎さん、原田マハさん、朝井リョウさん、東野圭吾さん、沼田まほかるさん、いしわたり淳治さん
好きな色 :白、グレー、水色
最近興味があること:結婚、料理

こんにちは。
あかしさんの文書が好きで、毎回noteの更新を楽しみにしております。

私は、他人と長時間一緒にいるのが苦手なタイプです。休日はひとりで出かけたり、部屋でゆっくり本を読んだり、料理をつくるのが好きで、正直ひとりの時間を十分楽しめるタイプなのだと思っていたのですが、最近、長年付き合っていた彼氏と結婚することが決まりました。彼は、例えるなら空気のような、心を許せる大事な存在です。

結婚に伴い、転居や転職など環境が変化することに対して、楽しみだけど、うまくやっていけるか、正直なところ不安でいっぱいです。

そんな私の背中を押してもらえるような本と出会いたいと思っています。よろしくお願いします。


おすすめしたい本:吉野弘『二人が睦まじくいるためには


こんにちは。いつも文章を読んでくださっているとのこと、ありがとうございます。そして、ご結婚おめでとうございます! 誰かと長時間一緒にいることが苦手だ、という回答者さんが「ずっと一緒にいれたらいいな」と思えたということは、本当に旦那さんと相性がいいんだろうなあ、と朝からほっこりしました。

自分が「苦手だ」と思っていることを、いともかんたんに超越してくれる人の存在は、本当にかけがえないですよね。自分のこだわりをいい意味で捨てられる関係の居心地のよさ。今まで一緒に過ごしてきたおふたりは、じょじょに「他人」から「恋人」に、そして「夫婦」になっていったんだろうな……などと、勝手にそのグラデーションに思いを馳せてみたりしました。

おふたりの永い幸せを心から願っています。


そして、そんな回答者さんにおすすめしたいのは、吉野弘さんの詩集『二人が睦まじくいるためには』。

その中の、「祝婚歌」という詩の中にある一節を、ぜひご紹介したいと思います。


二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい

立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい

完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい

二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい

正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい

立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい

健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい

そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい


この詩を見つけたとき、私はなんだか泣きそうになりました。中でも、「完璧なんて不自然なことだとうそぶいているほうがいい」という言葉が一番好きです。

転居や転職など環境がいろいろ変化して、大変なこともたくさんたくさんあると思いますし、楽しいことも、うまくいかないことだってあると思います。でも、すべて完璧でいる必要なんて全然なくて、「失敗しちゃったね、でも完璧に全部こなせるなんて不自然だよね、ハハハ」と笑いあえるような二人でいられたら、そんなに素敵なことはないよな、と思います。

優しさと思いやり、そして笑いとユーモアにあふれたご結婚生活になることを心から願っています! ぜひ、よろしければ読んでみてください。


ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。