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人の心は変わるものだ、というけれど。

ずいぶんと長い間、傷ついていないということに気づいた。もう10年くらいになるかもしれない。

幼いころ(といっても中学生くらいのころ)の私は、今とは正反対で、ものすごく傷つきやすい性質だった。人のことは基本的に100%信じていたし、人はみんないい人だと思っていたので、ちょっとした人の言動で、いちいち100%全力で傷ついては、涙を流していた。

だけど中学生活と高校生活のそれぞれで、ものすごく仲の良かった友達のことが信じられなくなったこと、ものすごく大好きだった恋人にフラれたことをきっかけに(今思えばかわいいことなのだけれど、当時の私にとっては衝撃的な出来事だった)、私の中で「人の心は変わりゆくものだ」「人の気持ちを信じすぎると、自分が傷つくのだ」という、自分を守るための、薄いけれど強力な結界みたいなものができた。

その結界はそれからというもの、とてつもない効力を発揮して、私の人生観を大きく変えていった。

「人の心は変わっていく」「絶対的な感情はない」「何があってもしょうがないと思おう」「自分が傷つく必要なんてない」

そういったことが私の頭の根本的な部分を占めるようになって、どこにいても、何をしても、楽しいしみんなのことは大好きだし離れたくないけれど、心の底では「いつか嫌われたとしても傷つかないでいよう」と自分自身に言い聞かせるようになった。

傷つかないことは、強いことだと思っていた。


けれど、なんというか、そういう考えを変えてくれた人がいる。「人に、心開いてへんやろ」と出会って数時間で気づかれ、「俺が開かせられたらいいな」と、まるで少女マンガのヒーローみたいなセリフを吐き、そして本当に、それを実現してくれた人。


「人の心は変わるものだ」と思ってはいたけれど、まさか自分が変わるわけないと思っていたことに、さいきん気づいた。「人の気持ちは変わる」というその対象から、自分だけをすっぽりと、知らず知らずのうちに外していた。

本当に、人の心は変わるものだ。あんなに、人のことなんて信じるもんじゃないと言っておきながら、今ではちょっと、誰かのことを信じたくなっている。傷つくことを怖がらないでいよう、むしろ傷つかないためにも今この瞬間を大事にしようと思っている自分がいて、なんだかそれはステキなことだな、と、思うのです。


ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。