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乗った船は、ちゃんと航海しているか。

気づけば社会人生活も4年と半ばを過ぎていた。時の流れは歳を重ねるごとに速く感じるとは知っていたものの、まさか、こんなにも速いだなんて。

私にはまだ転職の経験がないので、必然的に社会人歴=今の会社歴、ということになる。今日、オフィスに人が少なくなりつつある20時ごろ、自分のデスクでぼんやりとそのことを考えていて、「……えっ」と少し驚いた。

なぜなら、私が同じコミュニティに2年以上所属するのは、中学3年生以来はじめての経験だったからだ。

私が今までで一番長く同じコミュニティにいたのは、中学校の部活(バドミントン部)の3年間だった。高校の部活(ラクロス部)は1年半でやめてしまったし、大学でのアルバイトも2年以上続けたものはなかった。熱を入れて活動していたフリーペーパーサークルも3年生のはじめには引退してしまったし、恋愛も、自分の中での優先順位が低く、あまり長くは続かない性質である。

「ゆかは飽き性やから」と、母はことあるごとにそう言った。「あかしはほんまに熱しやすく冷めやすいなあ」と、仲の良い友達も口を揃えてそう言った。私自身も、自分のことを生粋の飽き性だと、そう思っていた。

だから正直なところ、今の会社も「3年くらいで転職するかもなあ」とぼんやり思いながら入社した。「3年後には必ず転職したい」といったキャリアプランがあったわけじゃないし、結婚して仕事をやめたいなどという気持ちもあったわけじゃない。まったく何の根拠も理由もなかったのだけれど、過去の自分の経験則から「私は飽き性だから、きっと3年も経たないうちに転職するんだろうな」と勝手に思っていたのである。

そんな私が、新卒で入社した会社で4年目を迎えている。それは私にとって(そしておそらく母や友人にとっても)驚くべきことだった。現に母からは「珍しいねえ、ようがんばってるねえ」と言われるし、友人からは「ほんまに今の会社が合ってるんやなあ」と言われる。

たしかに今のところ、サイボウズという会社のことは大好きで、辞めるつもりはまったくない。

なんで続いているのかな、と考えてみたところ、答えを出すのは比較的簡単なことだった。私は、「続ける」という言葉に対して、大きな勘違いをしていたのだ。

これまでの私は、「続ける」ということに対してどちらかといえば「停滞」というイメージを持っていた。同じアルバイトをずっと続けていてある程度の知識を身につけたらそれ以上はなんだか自分の成長が止まっているような気がしていたし、同じ人とずっと付き合っていたら「もっと世界は広いのにもったいない」と思ってしまうことが常だった。

だから常に新しい世界に触れたかったし、そのためには「何かを辞めて新しいことを始める」ことが必要なのだと思っていた。「続ける」とは、新しい何かを知ったり挑戦したりすることとは真逆のことだ、と思っていたのだ。

だからサイボウズに入って、毎年変わりゆく社長を、事業を、社員を見ることで、私は「続けること」でしか見えない世界があるということを知った。「続けること」の中にも、新しいことを知る機会、新しいことにチャレンジする機会は幾度となくあるのだということを、今さらながらに知ったのだった。

このツイートにも書いたように、「続ける」とは、「同じことをずっと続けて停滞しつづける」という意味ではなく、「同じ船に乗り続けて、いろんな場所に冒険に行く」という意味なのではないだろうか。同じ船に乗り続けるからこそたどり着く世界があって、同じ船に乗り続けるからこそ知り合える船員たちの魅力がある。そういった意味での「続ける」ことには、なんて意味があって素敵なことなんだろう、と思う。

だからこそ、自分が乗り込んだその船が、ちゃんと自分が望む航海をしているかどうかを確かめることが何よりも必要なのだ、と思う。その船は、ちゃんと冒険をしているか、新しい仲間を探そうとしているか、同じ仲間である船員を蹴落としあったりしていないか──。

自分にぴったりの「船」が見つかったとき、人は「続ける」ことに意味を見いだすのかな、とふと思う月曜日の夜なのでした。グリーン車なうです。


ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。