見出し画像

【#12じめじめ】テセウスの船

今回は、最近読んだ激推しマンガを紹介させてください!

モーニングで連載中の『テセウスの船』。ざっくりあらすじを説明すると、「犯罪者の息子」として育った主人公がタイムスリップして父親が本当の犯人なのかを暴くお話。

シリアスでヒリヒリするクライムサスペンスとしての要素と、繋がるはずのなかった人同士が時を超えてじんわり繋がっていくヒューマンドラマとしての要素がいい塩梅で混ざり合っています。

モーニング系のクライムサスペンスといえば個人的には福本伸行×かわぐちかいじの『生存~LIFE~』ですが、異なるのは「父親」の描き方。
『生存』の「父親」は仕事を優先するあまりにに娘への愛がおざなりになった銀行マン。それに対し、『テセウス』の「父親」は家族思いで天然パーマが特徴的な村のお巡りさん。

「父親」の描き方が違えば愛の描き方も当然違います。『生存』は都会の銀行マンがこれまでの人生で関わることがなかった刑事や殺された娘の友達と「力を合わす」ことで娘への愛を再認識する。『テセウス』は小さい村の警察官が周囲から家族を「守る」ことで愛を再認識します。

この「守る」というのは『テセウスの船』のテーマであると感じます。自分を「守る」ために誰かを傷つけ、大切な人を「守る」ために嘘をつく、そんな普遍的だけど誰もが隠したい感情に「はっ!」とさせられることの連続です。なので、ページを読む手が止まらない。

さて、今週のテーマは「じめじめ」なのですが、ここにも『テセウスの船』を取り上げた理由があります。

『テセウスの船』には霧、雨、雪の描写がものすごく多いのです。

まず、主人公がタイムスリップする際は必ず霧に包まれます。(『ジパング』!!)そして、霧が晴れると雪や雨が降っている。
主人公が父親に自分が未来から来た息子であるということは、二人が雪の中で露天風呂に入りながら告白されます。

「じめじめ」するとほとんどの人が不快感を感じるのは、自分と周りの誰かとの境界線が曖昧になるからなんじゃないかなあと考えたりします。その逆に、クラブやフェス会場で熱気と汗で「じめじめ」するなあと感じても意外と不快感を感じずにむしろそれを楽しんでいる気がしてます。

(「じめじめ→不快→境界線曖昧?」というのは『身体の零度』という本を読んで感じました。こちらも激推しです!!)

そう考えると誰かと繋がるときって「この人となら『じめじめ』を共有してもいい」と感じるときでは?とも思ったり。

なので、『テセウスの船』では「事件が起きた頃にタイムスリップしたい!そしてその頃にいた人に会いたい!」と願ったとき霧に包まれているし、「大事な告白をしよう!」と思ったとき雪の中で風呂に入っているのではないでしょうか。

愛の肌触りなんて、きっと一生わからないし心の持ちようで変わると思いますが、『テセウスの船』を読むと「きっとそれは『じめ』っとしているんじゃないかな」なんて考えます。

サポートは執筆の勉強用の資料や、編集会議時のコーヒー代に充てさせていただきます