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TAMTAMの新曲を聴いて窓を開ける

A working day goes by
A day goes by
A day goes by…

大好きなバンドが新曲を配信した。
イントロ1音目からチルで最高で、この季節だったら仕事帰りに日比谷公園を散歩しながら缶ビールを開けるときに必ず鳴ってる音だ。本当なら。

鼻の奥が生き物臭さを敏感に感じとり始めて数日後には消える、煙に巻くスピードで濃い緑に溶ける季節は今年もいつも通りだった。新宿駅ですれ違った人の服装と歩き方が昔の知り合いのようで、振り返ったけどもうその姿はない。春ってのはそれくらいウソみたいで、部屋から見える川沿いの木々もあっという間に緑。そんなことを思っても、今じゃあの激混み改札口の方がファンタジーの世界のはずで、季節という概念自体が今年は外側の話だった。

ネットを通して外界を知り、だいたい部屋にいて、たまにドアを開けてみても開放的な気持ちにはなれない在宅の日々。
手放しに世の中を受け入れられるわけもなく、両手をあげた降伏者たちはパソコンの画面を注視しながら、勘違いした幸福者の吐いた言葉を音読してため息をつく。

音楽イベントの中止・延期に関するアナウンスに少し慣れてしまったところもあるぶん、夏フェスの解禁情報に胸が痛くなる。本当に開催されるのだろうか。今年までバイトをしていたライブイベント会社からは政府の助成に関する情報が送られてくる。働いている人たちの顔が浮かぶ。

春が始まりの季節というこの国の常識もいずれ変わるかもしれない。
今年の春に何かをあきらめて、新しい世界や常識と折り合いをつけながらやっていくんだ「このままダラダラリーマンになるんだ」自分と一緒に漫画家を目指そうと同級生に声をかけたのはシュージンこと秋人。ダラダラリーマンにもなれてないまま秋になる。

*  *  *

ワクワクすることもなければwork workでもない自宅待機。
書いていて恥ずかしくなったときはもう一度押す。
ワクワクすることもなければwork ……とにかく

おうち時間を過ごす僕らに供給されるエンターテイメントもしくは時の共有映像はすでに過多で、でも片手間に何をするでもなくまた再生ボタンに手を延ばす。

目をつむって音楽を聴くことを忘れていた。
耳からの情報だけでこんなに映像が浮かぶことを忘れるくらい画面の前にいたのか。

TAMTAM「Worksong! feat.鎮座DOPENESS」

この二組の楽曲は「ついにきた!」という感慨が深い。
TAMTAMの自主企画にゲスト出演が決まっていた鎮座が捕まって延期になったイベントが2月に開催されて、そのとき披露されたこの曲は「さっきまで(リリックを)書いてた」スペシャルコラボだったらしい。

そのイベントからTAMTAMはメンバーの入れ替えをして(脱退ラストライブも開催できなかった。ともみんさんお疲れさまでした)外に出す初仕事はオンライン上で撮影した「worksong!」ホームエディション版PVを投稿することだった。

そして、この文章を書いている最中に「Worksong! feat.鎮座DOPENESS」のPVがYouTubeに公開された。

(めちゃくちゃいいから見て!)

おそらく緊急事態宣言が出たあとの、ガラガラの新宿駅前交差点から始まる映像は、本編映像もこの禍が始まってから撮影されたものだとわかる。

今の状況と、今後の変化によって働く様式や方法は変化するだろう。制度的には改善されるかもしれないし、これまで歪んでいた組織図や逼迫した現場へのしわ寄せが明らかになっている現状もある。僕が「おうち時間」を過ごせるのも、いま働いてくれている人がいるからだ。

働くから余白の時間がうまれて、そこで僕たちは音楽を聴いたり酒を飲んだり、行きたかった場所は足を伸ばす。最高の友達や恋人と一緒に。
コロナが広がり出す前に生まれた曲だけど、普遍的な人類の生活を謳っていたからこそジャストタイミングにも思える。

今は誰もが健全健康に働ける未来に消えてしまいそうな希望を抱いてる。
ボーカルのクロさんがマスク姿で繰り出した空っぽの街や新国立競技場に、変化した全ての日を受け入れてまた繰り出せる日まで。

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勝手なイメージだけど、TAMTAMはアイスバーを齧りながら歩くのに一番適したバンドだ。延々と続いてしまうような、でも終わってほしくもないようないつもの生活からの帰り道を歩く自分をどこかで写すカメラが、勢いよく空に飛び立って世界を広げるくらいのイマジネーションをくれる。

この曲がど頭にくるアルバム『We Are the Sun!』が配信されるのは5月20日。

ウイルスの拡大はおそらく今と変わらないけど、自粛に疲れた人たちが痺れを切らして出歩き始めてしまうくらいの時期だと思う。もし、「おうち時間」を過ごせる状況に自分がいるなら、部屋でエンドレスリピートで踊りくるってやろうとおもう。

【今週のテーマは #57どうしよっかな でした】

(オケタニ)


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