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【星野源解禁】深夜二時半の町中華に行くまでのポップス

おはよう、世の中
暗い部屋に青いポイントが点滅している。自分の意識が不在だった間に、誰かがブザーを推していたらしい。涎を拭いてから、光の輪郭をはっきりと確認できるようになるまで待つ。カーテンは明け放したまま、靴下を片方履いたまま。青い点を見つめすぎたせいか、空も少し青みがかって見える。大量消費をけしかける世界に、人の生活の気配が勝るのは彼らが目を閉じる時間だけ。そこにももう、ブルーライトの光が混じるけど。

赤ちゃんがお風呂に入るときの、身体で一番重い首から上の部分を支えてもらう映像を思い出す。あんな風に、すっぽりと誰かの手に収まって、この頭を支えてほしい。できればひんやりとした手。靄がかった頭が重いんだ。椅子に手をかけながらゆっくりと立ち上がる姿は、左右がいびつな化物で、でたらめに踏み出した一歩目。足元の缶ビール。軽い音。膝をついた。頭が揺れる・・・・
・・・・エス・オー・エス、エス・オー・エス。どうも、ただ今のドジの件です。スリー・ファイブ・オー、いや、ファイブ・オー・オー型の地雷、が、転がったままの部屋から抜け出せない模様。救出求ム、救出求ム。どうした、応答せよ、応答せよ。もうどうしようもねえよ、いつまでやってるんだ。500ミリのそれは、ぺキャッと音を立ててどこかへ蹴とばされた。

整理しよう。昨日は散々に笑った覚えがある。でも、似たような話を違う人にするときは、同じ記憶を共有した分人が勝手にやってくれる。実際に誰と会っていたかが思い出せない。
三日間の記憶が入り混じった虚しさは、トイレを出た後も残る。
ダンスフロアのように反射する空き缶、充電中オレンジの光、換気扇の低い振動と、調子の悪いエアコンのビートキープ。救急車のサイレンが聞こえた。さっきのエス・オー・エスが届いたのかしら。

着替えていない。風呂場で泡立った石鹸をこすりつけたとき、思いのほか鼓動がゆっくりしていることに気付いて少し不安になる。
暗がりを抜けると蛇口
明かりを点けると眩しい。
喉が生クリームみたいに固くて
赤い季節と透明少女が心を蝕む。
家を出た。
宅配ボックスの中の箱
おはよう、真夜中
同じような日々
淋しいと叫ぶ
逆襲の予感
何気ない日々が
ゆっくりと僕らを殺す
ツタタンタン、ツ、ツタタンタンタン
ツタタンタン、ツ、ツタタンタンタン
ヴァ―――――・・・・

***

イヤホンの充電が切れた!!!

酔いも醒めたから今だけまともに言おう。俺は、完全に夏バテにはまった。あの日は、いつもの万年床で、酒に潰れているにもかかわらず、オードリーのラジオ、星野源のストリーミング、イエローマジックショー2の録画、この三つを同時に、しかもたった一人で、相手していた。当然頭はスパークして、目が覚めたときにはすべての電源が落ちていて、頭痛の奥には一つの声。だけど、それがだれの声か、全然分からない。

***

あの人の目にこの世界はどう写るだろう。自分を演じるのではなく、自分の心に問い続けることで行動を変える。自分の衝動を分解して、原因を見つけて、別の違和感に対する自分の姿勢を修正する。これは、己を信用している人にはできないことだ。自意識に寄り掛かった人は、自分がナナメになっていることに気づけない。

ピンク・ターコイズブルー・エメラルドグリーン
あの人の目にこの世界はどう写るだろう。
彼の網膜を通した世界を自分も見てみたい。いま見えている世界とどっちの方が色が多いだろう。彼の記憶が焼き付いた網膜。アイデア勝負よりも上手く。
エレベーターが開く。もう幕は開いている。
ピンク・ターコイズブルー・エメラルドグリーン

「つづく」ということは何かが約束されているということだ。
それは自分が自分にできる唯一の優しい嘘かもしれない。
闇の中から歌が聴こえた気がした。
ライトもつけない自転車がすぐ隣を疾走して見えなくなる
商店街が見えて、遅れた風が首の汗をほかす
駅前広場の時計を見上げると短針は回って2
歩く方向をずらして赤い看板へ。確かまだやってるはず
湯気が顔にかかる。イラッシャイマセ!
ビール。瓶ね。ロク・サン・サン
ロク・サン・サン?633ミリリットル・・
分かった!!町中華で飲(や)ろうぜ!!
昨日最後の記憶はあいつの声
玉袋筋太郎、ふざけた人間だ
ラストオーダーデス
じゃあ・・・北京ダックを

おやすみなさい。

銅鑼の用意

ゴング!

(オケタニ)

<今日の一曲>
「北京ダック」細野晴臣

一回、エレベーターで細野晴臣と乗り合わせたことがある。

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