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【#11 あつい】 オークラがあつい。

 先日、ドラマ『遊戯みたいにいかない。』だ最終回を迎えた。このドラマは2018年に1月クールに好評を得た『漫画みたいにいかない。』の続編として制作された。
 
 主演を東京03が務め、脇を山下健二郎、山本舞花が固める。ただ、その出演陣以上に注目していただきたいのが、脚本を務めるオークラである。
 オークラは東京03、バカリズムの座付作家として名をあげ、『ゴットタン』でも度々顔出しでいじられている。

 このオークラの作品で自分が最も好きな作品が、昨年行われた舞台『FROLIC A HOLIC 何が格好いいのか、まだ分からない。』内でのコント「お笑い裁判」だ。

  公演の大筋から見るとは飯塚悟志(東京03)が地元へ帰ったきっかけとなるエピソード。なのだが、この一幕はひとつの独立した作品として見ても楽しめる作品になっていた。

 あらすじはこうだ。“20XX年”に芸人の数が激増しネタ素材の奪い合いが芸人間で頻発。そのため“ネタ元パクった/パクってない裁判”が行われるようになっていた。
 
 なんともまあお笑いファンをここまで震わせてくれるかという設定だ。

 浜野謙太(在日ファンク)/豊本(東京03)が演じる若手コンビ「拍手笑い」と、角田/飯塚(ともに東京03)が演じるコンビ「ピンボール」が「田舎に帰る直前にも関わらず東京で馴染みだった定食屋で新メニューを頼む」というネタ素材をめぐって論争が行われる。

 とにかく短いスパンでボケを入れていくスタイルを取る「拍手笑い」は「田舎に帰る直前にも常連の定食屋で新メニューを頼む」というのはあくまでもたくさんあるボケのうちの一つとして使ったにすぎないと断言する(ゼロ年代のキングコング、NON STYLE的)。それに対し角田/飯塚演じる(東京03のあり得た現在としての)「日の目を浴びない中年コント職人」は大ボケに値するそんな秀逸な設定はそこで一番の笑いが起こるよう構成を考えるべきであり、その価値を全く理解していないが由に取ってつけたように「田舎に帰る直前の、馴染みの定食屋で新メニューを頼む」設定を適当に扱えるのだとと説く。

 結局この「裁判」はあるファンの愛に両者が心を動かされうやむやに終わる。しかしそのファンも結局「お笑いファン」をやめ「声優ファン」になったとかで、 そして"拍手笑い"も数年後に解散したことが描かれ、この幕は終了する。

 なんともまあ、「お笑い批評的」なコントである。

 「お笑い批評的」といえば、オークラは『Quick Japan』誌上で『20代芸人A君は笑いで天下がとれるのか?』という連載を行なっていた。
 これは、高齢化(『さんまのお笑い向上委員会』)の一途をたどる現在のお笑い界でいかにして20代の芸人がどのようにすれば「笑いで天下をとれるか」をシュミレーションする連載である。

  「30年以上に渡り変化しない権威」下にある「テレビ」という回路ではなく、「ネット/劇場への観客動員」の回路から視聴者の時間をハックする。ただ、そこで「思いついたら即実行のスピード感と企画性」(youtuber)ではなく「仕事量と緻密さ」で勝負せよというのがオークラの基本的な主張である。

 この主張における「仕事量と緻密さ」を体現した作品こそがまさに『FROLIC A HOLIC 』であり『遊戯みたいにいかない』である。

 『FROLIC A HOLIC』の「何が格好いいのか」という副題は「何が本当の『笑い』」なのかを巡るオークラの尽きない問いであり、終幕にハマケンが歌っていたよう、「それはいつまでも答えが出ない問題」なのであろう。

  

 



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