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おまえの足でサイドをかきまわせ!

ホーム山形戦翌日、終了間際に追いつきドロー決着という何ともモヤモヤする感情をアルコールで流そうとした僕はお昼までベッドの中にいた。目を覚まし携帯を開くとそこには「片渕監督解任」の文字。まさに寝耳に水であった。辞任でも契約解除でもない「解任」という2文字が重くのしかかる。渕さんとこれまでいくつもの壁を乗り越えてきたことを思い出す。

たしかにここまでのチームは好調を維持しているとは言い難く、このままいっても今シーズン昇格を果たせるイメージが自分としても持てなかった。とはいってもまだ4月、一年通して戦っていけば良くなっていくのではないかという淡い期待を抱いていた自分が甘かった。

選手、サポーターからの信頼が厚い片渕監督の解任、4シーズン連続の監督交代というクラブにマイナスイメージを植え付けてしまいかねないリスクを負ってまでも今シーズンのJ1昇格を成し遂げなければならないという是永社長の本気度を改めて感じさせられた。

結果的に片渕体制ラストゲームとなった山形戦では川口尚紀、渡邊凌磨の2得点で勝ち点1を積む結果となった。試合後に川口は「勝ち点1を拾ったというよりは勝てる試合を落としてしまったっていう方が大きい」(※Jリーグ公式サイトより引用)というコメントを残し、悔しさをにじませた。

ホームで勝ち試合は見られなかったものの、この日試合を振り出しに戻す1点目を決め、終了間際の同点ゴールを演出した川口の活躍が僕は嬉しかった。

2013年にユースからトップに昇格した川口はその年の第8節ホーム鹿島戦でスタメン出場を果たす。この時の衝撃を僕は未だに忘れられない。リーグデビュー戦となったこの日、川口は鹿島のスリートップの左でプレーしていたジュニーニョとマッチアップすることになる。

ユースから上がりたてのルーキーがJ屈指のストライカーを果たして押さえられるのだろうか。まだ川口をほとんど知らなかった僕は試合前そんな心配をしていた。

しかし試合が始まるとそんな心配は杞憂に過ぎないものであったことが分かる。ジュニーニョを押さえるどころか、相手陣内でガンガン仕掛ける川口にワクワクが止まらなかった。後に彼はユース時代にFWとしてプレーをしていたことを知り、その攻撃力の高さに納得した。

ルーキーイヤーとなるその年、川口はリーグ戦22試合出場というまずまずの成績を残す。しかし、そこからシーズンが進むにつれて僕が惚れた彼の攻撃性は影を潜めていく。2016シーズンはさらなるレベルアップを図り、当時J2の清水へ期限付き移籍をするも怪我の影響でリーグ戦の出場は19試合にとどまり目標としていたリオ五輪のメンバー入りもかなわなかった。

翌年新潟に復帰するも出場試合はわずか7。川口自身、力を発揮出来ないままチームはJ2に降格する。2018シーズン開幕戦のスタメン入りを果たした川口だったが、第2節松本戦を最後に片渕監督就任後の第30節福岡戦までスタメンから遠ざかる。

久しぶりのスタメン出場となったホーム福岡戦は0-3で敗れるものの、翌節アウェイ愛媛戦でもスタメン出場を果たし、チームの連敗ストップに貢献する。この後チームは8試合負け無しとなるわけだが、このチームの復調と共に川口のかつての攻撃性が戻ってきたように感じた。それまで彼のプレーの中に見え隠れしていた迷いは消え、生き生きとプレーしているように見えた。

ホーム岐阜戦での河田(現徳島所属)のゴール、町田戦での新太のゴールが決まった瞬間、ゴールが決まったことよりも川口の攻撃性がゴールという形で実を結んだことがなによりも嬉しかった。

今シーズンも開幕戦からこれまでスタメン出場を続けている川口。そんななかでのユース時代からお世話になっていた片渕監督の解任はショックなものであり、悔しさもあるであろう。

だからこそ、その悔しさを力に変えてほしい。僕が惚れたその攻撃性をもっともっと見せてほしい。おまえの足でサイドをかきまわせ!

追記:今週末はアウェイで東京V戦です。監督交代のニュースから一週間も経っておらず気持ちの整理がついていないサポーターの方もいらっしゃるかもしれませんが、「納得できなくてもいいから理解をしてくれ」という渕さんの言葉を胸に刻み、吉永体制初戦をなんとしても勝利で飾れるように精一杯サポートしましょう!

                                                                     M.



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