エモい

「やっほー!アレ、久しぶり!!」

彼女の声を聞いた途端、心が後ろへ引っ張られる感覚がした。

あぁ、そうだ。もう2年前か。僕は彼女に2年前会ったっきり話してなかった。

理由は無い。ただ彼女は日本に居て、僕はアメリカへきてしまっただけ。そもそも自分はメールをよくする派では無いし、時差のおかげで電話のタイミングも難しい。そんな感じで2年たった。

でも、そんな月日を忘れるくらい彼女は変わってなかった。歯をニカっと出して笑っている姿も眼に浮かぶ。

それから約3時間ほど、僕たちは話した。日本へも2年帰っておらず、一度も同窓会に参加できていなかった自分にとっては、このように同級と日本語で話すのは何だか懐かしい感覚だった。

そういえば、高校の頃から彼女とはそうだった。

進学クラスともいえる勉強の競争率の高いクラスにいた僕らは、その中では変わり者だったように思える。

いつも明るく、ニコニコしてるのに、どこか他から一線を引いているような彼女。

担任に反抗し、LGBTなどの日本では特異な話題に興味を持っていた僕。

一年の頃は話すことすらなかったが、あるきっかけで2年のはじめでお互いを慕うようになった。

現状に疑問を抱きあっていた同士、二人で話をするようになり意気投合。結果、僕は彼女を友達より、尊敬しあう同士のようにみるようになった。

その電話での3時間も、あの頃と同じように話した。高校の思い出、元担任への批判、大学の授業と生活、日本とアメリカの情勢。日本で学んでいる彼女の知識、アメリカで学んだ僕の新しい価値観。僕たちは間にあったはずの2年間を忘れて話していた。

その中でふと僕は彼女に聞いた。

『なぁ、”エモい”ってどういう意味?』

自分は日本のテレビはほとんど見れないので、日本の話題はSNS経由で大体は知っていた。だけど、どうしても突如使われるようになった”エモい”という言葉がわからなかった。日本にいた当時も流行にはあまりついていけているタイプではなかったが、アメリカにいた今は浦島太郎状態だ。

彼女は笑った。

「あー、えっと。なんかこう、カッコいい!とか、感動した!って時に使う。心が動いたときとか!」

『あぁ、ほうなんか〜。それって”エモーショナル”と関係あんの?』

「そうそうそうそうそう!多分ほうやとおもう!」

僕は笑った。彼女が激しくコクコク頷いているのが眼に浮かんだのだ。

彼女も笑って、それを聞いた僕は(ださいなぁ)と言いそうになったのを納めた。


エモい、かぁ。じゃあ、彼女との会話もエモかったのかな?

2年越し、時差13時間の議論大会。

エモい、かな?

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