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東北横断の旅 03 蔵王三山と美しい湖

ロープウェイで山頂まで登ってきました。しかし、ここが終着点ではありません。蔵王は広く、一つの山だけではなくいくつかの頂きが連続していて、それらをまとめて蔵王連峰と呼称しています。

今日の目的地は地蔵山、熊野岳、そして刈田岳です。それら蔵王三山を目指して徒歩で往復します。総延長8キロメートル、4時間の行程です。

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蔵王ロープウェイの頂上駅は、地蔵山、三宝荒神山のちょうど中間地点にあります。向かって右側が地蔵山、左側が地蔵山です。駅から見上げると地蔵山の頂上がすぐ近くに見えます。その背後にあるのがこれから向かう熊野岳です。

地蔵山へ向かうには階段状の通路をまっすぐ登ればすぐです。

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振り返れば、ロープウェイの駅と三宝荒神山が正面に見えます。周辺の山々よりひときわ高い位置に上ってきました。

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地蔵山山頂からの眺望は遠くまで見渡すことができました。右に山形盆地、左に上山盆地が広がっています。奥の山脈は朝日岳。

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地蔵山から南に下り、ここから熊野岳への道です。

あたり一面はゴツゴツとした石に覆われ、植物はところどころに茂みがあるくらいです。山道に沿って木製の板が敷かれているので道に迷うことはありません。なのですが、段差部分にも石が邪魔をしてあまり歩きやすくはなく、ときどき道を外れ、比較的平坦な部分となぞりながら歩いていきます。

勾配を登り峠の頂上まで行き、やっと着いたと思うのも束の間、先にもまた同じような道が続いている、その連続です。目の前に見えている山は近いようで遠いのでした。

いくつかの起伏を乗り越え、ついに熊野岳にたどり着きます。

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ここも一面が石や岩だらけ、道標となる木の棒だけが林立していました。青空に浮く避難小屋がよく目立ちます。

熊野岳の標高は1,841メートル、蔵王連峰の最高峰です。頂上には熊野神社が鎮守し、名前の由来になっています。そして、熊野岳は外輪山のひとつです。蔵王は活火山でもあります。直近の噴火は1940年、最近では2018年に火山性微動が観測されて、山頂の一部が隆起しています。

熊野岳からさらに南、刈田岳までは、外輪山の尾根筋をたどる形で歩きます。ここは山形県と宮城県の県境でもあります。

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エメラルドグリーンの湖水が美しい火山湖、御釜です。

蔵王カルデラのほぼ中央にある火口跡の湖です。水の色が緑なのは酸性度が高いためです。そのため生息している魚などの生物はいません。

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御釜のすぐ右に見える刈田岳をめざして、湖をぐるっとまわり歩いていきます。

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地図を確認すると湖の近くまでかつては道があったのですが、刈田岳へ向かう道の脇には柵が張り巡らされ、湖の間近まで近づくことは今はできません。この山がいまもまだ火山活動が活発なことを思い知らされます。

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刈田岳が近づき、頂上の刈田嶺神社の社殿が見えてきます。周りは積み木のように石を積み上げた塚のようなものがたくさんあり、賽の河原のようです。

刈田岳は至近距離まで蔵王ハイラインが通じていて、自動車でアクセスする観光客の方がとても多く訪れていました。ここから御釜も見下ろせるので、蔵王の有名な観光スポットになっているようです。湖をバックに団体さんが記念写真を撮っていました。

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刈田岳頂上から少しはなれたところに岩でプロテクトした頑丈な避難小屋があります。ここが活火山であることを思い起こさせます。

もし今この瞬間噴火が起き、時速300キロメートルにもなる噴石の直撃を受けようものなら、まず助かりません。そうなる前に急いで避難小屋に駆け込もう、そんなことを思いながら見ます。太陽光発電装置もあるようなので、停電しても最低限灯りや通信をできる設備を備えていそうです。

ここが折り返し地点となり、ここから来た道を引き返します。

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おだやかな湖面に澄み渡る青空、本当にここが大噴火を起こした火山なのか、この光景からはなかなか想像ができません。

奥に見える熊野岳に向けて再び歩き出します。

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御釜を横目に眺めます。

近よってみると火山段丘の高低差がよくわかります。100メートルはあるでしょうか。断崖絶壁の上に立つとどんな気分になるでしょうね。

奥に見える市街地は仙台市街です。そしてかすかに海も見えています。

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熊野岳に戻ってきました。奥に見える山道は蔵王の尾根筋の道、この道を行けばはるか北の雁戸山まで至ります。雲底が目線の高さまで降りてきています。

日も傾き、急激に肌寒くなってきています。日没までに急いで降りないと・・。そんなあせりがあったのかもしれません。この直後、目眩や悪寒に襲われ、膝に力が入らなくなり、道端にしばらく座り込んでしまいます。どっと冷や汗も湧き出しました。今にして思えば、高山病だったのかもしれません。

そうしている間にもどんどん日が落ちていきます。遭難という言葉が頭がよぎります。意を決してふらふらと起き出し、遅い足取りながら必死で歩き、地蔵山を過ぎなんとかロープウェイの駅まで戻りました。やっとの思いでロープウェイに乗り込み、標高が下がることで症状は軽減しました。その間写真を撮れなかったことが残念です。

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夕闇に沈む蔵王温泉街を後にして、山形市に戻りその日を終えました。

帰路にハプニングはありましたが、最後は山の神様に助けられたのかもしれません。思い出に残る蔵王でした。

次回は山形市から西に向かいます。


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