アパレル業界で私が知ってること(企画篇)その4:新規ブランドの場合

既存ブランドは実績というベースがありますから、それを基準にしてどうこうするんですけど、新規ブランドの立ち上げとかになるとそういうわけにはいきません。最初にいろいろ検討しておく必要があります。

基本のSTPは当然なんですけど、特にポジショニングに関してはポジショニングマップとか作ります。価格帯やデザイン性(コンサバorコンテンポラリーとか、ガーリーorユニセックスとかです。ややこしいのになればガーリーorフェミニンとかまでありますから、軸の取り方は本当にややこしかったりします)とかを縦横二軸で置いていきます。イメージマップ的に作る事もありますけど、社内プレゼントかだったら競合ブランドとかをマップ上に置きますから結果的にターゲティングマップになってたりもします。

ある程度STPが明確化してきたら、より具体化するためにペルソナを作りあげます。基本は細かく作りこみます。年収想定やら家族構成やら休日の過ごし方やらですね。ファッションって基本的にはライフスタイルの一部ですからこのあたりは具体的かつ細かく作りこんでおいた方がイメージしやすいってのはあります。っていうか、STPマーケティングで細部まで決めちゃうんですよね、わりと。それをちょいアレンジしていく感じですかね。実際は価格帯設定→年収想定とかサイズ展開→家族構成とか通園通学とかって逆算してる場合もあったりします。「年収500万で共働き、子供は保育園に預けている核家族で親は別居だが月に一度はどちらかの両親の家に遊びに行く、保育園繋がりでママ友と週末にパーティとかしてる」とかそういう感じ(か、もっと細かいか)です。ぶっちゃけ細かすぎてピンとこないまでありましたけど、まあそういうものです。

このあたりが決まってくれば、必然的にデザインの方向性が見えてきますので、メインとなるコーディネイトスタイルとかも決まってきます。まあトップス/ボトムスとか、トップス/インナー/ボトムスとか、ワンピース&トップスだったりとかです。ここはあんまり堅苦しく固定しちゃいません。極論すれば考えるのは実績が出ない一年の間だけです。基本的なスタイルって感じで考える?みたいな?
とは言え、ブランドイメージに沿ったコーディネイトってのは必ずありますから、それを中心にします。カーディガン+インナー+ボトムスがメインでインナーTシャツのバリエーションを増やそうとか、カーディガン+ワンピースをラインナップしようとかそういうレベルですけど。

本音で言えば、新規ブランドだったらこのあたりは出たとこ任せでもいいとは思うんですけど、構成しておかないと抜けがでたり余分なアイテムとか作ったりしちゃいます。2点が3点になるのは別にいいけど1点になるとバリエーション不足で困る、とかそういう感じです。このあたりは展示会とかの反応とかで調整したりします。どちらかと言えば余分に企画しておいて削る前提みたいな感じの方が結果的には楽ができる気がします。ちなみに大抵はそれでも抜けアイテムみたいなのが見つかって、後から企画したりしてました。苦笑。

さて、実際の生産数決定にまでなってくると、何を売りたいかってのもありますが、どう売りたいかってのが重要になってきたりします。どう売りたいかによって、アイテムバランスが変わります。一応基本ラインとしてはトップス:ボトムス比率は3:2にしておけば比較的安全ってのはあるんですけど、例えば重ね着コーデが基本とかになるとそれでもボトムスが余る可能性が出てきますし、アウタートップス:インナー比率も検討が必要だったりします。ある程度の失敗は前提にしておくんですけど、どうせなら良い失敗の仕方しておきたいっていうか、反省材料を前もって並べておくっていうか、そういう事をしておきたいわけです。「○○だった」じゃなくて「△△と思っていたけど○○だった」ってしたいわけです。

あとは既存ブランドの時と同じようにアイテム別とか販売期間とかそういうのを設定しておきます。矛盾がないかどうかもチェックはします。まあ、実際はやりませんけど、仮想的に実績をイメージしておいてそれに合わせるって感じですかね。あとはシーズンスタートしてからのお楽しみって感じです。

多分次からは、家の会社では正式にはインシーズンオペレーションって呼んでいた(包括的過ぎて実際は使いません。せいぜい年に一度使うか使わないかの言葉ですけど)、期中での商品の動かし方のお話になると思います。多分。


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