アパレルで私が思ってる事。 主観に基づいた現在の見解。1:SCでの計数。

 さて、そろそろ私がアパレル業というものに対してどのようなスタンスというか考え方というか、まあ要するに今どう思ってるのかってのを文章化してみたいなと思ってたりしたので、ちょっと書いてみます。

 端的に言えば、作りすぎ、供給過剰♪それに尽きちゃうわけですが、まあ他の要因もあるっちゃあるので、そのあたりも踏まえて書いていこうかと思ってます。例によって主観メインなので、異論反論はドンドンお願いしますね。

 作りすぎって簡単に書いちゃいましたけど、実は単純な計算から成り立つプロパー消化率の考え方ってのがありまして、坪売上と密接な関係があるんですよ。このあたり以前にも書きましたが、今回は飛ばすことはせずにざっくりと概論的に書いてみようと思います(わりと具体的なんですけどね)。

 坪売上と、と書きましたが、前提として坪在庫ってのも重要な要素ではあります。ところがこの坪当たり在庫、わりかし一定になる傾向があるので、パラメータとしてはそれほど重要じゃないんですよ。高額品はゆったりと展開しますし、安価な商品はボリュームを出すのに(まあ安価な分回転率が必要っていう要素もあります)詰め気味で展開しますから、坪当たり在庫金額ってのはわりと一定になりがちなんです。
 この一定額なんですが、直近は不明なんですが、数年前は大体60万円/坪でしたからそれを使います。
 さて、坪単価の方なんですが、一応基本的には坪20万/月を目指すことが多いようです。これ、根拠とかないんですけど、数年前元ユニクロの社員に確認したら、やっぱり坪20万/月でした。なんなんでしょうね。違う業種に聞いても同じ答えでしたから不思議なものです。

 この2つの数字から以下の事がわかります。
プロパー展開期間を3か月として(坪当たりプロパー売上60万ですね)、プロパー最終日の在庫がやはり60万/坪だった場合、プロパー売上で60万、マークダウン売上前在庫が60万ですからプロパー消化率は50%になります。これが「坪効率が消化率と相関関係にある」という数学的な(算数的な?)結論です。反対に坪60万/月であれば、プロパー売上180万、マークダウン直前在庫が60万なのは固定ですから、プロパー消化率は75%にまで上がりますね。

 こう書くとさっきは「作りすぎ」と書きましたが、本質的には「売り場広すぎ」とも言えます。ちなみにマークダウン率を40%オフ、面倒なので全部売れたと仮定、商品原価を25%とでもおきましょうか、そうした場合、プロパー展開3か月、残品はすべてマークダウンで販売という仮定の上だと月坪20万の場合、プロパー粗利45万+マークダウン粗利21万ですので66万になります。この時の売上はプロパー60万+マークダウン売上36万で96万になります。粗利率は約69%ですね。仮に他に経費が掛からなければそれなりに良い数字です。ちなみに月坪60万の場合だと(展開3か月+マークダウンの時の)シーズン売上は216万、粗利は156万となって、粗利率は72%になります。儲かりますよね。まあこのあたりは利益が出る場合のパターンです。

 けど、実際のSCでは、店舗によりますが月坪10万から15万って感じなんです。月坪10万だと同条件でシーズンでのプロパー販売30万、マークダウン直前在庫が元上代で60万、プロパー消化率は33%です。この場合の売上は66万、粗利は43.5万ですから粗利率は約66%です。

 じゃあ店舗での経費の方を考えてみましょう。まずは販売員人件費です。SCに出店している場合は、大抵の場合売場管理は自分たちで行う必要がありますから、週2休みでシフトを組むとしても営業時間が長いので一日2人は必須、上手に休んでも最低3人、土日に3人出勤しようと思えば4人は必要となります。この場合1人はパートでもいいわけですが、仮に社員一人分が込み込みで350万、パートが込み込みで150万としてみれば、年間1200万かかります。まあ売場が1坪ってのはありえませんので、概ねの感覚として20坪としましょうか。先ほど計算した粗利を20倍して、マークダウン月を含めたシーズン展開月を4か月とすれば、人件費は1/3ですから400万、粗利は月坪60万の場合3120万です。この段階での利益は2720万です。儲かってますねー。次に月坪20万の場合を見れば粗利は1320万になりますからこの段階での利益は920万になります。まあまあですかね。最後に月坪10万の場合を見れば470万になります。ちょっと辛いかな?

 次に家賃的な物を考えましょう。SCでの基本的な出店時の条件で歩合制の場合、概ね売り上げの15%~18%が歩合として引かれます。最低保証とかがので実際はもう少しピンチな場合も多いのですが、簡単にしたいので無視しましょう。例えば月坪60万の場合、4320万×15%=648万です。さっきの人件費を引いた利益からさらに引けば、2072万ですね。素晴らしい。
 同様に月坪20万をみてみれば、歩合家賃は288万、経費として引けば利益は632万になります。まあ利益でてますね。
 では月坪10万をみてみましょう。歩合家賃は198万、これを引いた利益は272万になります。頼りなくなってきました。

 さて、アパレルメーカーの場合、ファブレス企業が多いのですが、最低限の人員として、企画・生産管理・デザイナー・パタンナー・経理等バックオフィス系、物流管理といった本部費用的な物がかかります。実際はデザインとパターンは労務費として原価計上するのでここではそれほど関係ありませんが。でも雇用していた場合とかは実質固定費です。ですから物流以外の全ては概ね固定費となりますが、面倒なので売上の20%程度で配賦してしまいましょう。
 その場合、月坪60万の店では1208万、月坪20万の店では536万、月坪10万の店では8万になります。さあだんだん怪しくなってきた。
 この段階での売上対利益率は月坪60万の店で約28%、月坪20万の店で約13%、月坪10万ともなれば1%弱です。
 ここからさらに販促費1~2%、クレジットカード手数料2%、袋などの消耗品・文具等で2%がマイナスされます。合計で比率的には5%~6%のマイナスになりますね。この段階で月坪10万では利益が出ない事が確定しました。実際には最低保証がつくのでもっと早い段階で赤字確定です。月坪20万の店ですら7%程度の利益率です。ちなみに月坪15万の店の場合、プロパー消化率約43%、坪売上81万、坪当たり粗利額約54.8万、粗利率約68%、経費等をマイナスした場合の利益率は8%、上記の雑費的な6%を引けば2%です。
 さて今回本部費用等を込み込みで20%にしましたが、大雑把には物流費10%本部費用10%という計算をしています。

 坪10万は論外として、坪15万でも利益でてるじゃん、と言われるとそれまでなんですが、実はアパレルの場合の特殊事情がありまして。特定の定番的な商品を除外した場合、最終の売れ残りの商品の実際的な価値は50%に目減りします。半額でしか売れないっていう仮定ですね。でも生鮮食料品とかとは異なり、これ、税法上っていうか会計上ではここでの評価損は認められないのが通例です。例外的に原価割れで販売した実績がある商品は評価損が認められるんですけどね。
 ですので、ここでの「全部売れた」っていうのは会計上の考え方がそうだから成り立つ考え方なんです。実際には返品の商品価値は半分(orそれ以下)になってしまっています。基本的に作った量だけ販売量(額ではありません)が無ければ在庫が余ります。本当なら評価損を出して原価に組み入れたいんですけど、通常は認められません。これ、外側から見ると見えにくいんですよ。アパレルでの会計処理方法を知っている人ならB/S上の商品欄の数字とPL上の売上を比較することで「上手くいってるっぽいな」「やばいな」とかわかるんですけどね。もっと言えば売上原価率を合わせて見る事で「在庫処分やってるな」とか「きれいに売り切ってるっぽいな」とかもわかります。まあわかりやすいのは営業キャッシュフローの増減ですかね。不自然に営業キャッシュフローだけが減少してたら多分在庫過剰です。まあ他の要因もあり得ますからきちんと全部見るべきなんですけど、他の要因がなければほぼ確定です。これが進行した場合、アパレルでよくある黒字倒産ってのになります。流動資産の中の在庫が増えすぎて当座資産が少なくなるんですね。端的に言えばキャッシュ不足になって手形が飛ぶんです。

 ここでの実質的な減額を計数的に処理するためには、本質は同じなんですけど、手法としては2種類あります。1つはそのまま処理しておいて、バーゲン予算を立てるときに原価率を2倍にするというか売価を半分にするという考え方で、もう一つは返品された段階で仮想的に原価率を1/2にしてしまうって方法です。どちらも一長一短ではありますが、店舗の利益率を計算する場合には返品時に原価を1/2で想定する方がわかりやすくなります。反面で資産計算がややこしくなります。このあたりは、まあ慣れとかそういうので力技で解決してましたから、なんとも言えません。

 実際問題として、じゃあどうするのかって言えば、返品された商品の1/2を店舗の売上原価に加える(粗利から引く)のが一時的にはわかりやすくなります。SCの実情に即して月坪15万で、でも計算がめんどくさいのでプロパー・バーゲン比率をそのままにしておいて20%の返品があったと仮定しましょうか。上記の設定そのままで、返品率を20%にするために投入量を増やす事を考えれば、1.25倍の投入を行ったと仮定すれば返品率は20%になります。15%の時の元上代は返品が0の場合坪105万の投入ですから、返品率が20%の時の返品額(元上代換算)26.25万です。原価で言えば約6.6万円分返品されることになります。そのうち3.3万が仮想的に評価減される分だと考えれば、20坪なら20倍の66万分だけ売上原価が増えることになります。坪当たり利益は81万×2%なので1.62万円、20坪だと32.4万円ですからそこから66万円マイナスになれば約34万円の赤字になります。

 まあ、月坪60万も売れば実際には人件費は2倍位必要になるのでここまで簡単ではのですが、大雑把には坪売上が高いほど利益が上がりやすいっていう程度はこれで証明?できたかな?って感じです。

 大雑把に言えばSCで利益を出すには月坪20万くらいの売上がないとやってられねーって感じなわけです。
 当たり前の事を書くようですが、売上が固定であれば、売場が狭ければ狭いほど(厳密には契約坪数とか棚の数なんかにもよりますが)、坪当たり売り上げは上がることになります。まあ普通は坪数が減ればそれなりに売り上げは減るのですが、少なくともこれ以上売場を広げても売上は変わらないっていう点は存在しています(店ごとで異なりますが)ので、まあ売上が取れる限りは売場は狭い方がいいのも事実です。

 でもちょっと想像すりゃわかりますが、同じ商品を扱っているのであれば、普通は売場が広い店から重点的に見ていきますよね?売場が広い方が選択肢が増えるだろうって考えますから当然の流れです。このあたりの調整なんかもリアル店舗でのアパレルの面白さであり怖さでもあります。

 さて、次は、じゃあECではどうなの?って話をしてみたいと思います。多分。いやわからんなー、私の事だから。でも多分ECの話はすると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?