アパレル業界で私が知ってること(システム周り篇3):データは整理しないと使い物にならなかった。苦笑。

 昔いたアパレル会社は昔からPOSが充実してまして、百貨店の全店舗のほぼ80パーセントがPOSデータを送ってくれてたんですけど、ぶっちゃけ死蔵されてまして。
 まあ、計数的なMDを行う上でPOSデータほど役に立つものなんてさほどありませんから、当然自由自在に扱う事を考えたわけです。
 ってことで、システムに相談に行ったら「担当者がリストラ対象なのでわからん」という、なかなか斜め下の返答。一応データとしてはオープンされていたのですが、Dr.SumというExcelアドインソフト。仕方ないのてアクセス方法だけ聞いてあとは独習です。
 ところがどっこい、データとして欲しいものがなかったり、どうでもいいデータがあったりという愉快仕様。このままじゃ使い物になりません。
 そこで覚えたのがaccessだったりします。計算とか必要なデータの組み込みや、まあそんな感じのいろいろな加工をして、なんとか使える状態に持っていくって言う、例の如く私の仕事でもなんでもない仕事が増えた瞬間です。まあこの頃はそういうパターンに慣れまくってましたから、まあいいか的な?
 ところがaccessさん、経理システムか95で組まれていたもので、違うバージョンをいれようとしたらそっちがバグるという、これまた愉快なパターンでして、やむを得ず95で使ってたんですよ。
 シーズンで全店舗日々SKUとかのデータを取ったら1GB弱っていう、なかなか当時は聞いたことのない大量のデータをフル活用して企画前や展示会発注、ついでに店頭指示書なんかを作ってたりしました。でもAccess95が扱える限界も1GBなんですよね。このあたり本当に微妙すぎてデータのとり方とかいろいろ工夫したものです。なにせ最初期はどういうデータがどれだけの量なのかすらわかりませんでしたから。

 でもこのデータ取得、重たいの重たくないのって。当たり前ですね、1GB近いんですから。夜に帰る前にデータを落とし始めて、あさになったら落ちてるって感じな訳です。まあ当時のMDサイクルは2週間に一度なんですけど、これ、私の担当ブランド以外も私の仕事で。まあ自由自在にさわれるのが私しかいないので仕方ありません。まあ100万行がビッグデータであるなら、ビッグデータって言葉が普及する前からビッグデータを扱ってたって事になります。でもビッグデータって本質的にそういうもんじゃないと個人的には思ってたり。苦笑。

 そんなことをしていたわけですが、ラッキーなことがありまして。Access君で加工とかしていた内容の一部が、システムの載せ替えのタイミングでデータベースの見直しが行われることになりまして。おかげでずっと楽になりました。
 今から思えば、このデータベースの見直しの際に、それなりに詰める時間が取れたってのはありがたかったですね。外部的な働きかけでミーティングとかが行われたりしましたから、自分が主催しなくてよかったってのは気楽ではありました。こう改善して欲しいって要望を出して実装すべきかどうかを話し合うだけで良かったんで、このあたりは個人的にはものすごく楽させてもらった感があります。まあそもそも要望を出す必要がないのが理想ですが、それを言ってしまうとおしまいです。笑。

 このあたり言い出すと細かくなるんですけど、例えば原価の扱い方とかでも、計画段階での原価と仕入段階での原価とのどちらを正とするかとか、為替変動による原価変更とかがあった場合どういう風に調整するのかとか、そういった話とかしてた気がします。後はデータ上の名目とかですかね。具体例は忘れましたが、会社的な呼び方を世の中的な呼び方に修正したり逆をしたり、まあ要するに呼び方を一致させておこうって話です。ここで勘違いしたまま進めたら間違いますから、このあたりは案外慎重に進めました。データの項目名って言いますか、いわゆる「ヘッダ」の詳細説明書とかも作ったりなんかしてました。何をデータ化したものかっていうのはシステム側は当然把握しているわけですが、そのデータが意味しているものは何なのかっていうのは案外システム側は知らなかったりとかありましたから。考えてみれば当然ですね。そもそもの視点が違いますから。

 あとは計算結果をデータとして取得すべきかデータから計算させるべきかとかそういった事も話し合いましたかね。早い遅いとか重い重くないとか、誤解しやすさとか、計算頻度とかそういったものを考慮しながら考えていきましたっけ。
 例えば単純な「売上-原価」的な意味での粗利なんかをデータとして持つべきかどうかとか、2枚売れた時の売上合計はデータとして持つべきかどうかとか、まあそういう本当に細かいところです。まあどこで計算するかの問題でしかないって言えばそれまでなんですけど、当時はExcel君とかも25535行(だったっけ?違ってたらごめんなさい)の縛りがある時代ですし、まあそのあたりはみんなでいろいろ話し合った記憶はありますが、ぶっちゃけ細かすぎていちいちは覚えてません。苦笑。

 さて、まあそういった細かいデータベース的な整理が出来て初めて使えるデータってのが抽出できるようになりました。ちなみに売上データと在庫データは別物でしたから、この間の整合性もちゃんととれるようにしておかないと後からわけがわからなくなりますので、ここも重要でしたね。ヘッダを変えるだけって言っても、ヘッダを変える事で処理プログラムがエラーを起こす可能性がありますので、一度決めたらできるだけ変えたくありませんから、わりと慎重にやってましたっけ。

 で、まあそういう事を整理整頓した上で、ようやく在庫データと売上データをぶつける事が出来るようになったわけです。売上データってのは基本的にフロー型ですし、在庫データってのは基本的にはスタック型ですから、思うように連結させられなかったってのもあります。でも独立したデータであってもぶつける事さえできれば実用は可能です。2つのデータベースから1つのデータベースにすりゃいいだけですから。Excel君で言えばデータを2ページもって、3ページ目で各々の必要なところを抽出する的な感じですね。これで概ねデータ分析の準備が整いました。Access君とは一旦おさらばです。

 さて、このPOSデータ(厳密には1日の終わりに各店舗が当日の売上を送信してくるパターンなので、擬似的POSなんですけど)、分析すればするほど面白くって。まあ端的に言えばハマっていったわけです。まあハマったタイミングはPOSデータを見る事が出来るってあたりからですから、このあたりの因果関係はちょっと説明困難かもしれません。ハマっていたからこそデータベースの再構築に積極的だったってのもありますし、再構築されたデータベースをみてさらに深みにハマっていったってのもあります。

 それはそれとして、データ分析しているうちにいろいろな不具合が見えてくるんですよ。アイテムの登録ミスっていうか、カテゴリーの勘違いとかってこれをやってるうちに見えてきます。単純にポカってのもありますけど、例えばジャケットって言っても防寒ジャケットから夏の羽織物までジャケット登録とかされてたりとか、そういう根本的にダメじゃん的なものまであったりとかもありました。

 実は、このあたりのアイテム区分のあり方そのものに関しても、データ分析を進めていく中で分類のあるべき姿ってのが見えてきたってのもあります。例えばショートパンツでも3分、5分、7分とかって長さで区別をきちんとしておかないと売れ方変わるよね的なこととか、そういった事がどんどんと見えてきまして「アイテム区分のあり方そのものを整理しておかないとちょっとヤバいんじゃね?」的な発想にたどり着いたってのが一つです。

 そうなるとまたAccess君の出番だったりします。あーでもないこーでもないといろいろアイテム分類を組み替えながら、どういった区分が適切なのかをテストしまくってたりしました。ここのところ、恣意的になっていないかってのがものすごく不安で、何度もチェックを重ねましたからわりと時間がかかった気がします。でもAccess君での試行錯誤はシステムの改変を伴いませんからいくらでも試せますし、微調整も余裕ですからいろいろ試しました。ぶっちゃけ無駄だよなと思いながらもいろいろ試しました。当時は自分の担当ブランドがありましたからそこで思いっきり試しまくれたっていうのもあります。データをアウトプットしてみんなで話し合って妥当性を検証して、またデータをいじってってのを繰り返せましたから。特に当時のチームは雑談レベルで意思疎通ができていましたから気分的にも気楽でしたし。

 まあ、そんなこんなで整理整頓していって、別のブランドではどうなのかとかを検証してみて、ダメだったらまたやり直してみて、なんてやっていましたから、知らず知らずのうちにブランド毎の特性なんかが頭に入ってきてましたね。いやー、何でもやってみるもんだと思いました。同時期データで比較していくわけですから、こういうタイプのブランドはこういう傾向とか、そういうのがわかってくるんですよ。多ブランド展開しているからこその知見の蓄積ですね。またこの比較も面白くて面白くて。高価格域と低価格域の差とか男女差とか、まあいろいろ面白かった記憶があります。

 っていう感じで担当外ブランドのデータ分析や方向性の指摘とか、そういう感じの事も必然的にやるようになってきまして、まあその前からやっていたんですけど、分析方法の教唆とかそういう事もやるようになってきましたからね。長じゃないのにやってることが長です。やる方もやる方ですが受け入れる方も受け入れる方だと思ってたりします。笑。そんなこんなで職掌とやってる仕事が乖離しまくってましたね。まあそういうのは拘っている場合じゃありませんでしたし、まあいいか的なノリでしたね。
 でも職掌と職務とは一致すべきだってのが組織運営に関する持論ではありましたから、ジレンマ的なものは持ってたりしました。まあジレンマや矛盾をわかっていても必要に応じて無視しちゃえる神経の適当さってのはこの頃に成熟した気がします。でも同時にジレンマや矛盾に敏感にもなった時期でもあります。裏表だよなー。


 って事でシステム周りの話としてはなんとなくひと段落した感があるので、次からはデータ分析的なお話ができればいいのかな?って思ってたりします。実際どういうのを見ていたのかとか、どういう風に解釈していたのかとかってのが書ければいいなってのと、その後のお勉強の結果とかも踏まえて、その段階でのあるべき姿とかが示せればいいかなーとか思ったりもしますが、まあ実際はどうなることやら。自分でもわかりません。っていうか一番の不確定要素は自分自身です。笑。

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