アパレル業界で私が知ってること(データ分析篇6):消化率60%だったら40%残していいよね?

 まあ、表題そのままの意味に受け取っちゃうとさすがに問題はあるわけですが。苦笑。まあ、このあたりをこういう感じで都合のいいように解釈する事も重要です。
 前回までで、まあ、比較的安全ベースで消化率があげられるってのが見えてきたわけですから、ここからは単純にチャレンジです。というより、チャレンジする枠をつくりたいから手間をかけて既存ベースの消化率が取れるように持っていったってのも半面です。

 チャレンジ商品は、実際問題売れるかどうかは未知数です。また、どういう方向性でチャレンジするかによって量的なものを決定しておく必要もあります。
 まあ、チャレンジ商品のプロパー消化率が0%って事はそれはそれで考えられません(なんぼなんでも企画段階ではねますから)ので、まあそれなりには消化してくれるだろうという期待はしても問題ありません。

このあたり、個人的には商品点数の20%~30%は、自由枠、新規枠として企画することを勧めてましたし、正直期待してた面もあります。この時に言ってたのが表題の言葉です。過去とかとの連結があまり無いデザインやら思いつき商品とかが出てくるのを期待してたわけですね。ついでに言えば、一品単価を上げたかった時期でもありましたから、わりと「尖り気味の」商品群が欲しかったってのもありました。このあたりはある意味戦略的な商品群って言ってもいいかもです。
商品点数の20%~30%とは言え、いきなり大量には作るのはたまにしかありませんから(たまにはやってました。売れる的な確信とかってあるんですよ、一応こんなんでもファッション業界人ですし、そもそも一人の意見で決めたりしませんから)、大抵の場合発注金額で言えば15%~20%程度です。前回までで説明したとおり、この程度が多少足を引っ張ったくらいで全体の消化率はおいそれとは落ちない仕組みに持ち込めてますので、ここは楽しんで好きに作るってのが重要です。まあ最低限ブランドが許す範囲である必要はありますけど。見るからに「らしくない」のはさすがに売れません。

 これでわりかし売れた例としては脇などに通風口的なものをつけた商品群です。夏物の機能性の訴求ですね。単価は高めでしたが、デザイン的にも良かったので、4月前半をメイン販売期間と位置付けて、ブランドファンをターゲットに販売することにしました。
 次の年には同時期の主力となって、最初はTシャツだけだったんですけど、次の年は羽織物なんかもプラスして、売上的にも牽引してくれました。

個人的に、ですが、こういうブランドとしての新機軸的な商品は、やはり定期的に、出来る限り毎シーズン一グループは新たにチャレンジしたいと思ってます。似たようなものだと飽きてきますし、小手先での変更だとなかなかVMD的に変化が乏しくなって、まあつまらなくなっていきます。
 
この事って、反面では過去実績とか売れた/売れない理由の追求によって、一定レベルまでは普通に消化できるよね的な安心感があってこそ冒険できたんだと思ってます。こう言うことできる余裕がないブランドとかもありましたからね、実際。

まあ、この段階で商品群は「尖り具合」的な意味で大きく3つに別れてきます。前年のマイナーチェンジや微妙なアップデートをしたベーシックラインと、昨年ある程度売れたもののエッセンスを取り込んだミドルライン、そしてここのニューラインです。季節経過とかで店頭のバランスとかは変えたりしましたけど、基本ラインは3本ある上に、うち2本は計算できますから、まあ、なんだかんだで会社合計での予算ベースは毎年110%とか伸びてました。

 こういう事をやっていく上でサイズ展開も160cmまで扱うようになって、今度は売場特性での使い分けが必須になったりしたわけですが。サイズを増やした時はさすがに読みきれずに失敗気味でしたが、データがそろえばそれ以降は所詮他と同じですから気楽でしたね。金額は増えまくりましたけど。

 まとめますと、既存ベースをきっちり分析する事でベーシックラインからミドルレンジのラインまでは読み筋に組み込めますから、新規ラインを思いきって展開する事ができるようになります。これがあるかぎり、店舗のマンネリ化は防げますから、積極的にやってましたね。というより、POSデータから分析してモノを作る限りは、本来最低でもここまでは考えないといけないものだと思ってます。これができなかったら同質化とかおとなしい商品しか作れなくなるんですよ。言いたくないんですけど、ぶっちゃけ今って同質化とかおとなしい商品しか作れないのはこれができてないからだと思ってます。
 ただし、基本的にはマークダウンで売れるであろうサイズを中心に展開してました。ここを抑えとけば翌年への持ち越しはわりと起きません。

ちなみにこの頃はマークダウンで商品が不足してましたから、過去の商品を突っ込んで一緒に売ったりとかしてましたから、過年度在庫もどんどん少なくなってきてました。うまくやりさえすれば部分的になら需要過多な状態にはできるんですよね。
 これって会社的にはOKなんですが、まあデベロッパーとか百貨店とかからはいろいろ横やりがはいってめんどくさかったなー。苦笑。

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