アパレル業界で私が知ってること(小売篇)その5:シーズンのお話とか

アパレル業界の小売でなにが面倒って、シーズンが変化したら売るものが変わるって事です。このせいで販売期間も決まっちゃいますし、当然売れ筋商品も変わります。さらに言っちゃえば、気候の変化だけじゃなくて、年間行事とかで変わるものが含まれてるって事です。

とある人(昔一緒に仕事した、っていうか当時の社長)によれば「一番激しいのはレディースのスプリングコート」だそうです。メインの販売期間は1週間らしいです。春分の日を境にバタっと止まるそうです。QR(Quick Responce)なんて不可能です。売れたって認識できた頃には販売終了です。

まあ、そこまで極端なのは少ないんですけど、でもパタっと止まるってところは案外どのシーズンも共通していたりします。まあバーゲンに入るとかでプロパーに関しては共通させてるって面も否めませんけどね。とりあえずシーズンの考え方を紹介しながら、注釈していく的な感じで進めてみようかとか思ってます。年とかで括るといいんですけど、かえってややこしいので春物からスタートして一年間って感じで進めようかと思ったらいきなり躓く事に今気づきました。まあ春物的な物ってことで。

1:梅春物 躓いたところです。要は早春って意味なんですけど。基本的には3月あたりで着用する肉厚感です。ちょい厚手の長袖みたいな感じです。商品展開期間は概ね12月~3月ですが、実質的な販売期間は2月~3月頭位までです。

ぶっちゃけちゃいますと、2月から3月頭って、服が売れないので有名な期間です。大抵は秋に似たような肉厚感の服買ってますからね。本音で言えばなしにしたいくらいです。実は個人的には「売場を変化させる為」ってのをメインに考えてました。春っぽい印象だけ出れば成功的な考え方です。当然ですが量はつくらない方針です。

2:春物 そもそも私がアパレル業に入った頃には梅春物と春物って意識的に区分していなかったくらいですから、実は線引きは曖昧なんですが、大雑把に言えば薄手の長袖とか七分袖とかって思って頂ければある程度イメージができるかと。着用時期としては春分の日以降ゴールデンウィーク前くらいなイメージで、商品展開期間としては1月半ば~4月半ば頃のイメージ、販売期間としては3月~4月半ば頃ですかね。実際はもうちょっと後でも売れますから店頭から下げる事はしませんでしたし、わりかし春のマークダウン対象からも外してました。そもそも春にマークダウンとかあんまりしませんでしたけどね。

3:夏物 実は夏物も初夏・盛夏って区分しますが、商品特性的にはそんなに変わらないんですよね。ぶっちゃけ半袖です。まあタンクトップとかは初夏にはあんまり出しませんけど、初夏と盛夏の商品特性上の差ってその程度です。

ちなみに着用時期はゴールデンウィーク頃から(身も蓋もないんですが)涼しくなるまでを想定、商品展開期間は3月半ば頃から7月のマークダウンまでがプロパー、その後だらだら、って感じです。

さっきは雑に流しましたが、初夏・盛夏っていう分類は実はこの商品展開時期の差で決めてたりもします。ゴールデンウィーク前が初夏、ゴールデンウィーク後が盛夏です。晩夏ってのを付け足すときもありますが、その場合はマークダウン時からお盆位までプロパー販売ってイメージです。ぶっちゃけマークダウン商品が多ければ晩夏商品なんて店頭に並べることすら不可能ですから、基本的にはつくらない方針でした(マークダウン商品が少なくて追加企画的に作ったことはあります)。

さて、この夏物が本当に曲者で。プロパーでの販売期間はせいぜい3か月なのに着用時期は大抵9月の彼岸まで続くんです。下手したら10月までです。プロパー販売期間とプロパー販売期間が終了してからの長さが同じです。ついでに店頭はゴールデンウィークを最後の盛り上がりにして、そこからは夏のマークダウンまで売上がだらだらと下がり続けるっていう流れです。後述しますが、冬物では違う流れなんですよ。

4:秋物 これも微妙ではあるんですけど、普通に秋物と言えば概ね梅春物と同じ肉厚感の商品です。上記の分類の中で春物に当てはまるのは特別に初秋物とか呼んでたりしました。これも私がアパレルに入った頃は分類してませんでしたから、まあ区分があやふやです。想定着用期間は秋分の日~だいたい10月前半、店頭展開期間は8月頭位から、販売期間は9月半ばくらいからスタートです。

実は秋物の場合、特にトップスは冬物のインナー的な用途が多いので、秋物と冬物とはどちらもプロパー販売期間は12月末までにしてました。10月とかにマークダウンする場合は、薄手商品とかデザイン的にインナーじゃないよな的な商品とか、ぶっちゃけ売れてねー!的な商品とかをマークダウンしていましたけど、正直マークダウンしたくなかったってのが本音です。だってその後もプロパーで売れるもん。

5:冬物 まあ秋物より厚手ってのが一応の定義ですけど、ぶっちゃけ秋物と同じような肉厚感の商品も作ってました。実はさっきは「秋物と初秋物とは区別してなかった」って書きましたが、私がアパレル業に入った頃は、実は「冬物と秋物もあんまり区別してなかった」んです。一応は区別してたんですけど、同じタイミングで展示会してました。っていうか展示会を増やすと面倒なのでずっと秋冬物って括りでしたけど。大雑把には想定着用期間は10月後半~3月初頭まで、店頭展開は10月頭位から、実際の販売期間も10月半ば位からってイメージですかね。特にトップス・インナー類は秋物と冬物は肉厚感が多少違う程度ですので、追加商品的なイメージです。とは言えフリースなんかは冬物でしたね。そのあたりもある意味適当でした。ボトムスは割と肉厚感は明瞭に変えてましたけど、全部が全部ってわけでもありません。

6:防寒物 これも「冬物」ですけど、特にコート類とかを区分していました。ある意味純粋に冬物と言える部分です。想定着用期間は11月半ばから、店頭展開はちょっと置いておいて、販売期間も11月半ばくらいからです。ぶっちゃけ早い時期に寒い日が数日続くと突然売れ出します。

店頭展開をちょっと置いておいた理由は、テクニック的に「9月末にはコートを店頭で見せていく」っていう手法が有効だからです。9月末に一部、10月末に向けて7~8割、11月頭に全デザインがそろう的なイメージですかね。ぶっちゃけ9月10月はほとんど売れませんけど、わかりやすく季節の移り変わりを感じさせる商品は、早い時期から見せるって大事なんですよ。まあめったやたらに早くすりゃいいってもんでもありませんが、そのうち書きます。

さて、秋冬物は春夏物と違って、9月→10月→11月→12月っていう感じで(細かい話をすればたまに10月と11月が逆転とかってありますけど、誤差です)売上が上がっていきます。尻すぼみじゃなくて末広がりですので、割と楽です。ついでに言えば商品も分厚いのでボリューム感がでやすいのでさらに楽です。逆にコートなんかは置き場所に困るくらいです。

なんで楽かって言うと、要するに商品回転率が上がっていくんですよ。見た目上の適正在庫(ボリューム感)と計数上の適正在庫(商品回転率的なの)が一致させやすいんです。計数上の適正在庫側が多い場合はストックすればいいだけです。それはそれで坪売上が高いお店だと大変ではあるんですけど、本当に毎日チェックしないといけないのは高々数店舗です。

さて、大雑把に整理だけしておきます。基本的な考え方としては、着用時期をベースにしながら、着用時期の終了前に(当たり前ですけど)販売期間の終了時期を置いて、あとは実績とにらめっこですかね?小売業ですから販売期間が一番重要ですのでプロパーに関してそこだけを抜き出すと

梅春物 2月半ば~春分の日くらい

春物  3月半ば~ゴールデンウィーク

夏物  4月半ば~6月末

秋物  9月半ば~12月末

冬物  10月半ば~12月末

防寒物 11月半ば~12月末(11月頭に雪とか降ったら11月頭から売れます)

ってな感じです。

ちなみに、1月はわりと秋冬物マークダウンしてますからプロパー販売は計算を簡単にするためにゼロで見込んでました。7月も同様です。

あれ?8月は?ってお話になりますが、ぶっちゃけマークダウンをひきずるんですよね。足りなければ(7月半ばには大体わかる)晩夏物を作ったりします。ただ、秋物は店頭展開そのものは8月からやってますからちょいちょい売れていくのも事実です。8月(特にお盆過ぎ)から9月半ばくらいまでは我慢の日々でしたね、正直。

月であてはめれば概ねこんな感じですが、そもそも月ごとの売上が変わりまくりますから単純に月数で割って商品量を決めたらえらいことになります。このあたりの詳細がPOSでわかるようになったってのは個人的にはものすごく大きな出来事でした。

ちなみに年間定番的な商品もありました。実はファッションアパレルって1回作りっきりパターンが大半だったりします(理由は生産とかのあたりで書くかも知れません)けど、年間定番は一定量が売れたら作ります。ブランドとかにもよりますが、売上比率がさほどでもないのですが、作り方が違うので、それはそれで苦労しました。このあたりも生産とかのあたりで書けたら書きます。小売視点で言えば、売れたら仕入れる、以上です。なんのひねりもないですけどそういうものですからねー。

シーズンの売上がわかれば企画も立てやすくなります。次からはそのあたりの方向へ行ってみようかとか思ってたりします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?