アパレル業界で私が知ってること(データ分析篇3.5):そういやいろいろ変えてたっけ。

 前回の話を書いていてふと思い出したんですけど、この段階で各店舗発注から本部一括発注、本部一括納品っていう、セントラルコントロール的な事を始めていたりしました。あんまりくどくどと書くのもあれなんであっさり目で書いとこうかと。
 まず、それまでの話をしておかないと変わったもなにもわかりませんからそこからスタートですかね。

 それまでっていいますか、元々が卸売業的な方法でしたから、店舗別で発注→集計→合計に追加分をプラスして生産量決定、って感じでした。当然なんですが各店舗の発注はそれぞれが行っていまして、具体的には店舗の販売員が展示会に来て発注していたんです。

 この方式、当時でも無駄なんじゃね?的な事は言われていまして、具体的には販売員が発注に来るための交通費や、そもそも発注に来ている間の人件費的なものや、そういうのが無かったら展示会開催期間短くできるよね的なものや、発注をいちいち入力して集計する手間暇(ここは営業時代にも個人的にはそれほど手間じゃなかったんですけどね。っていうか、数人しか扱えない集計ソフトを扱える一人でしたから、自分の担当の入力なんかで手間暇かけてられません。ちなみにデータはフロッピーディスク保管でしたっけ。1.44MBが辛かった。笑)やらそういうのを考えればかなり膨大な手間暇です。

 ですので、まあ会社も身売りされちゃいましたし、人的にもリストラされまくりましたし、大きく舵を取らざるを得なくなりまして。人海戦術的な部分は全部取り払う勢いでやってました。

 そのうちの一つが商品のセントラルコントロールです。なにげに物流にも利いてきますから、これはやっておく必要がありました。

 でも、今までは販売員は自分が発注した商品を販売していたわけですから、これから本部で発注するって言われても不安と不満が山のようにあったわけですね。まあ当然です。普段売場に立っていないやつが発注するんですから、不安で当然ですし、プライド的な意味で不満があって当然です。こういう不安や不満は払拭しておかないと禍根が残ります。

 まあ、解決方針は簡単です。要するに発注者である私が店舗ごとの販売特性について店舗の販売員より詳しくなってればそれだけで解決です。後はその事を踏まえてお話し合いすればいいだけですから。

 とは言え、主だった販売員は展示会に来てもらって、全社レベルでの発注を踏まえて相談会的な事をやってもらいました。もちろん相談するのは私なんですけど。半面で販売員側もシビアな商品の見方をするようになってきまして「かっこいいやん。売れへんやろうけど」とか「しょうもないけど売れそう」とか、センス的な事とマーケッティング的な事を一旦分離した上で統合したようなって言いますか、今までより一段階上のステージで話ができるようになってきたりしました。このあたりって後年になればなるほど利いてきまして、店頭でも商品が売れた理由や売れなかった理由なんかを論理的に考えてくれるようになりましたから、次の企画へと生かしやすくなっていったんですよ。

 さて、説明も大事なんですけど、実際の発注精度が良くなければこんなもの即座に不満が爆発しちゃいます。ですので、ちょっと軽めのイカサマといいますか、ほぼ確実に成果が出るものを組み込んでたりしました。
 まあ、このあたりは鶏と卵の関係な面もあったりします。本部一括発注することで成果が出る事が予想されてたから本部一括発注にしたっていう面もますから。

 具体的にはサイズバランスの調整とアイテムバランスの調整です。店舗毎の特性はある程度把握していましたから、どの店舗にどういったバランスで送り込んでおけばよいかのは概ね予想できます。変わったバランスの店には電話をして聞き取り調査したりなんかもしていますから発注段階では既に理由もある程度知っています。ちなみに私が担当していたブランドが一番サイズレンジが広かったので、他のブランドでもある程度結果が出るだろうことはわかっていました。っていうか、他のブランドのサイズバランス傾向とかアイテムバランス傾向とかも私が出してましたから当然知ってましたし。流石に店舗別の特徴までは知りませんでしたけど、まあそこまで極端に振れる可能性があるのが私が担当していたブランドだけだって事もうっすらとですが知っていましたし。要はその店舗での他メーカーや他ブランドの展開に影響されてるのが大半で、そこで一番影響されやすいのが私が担当していたブランドだったわけです。ざっくりとしか調べていませんが、他のブランドでは店舗毎でアイテムバランスが異なるって感じじゃありませんでしたしね。

 さて、1回目の試練は発注したリストを店頭に渡すところで発生しますが、ここはなぜこういう発注なのかを筋道立てて説明した資料を添付することで解決させました。MD計画書的な感じですね。このあたりは他のブランドでも同じようにやらないといけませんからフォーマットから作成したり、っていうかこの頃以降ってわりと作業的にはフォーマットばっかりやってた気もしますが。
 当然「いや私のところはそうじゃない」的な電話とかもあるわけです。ありがたい話です。その店のPOSデータを呼び出しながら、じゃあ実際にはどういう風にしようか的な話を詰めるチャンスです。お互いに合意できるってのが重要ですからここでの話し合いには手抜きはしません。追加分でリカバリーするとかできますから妥協点は用意できています。

 とは言え、札幌丸井今井の冬物は難敵でしたけど。まあ前々から展示会なんかで販売員とは話し合いをしていましたから実はここだけ独立した発注パターン組んでたりしました。だって「冬物の厚手のトレーナーって存在意義がわかんない!」って盛り上がったことがありますから。北海道、特に札幌って部屋が暖かいからコートの下は薄着なんですよ。冬場に北海道に行けばわかります。マジで暑いんだもん。

 あと新宿伊勢丹は最初からわけがわからない事になるから全体的な方針とか伝えた上で販売員に発注してもらってました。後からオープンした店舗で、もう一軒都内でイレギュラーな売れ方をする店舗がありましたけど、ここも別パターンで私が発注してましたっけ。ここのイレギュラーは理由がわかっていたので私でも発注可能でしたから。いや伊勢丹本店は今でもよくわからん。苦笑。

 その他には営業を通して不満を述べてくるパターンってのもありましたが、この頃には営業の皆さんも協力的でしたから、特に問題もなく、営業が説得してくださったり、私から店舗へ連絡したりとかで情報交換しながら進めていきました。

 さて、商品投入段階が次の試練です。予定通りに商品が入荷してこないっていう問題と向き合いながらですから、なかなか厄介です。元のMD計画を組み直さないといけなかったりなんてのはザラでした。ここに関しても前もって何時何時どういった商品が入荷するかってのを事前に連絡できるようにフォーマットしてFAXしてました。FAXですね。笑。2005年ごろですからなかなか。メール等の設備も整い始めていたんですけど、なにせ販売員側がメールの送り方とかわかんないとか見方がわかんないとかってのが普通の時代でしたし、ノーパソとかの解像度も低いので全体を見るには印刷しないとだったりな時代です。苦笑。

 まあ、そんなこんなで細かい事なんかにも気を使いつつ(ありがたい…のかどうかは不明ですが、当時は既に「こいつにだったら文句いっても文句の言いがいがある」っていう風潮ができていたりしました。ついでに電話が長いってしょっちゅう言われてましたけど)、なんとか形になりましたし、売上も伸びました。ぶっちゃけ発注がどうであれ、売上さえできりゃ誰も文句は言いません。少なくともその段階では。その後プロパーでの成功=全体での成功じゃないっていう事を思い知らされたりもしましたけど。でもここは気づいたことで翌年からは楽ができる事がわかったところでしたから、ラッキーって感じでもありました。まあ次回あたりにこのあたりは書きたいかと。

 まあ、とりあえず本部全数発注はこの段階で軌道に乗せる事ができました。追加を含んだ全社コントロールに関してはさすがに無理がありましたが、この問題もシステムの載せ替えの際にコンセプト変更できましたので解決していきましたし。

 という事で、個人的には繊細かつ大胆な感じで?大きな改革を進めるときには準備と話し合いが重要だっていう事ですか?まあそこまで考えてなかったんですけどね。大抵の事は場当たり的に処理してましたから。でも歩み寄りながら話し合うってのは大事だと思います。

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